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輪番制は危険。マンション理事長は適当に選ぶと後で痛い目に遭う

前回掲載の「なぜ最高裁は理事会がマンション理事長を解任できると判断したか」で、マンション組合内の内紛は意外と多く最悪の場合、裁判にまで発展するということをお伝えしました。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者の廣田信子さんが、「自分も同じような体験をした」という読者の方から寄せられたメールを紹介しつつ、理事長選びの重要性について記しています。

理事長にしてはいけない人が理事長になってしまったら…

こんにちは! 廣田信子です。

先週の記事「なぜ最高裁は理事会がマンション理事長を解任できると判断したか」を読んだ、理事長解任経験のある読者の方からメールを頂きました。

自分の経験は、非常にレアなものだと思っていたら、記事を読んで、そうでもないことにびっくりしたと、経験談を寄せてくださったのです。

自分のマンションの場合は、当時の理事長A氏が、他の理事の反対を押し切り、自分が懇意にしている業者に、理事長権限と称して、勝手に工事を発注したことが問題となり、解任となりました。

 

管理会社によれば、理事長は理事による互選なので、選任も解任も理事会決議のみで可能とのことでしたので、あっさり可決されました。

 

A氏は、以前理事だったときは、他の理事を罵倒して問題になり、総会でも毎年のように、理事会が行ったことに、ことごとくケチをつける曰くつきの方だったので、当然、彼を支持するシンパなど一人もおらず、アッサリ理事長解任となりました。

 

しかし、A氏は、そんな理事会決議は無効だと開き直って、重要な書類やマンション共有部の鍵を次期理事長に手渡さなかったため、臨時総会を開いて理事自体も解任することになり、これも、絶対多数で可決されました。ところが、それでも、A氏は、こんな総会決議は無効だと言い続けて、結局すべての引継ぎが完了したのは、翌年の総会後でした。

 

臨時総会では、今後、A氏は理事就任を一切禁止する決議も行いました(この決議の有効性は微妙だと言われていますが)。それでも、毎年の総会のたびに、自分を理事の輪番制から外すのは人権問題だと、わめいており、A氏の理事就任禁止を再決議するということを繰り返しています。

 

しかし、当マンションも理事や理事長のなり手が極端に不足しており、輪番制も事実上限界に来ていることを痛切に感じます。だからと言って、立候補制にすると、A氏のみが立候補することになり、延々とA氏が理事長を続けることになってしまいます。これだけは、絶対に避けなくてはなりません。

 

しかし、A氏の理事就任に絶対反対なのは、自分をはじめ理事長経験者のみで、残りの数十名はどちらかと言えば反対、更に残りの総会にも全く出てこない委任状を出すだけの人たちは、A氏って誰? というレベルの人たちなので、今後も油断は禁物です。実際のところ、A氏の強烈な物言いに怖気づいて、かかわり合いたくないという人がほとんどで、ますます理事のなり手が減っているのが現状です。

このお話には、実は、いくつものあるある」が含まれています。まず、理事会で理事長を解任しても、本人が納得しないで、円滑な引継ぎができないと、臨時総会で、理事そのものを解任しなければならなくなります。解任に納得いかず重要な書類や印鑑や鍵を引き渡さないというのは実は、解任がらみの紛争でよくあることなのです。理事会の中で円滑に理事長を解任するということは、なかなか難しいことなのです。

で、一番の問題は、そもそも、この期の理事会は、何でAさんを理事長にしたのか…ということです。もともとAさんがそういう人だということは、理事経験者等はよく知っていたけど、その期の理事さんは最初それほどとは知らなかったのでしょう。それに、理事の互選だと、理事長に立候補した人に対しダメとはいえないものです。これが理事会で理事長を選ぶ場合の一番の問題で、これもよくあることです。

やはり、そういう理事長に不適格な人を理事長にしないためにも、理事長の選任は総会で多くの人の目を通すことも必要かもしれませんよ。組合員の中には、議案書の候補名を見て、この人だけは理事長にしてはダメということを言う人もいるはずですから。人を強烈に罵倒するA氏のようなタイプの人がいると、総会の出席者も減り、理事のなり手もいなくなる…ほんとうに管理組合運営に与える悪影響は大きいのです。

A氏のような存在に悩んでる管理組合はたくさんあります。メールを下さった方は、最高裁判決のことを知って、「理事長解任の是非をめぐって最高裁まで争うということ自体が、私にとっては超驚きです…」と。そうですよね。でも、Aさんも、一歩間違えばそのタイプじゃないでしょうか。

理事長という立場を手に入れれば何でも自分の思うようにできると思い込み、理事長になりたい人はやはりいるんですよね。そして、「解任」というのは、その人にとって、自分が否定されたことであり、絶対に納得いかない…ということも想像がつくことです。その怒りが、裁判で争うということにもなるのです。そして、そういう訴訟は、その管理組合にとって、想像を絶する負担になります。

やはり、理事長は慎重に選ぶべきだと改めて思います。理事候補についても、機会的な輪番でも立候補でもなく、推薦者が必要ぐらいのルール化は必要なのかもしれません。特定の人を総会決議で排除するより、推薦者が集まらないので結果的に候補になれないという方がまだ、軋轢が少ないのではないでしょうか。

経験談をお寄せいただき、たくさんのことを考えさせていただきありがとうございました。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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