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タクシー運転手の「トイレ」すら許さない、理不尽な駐車禁止の実態

メルマガ『ジャンクハンター吉田の疑問だらけの道路交通法』の著者で交通ジャーナリストの吉田武さんが、現役タクシー運転手・Kさんに裏話や面白エピソードを聞く連載シリーズ。前回の「白バイ隊員を賄賂で買収したワケあり客」に続き、今回は、「警察に頼み込んで駐車違反をもみ消す方法」というアンタッチャブルなエピソードを暴露しています。

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ベテランタクシー運転手が味わってきた様々な交通事案 その2

Kさん:それにしても白バイ隊員に賄賂が通じるなんて私としても意外でしたが、さすがに運転手側から賄賂渡しての交渉なんてさすがにやる勇気はないですね(苦笑)。お客さんだからこそ交渉可能なやり方な気がします。

吉田:僕の父親がタクシーの運転手やっていた頃に極度の腹痛に襲われたそうで、トイレに駆け込むべく、路上駐車してデパートのトイレへ入ったんですね。小ではなく大のほうでしたから当然時間かかったわけで、戻ってきたらフェンダーミラーのところに駐車違反のワッパが付けられていたと。その間は約20分ぐらいだったらしいですが、お客さんの利用待ちさせないためにフロンガラスのダッシュボード上に回送板立てて、さらに「デパートのトイレを使用しに行ってます」とメモも残していたんです……が、駐車違反にされて父親は激昂(笑)。

Kさん:当時は駐車監視員なんていませんでしたから、警ら中の警察官が取り締まったんですね。それにしても容赦ないですねぇ……。

吉田:その容赦ない取り締まりに疑問を抱いた父親は、取り締まった担当の警察官とサシで話をしに所轄の警察署へクレームを入れにいったんです。

Kさん:お父様がそこまで納得行かずに所轄へクレーム入れに行くというのには何か理由があったのでは?

吉田:ええ。自身がプライベートでバイクを乗っている時にスピード違反で捕まっていたんですね。そのせいで駐車違反で青キップ食らってしまったら累積で免許停止になり、タクシーの仕事ができなくなるという裏がありました。僕的には自業自得だろって思いましたけどね(苦笑)。

Kさん:ああ、なるほど。死活問題ですもんね。

吉田:取り締まった警察官は戻ってきてなかったので交通係か何かに事の顛末を全部話しても結局「違反は違反ですから」とピシャリ。父親としては納得行かず「じゃあ都内でタクシー流している運転手は全員トイレにも行くなってことなのかよ!警察はそこまで容赦なく取り締まる機関なのか?じゃあアンタがトイレ限界になったらどうするんだよ?こっちがタクシーだからってナメんじゃないよ!」などと大暴れ。すると部長クラスのお偉いさんまでもがやってきて、最終的にタクシー会社へ連絡されてしまい、「取りあえず戻ってきなさい」ということになり、警察署を後にしたんです。

Kさん:生理現象は止められないわけで、それでも駐車違反で取り締まる警察側に私も疑問を感じてますよ。お父様のおっしゃるように警察官はタクシーの運転手を見下している感が常にありますからこういう事案は断固戦うべきですね。

吉田:タクシー会社側は父親が出て行ってしまったら再び大暴れしてしまうと想定したらしく、事故処理などの交渉係みたいな方がその警察署へ菓子折り持参で翌日足を運んだそうなんです。父親が大暴れしたことを謝罪すると共に、駐車違反をなんとか取り下げてもらえないかと、菓子折り以外にビール券を2万円分包んで部長に交渉したら全て受け取ってもらい、駐車違反の青キップはまだ未処理だったことから取り下げることに成功したと。つまり、交渉次第では警察って賄賂が通じるんだなって、当時僕は目の当たりにしました。

Kさん:それは良い話ですね。交渉役を務めた方の手腕が光ります!

吉田:が、父親は警察側へ謝罪するタクシー会社の方針に納得が行かず、それから3ヶ月後に退職してしまい、別のタクシー会社へ移籍という結末になりましたが(苦笑)。

Kさん:えええええ!お父様はパンクな精神がおありなんですね(笑)。

吉田:うーん、ただの猪突猛進タイプな性格だっただけのような気が……。

Kさん:賄賂と言えば、私が勤めているタクシー会社でも似たような事案がありました。やっぱりトイレが関わってくる案件なんですけども、新宿中央公園の周囲はパーキングメーターも沢山あったりして、タクシー運転手は休憩するのに丁度良い場所なんですね。私の仲の良い同僚のエピソードなんですが、7~8年ぐらい前のことだったと思いますが、タクシー車内でコンビニ弁当を食べ終えた後にトイレへ行くのに、タクシーをパーキングメーター枠内に止めたまま放置したんです。その枠内で小一時間休憩しようとしていたそうで、トイレから戻ってきたら駐車違反のステッカーを駐車監視員から貼られていたと。トイレ行っている間は10分強だったらしく、その間にステッカーを貼られたみたいで、他のパーキングメーター枠内に止めているクルマは取り締まってないのに差別だろと。同僚のタクシーはパーキングメーター枠内に止めていて駐車違反にされた際のメーター表示は……確か50分とかそれぐらいだったと思います。他のクルマは誰か人が乗っていたことで駐車違反にされていなかったようで、そのことにも同僚は立腹。そして所轄の警察署へ出向き、ケータイでその場の写真を撮影したものを見せて説明

吉田:僕の父親のように大暴れはしてないんですねぇ(笑)。

Kさん:それはなかったみたいです(笑)。今考えてみると吉田さんが暴いた59分まで無料で使えるパーキングメーター攻略が活用できていましたから、駐車監視員側のあきらかにミステイクで駐車違反のステッカーを貼られただけですよね。

吉田:確かにそうですね。メーターが50分だったというのならば駐車違反にするのはおかしいです。その証拠写真も警察署で見せているのにそこを警察官が言及してこないっていうのは腹が立ちますなぁ。まぁ、百歩譲ってパーキングメーター59分無料という方法がその当時には浸透していなかったことを置いておいても、相変わらずトイレでタクシーから離れた隙に駐車違反にするっていう行為は”取り締まるための取り締まり”な気がして、国家公務員の越権行為かと思いますね。

Kさん:同僚は不公平だと平等に取り締まっていない駐車違反を訴えるも「300円をケチっているから駐車違反になるんだよ」と言わんばかりな警察官の対応で不愉快な思いをしたと言ってました。その対応してくれた警察官の名刺だけ貰って会社へ戻り、諸々の報告をしたところ、係長がその警察官の名刺を見て「あ、コイツは高校の時の同級生で一緒の野球部だったヤツだ」と。

吉田:へー。偶然にも名刺で同級生と分かったと言うこと……結構特徴的な名前だったとか?

Kさん:はい。かなり特殊な苗字の人だったらしく、同級生は警察官になって地元を離れたと伺っていたそうです。

吉田:段々読めてきました。その係長が同級生の警察官へ連絡入れて駐車違反をチャラにさせたという流れで間違いないです……よね?(笑)

Kさん:はい。ビンゴです(笑)。係長は早速翌日に警察署へ電話入れて同級生と食事の約束を。そして飲み食いした費用はタクシー会社の経費という流れで……って考えるとこれも立派な賄賂ではないかと思ったりしてます(苦笑)。

吉田:いや~、立派な賄賂です! 接待という名の賄賂って言うほうが正しいでしょうね~。結局のところ、警察内部に知り合いがいるとこうやって交通違反はチャラにできるのは昔からありましたが、まさかの高校の同級生っていうのは中々珍しいケースだと思います。Kさんの同僚の方が名刺を貰ってこなかったらこの流れにならなかったわけですし、運命のイタズラにしか思えません!

<次回へ続く>

image by: Thitisan / Shutterstock.com

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私を知る方の多くは「ビデオゲーム関係に強い映画人」なるマスメディア人的イメージが定着してますが、パーキングメーターが59分までならば厳密的に路上駐車が未納状態で可能という事実を2015年に公表したことで環境が一変。以降多くの相談事や取材申請等話を伺いたいとのリクエストが多数来まして、少しでも人助けができるならばと思い、自称・交通ジャーナリストの肩書で有料メルマガへこの度参戦させて頂くことになりました。運転者への有益情報や会員の方々から募った質問を代表して警察へ聞きに行ったり等、お得なネタ盛り沢山!

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