今年、ギャルたちの間で大流行した言葉を選出した、その名も「ギャル流行語大賞」。省略されすぎていたり、そもそもの語源がまったく不明だったりと、よくもまあ思いついたと褒めたくなってしまうようなそんな言葉たちを、なんと今回、無料メルマガ『仕事美人のメール作法』の著者・神垣あゆみさんが、ビジネスメールでも使える言葉に変換するというユニークかつ大胆な試みをおこなっています。
途中でその場を離れるとき
ガールズエンタメ情報サイト「grp by CROOZ」のランキングに多く登場したキーワードを年間で総計し、選出した言葉が「ギャル流行語大賞」として毎年、発表されています。
若者の流行語を使うことはないにせよ、それを社会人が使う言葉に言い換えるのは面白そうなので、今回、取り上げてみることにしました。「ギャル流行語大賞2017」の5位から1位の言葉を紹介しそれぞれ言い換えてみましょう。
5位「フロリダ」
地名ではなく、LINEなどでやりとりしている相手に「お風呂に入るので離脱する」ことを伝えるときに「風呂」と「離脱」を省略した言葉が「フロリダ」です。省略して短くまとめるのは流行語の特長のひとつでもありますね。
これをビジネスメールでも使える言葉に言い換えると……
- 席を外します。
- 退出いたします。
- この辺で失礼いたします。
といったところでしょうか。「おいとま」「いただき立ち」という言葉もあります。主に招待を受けたり、訪問したりした先で使う大和言葉です。
「おいとま」は、その場を去ること。「いとま」は「暇」と書き、暇な時とか、仕事を休むという意味がありますが、人と別れることも指します。「いとま」の尊敬・丁寧語が「おいとま」です。訪問先を後にするとき、「そろそろおいとまいたします」、訪問先を訪ねたときには「すぐにおいとましますので」のように使います。
「いただき立ち」とは、ごちそうになってから、すぐ席を立つこと。「立つ」とは、帰ることを意味し、食事をいただいて、すぐにその場を去る状態を指します。「いただき立ちで恐縮ですが、失礼いたします」のように使います。
これまでにない
「ギャル流行語大賞2017」4位は「過去1」。「過去1番」が略された言葉で、これまでの人生(過去)でトップ(1位)になる様子を表す際に用いるのだそうです。朝一番を「朝イチ」、今ひとつなことを「今いち」というノリと受験勉強で過去の問題集を「過去問」と略して言うのをミックスした感じでしょうか……。
これを言い換えるとしたら
- 史上最高の
- 未曾有の
- 他に類を見ない
- 前代未聞
などが挙げられますが、過去で一番に対して、数に焦点を当てた言葉としては「千載一遇(せんざいいちぐう)」があります。千年にたった一度しかめぐりあえないような素晴らしい機会、という意味。
過去のある時期を指して「かつて」と言いますが、あとに打消しの語を伴い「かつてない」とすると、今まで一度も、今までまったく、という意味に。
- かつてない人気
- 未だかつて聞いたことがない
同じような意味の言葉に「ついぞ」もあります。今まで一度も、という意味ですが、あとに打消しの語を付けて
- ついぞ見たことがない
- ついぞ会ったこともない
という使い方をします。また「ついぞない」で、まったく珍しい、不思議だ、呆れる様を指します。
- ついぞない経験をしました。
続けてなにかすること
「ギャル流行語大賞2017」3位は「スタレン」。LINEでスタンプを連続して送信する行為のこと。「スタンプ連打」の略ということでしょうか。メールで顔文字を連打して送るよりスタンプは簡単。スタンプにメッセージを託すというより記号とか音符みたいな感じで使うのが今どきの使い方なのかもしれません。
連続して何かを行うときに用いるのが「続けざま」という言葉です。「先ほどから続けざまにメールを送信して、すみません」のように使います。
「続けざま」は大和言葉として、同じ意味の「矢継ぎ早」「畳み掛ける」とともに過去に紹介しています。
● 連続して何度も < メールで使える大和言葉(2)> VOL.2576
続けて何かすることを「立て続け」とも言います。
- 昨日から立て続けに問い合わせの電話がありました
「続けざま」も「立て続け」も、短時間に同じ動作を繰り返し行うことを指します。
- 立て続けにメールが送られてきた
- 続けざまにメールが送られてきた
どちらを使っても同じ意味といえます。似た言葉に「引き続き」もありますが、こちらは、「時間」より「同じ動作」のほうに重点が置かれています。それ以前にしたことと同じこと、あるいはそれに関連することを続けるという意味合いで用います。
メールの結びでよく使うのが「それでは、引き続きよろしくお願いいたします」という言い回し。一緒に仕事をしている相手に引き続きやり取りすることをよろしくと伝えるときに用います。
好意の伝え方
「ギャル流行語大賞2017」2位は「だいしてる」。「大好き」と「愛してる」を掛け合わせた言葉として、SNSや日常会話で人気なのだそうです。「好き」を2倍にも3倍にも増量し、「愛している」を特盛りにしたくらいの感情ということかもしれません。
では、相手に好意を抱くことを「好き」とか「愛」ではない言葉で表現するとしたらどのような言葉が思い浮かぶでしょう。「心を寄せる」とか「慕う」が挙げられます。
- ひそかに心を寄せる人がいる。
- 以前からお慕い申しておりました。
のように使います。もう一つ、「憎からず」もあります。「彼女のことは憎からず思っています」と好きなのに、「憎くはない」と間接的に思いを示す言葉です。
直球勝負ではない、こうした言い回しは奥ゆかしいとも言えますが、どのくらい好きなのか、好意の分量や程度までは分かりません。
会えない相手ともSNSやメールでつながっているのが当たり前で、メッセージを読んでいるかいないかという動向さえチェックできてしまう現代では、感情も「見える化」することが求められ、相手の本心が分からずヤキモキする時間や距離は煩わしいだけなのかもしれません。
白か黒か、そしてその分量が問題だという計り方もありますが、好き嫌いという感情に関しては、あいまいなグレーも受け入れる「幅」がもう少しあってもいいと思うのですが、「だいしてる」を支持するギャルたちには一蹴されそうです。
簡略化する前の言葉は?
「ギャル流行語大賞2017」1位は「マ?」でした「マジ?」を略した言葉が「マ?」。簡略化することで、信じられない、と驚いている様子が強調されると人気を集めたようです。「マジ?」という言葉も元は「本気ですか?」「真面目に言っているのですか?」と言っていたものが次第に簡略化されたものと思われます。
「マジ?」の代わりにビジネスメールや仕事上の会話で使える言葉としては……
- にわかには信じがたいですが
- とても信じられません。
といったところでしょうか。「本当ですか?」という言葉も考えられますが、相手を疑っているみたいで、多用するのはよろしくありません。
言いやすく簡略化した言葉ほど広まるのは早く、「マ?」はともかく「マジ?」「マジで?」は日常会話にすっかり浸透した感があります。
「目からうろこ」も本来は「目からうろこが落ちる」という慣用句が簡略化されたもの。言いやすく、使いやすく、伝わりやすく言葉が省略されていく流れは止めようがないのかもしれませんが、折りに触れ、本来の意味をたどることも必要ではないでしょうか。