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狙いは何か。米国に続き英国も「ロシア新興財閥」に宣戦布告の怪

先日掲載の「あの有名人まで…米財務省が『ロシア人ブラックリスト』を公開」では、アメリカ財務省がロシア人ブラックリストを作成している事実をお伝えしましたが、今度はイギリスが動き始めたようです。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際政治に詳しい北野幸伯さんが、そのイギリスの新たな動きを紹介するとともに、「米英両国は連携している」との見方を示しています。

イギリスも、ロシア新興財閥に宣戦布告!

アメリカ財務省がロシア人ブラックリスト、「クレムリン・レポートを出した。大統領府、閣僚、新興財閥軍団は、ほとんどリストに入っている。そんな話をしました。まだ読んでない方は、こちらをご一読ください。

あの有名人まで…米財務省が「ロシア人ブラックリスト」を公開

トランプさんは、いまだに親ロシア、親プーチンである。しかし、全民主党と共和党の反プーチン、反ロシア派が、熱心に米ロ関係を悪化させています(それで、得をするのは、中国)。

この戦いにイギリスが参戦するようです。BBC(ロシア語版)2月3日付は、「イギリス政府は、同国に住むロシア新興財閥の不正蓄財、汚職との真剣な戦いを開始する意向だ」と報じています。これは、何でしょうか?

ロシア人金持ちの逃げ場所は?

本題に入る前に、少し背景を書いておきましょう。ある人が、ロシアの田舎に生まれたとします。どこを目指すかというと、まず地方都市です。しかし、もっと野心があれば、モスクワ、サンクト・ペテルブルグに向かいます。モスクワ、ペテルブルグで成功したらどうするの?どういうわけかイギリスに移るのです。

たとえば、ロシアで90年代大富豪になったアブラモービッチ。03年、なぜかイギリスのサッカークラブ、チェルシーを買収しました。そう、ロシアで成功すると、彼らはイギリスに移る(ことが多い)。なぜでしょうか? ロシアに全資産を置いておくと、「没収されるかもしれない」という恐怖があるのでしょうか???

逆に、権力を失った人もイギリスに行きます。たとえば、90年代後半「クレムリンのゴッドファーザー」と呼ばれたベレゾフスキー。プーチンとの政争に敗れ、2001年ロンドンに脱出しています(2013年に「自殺した」と報じられた)。同じくプーチンとの政争に敗れ「シベリア送り」にされた石油王ホドルコフスキー(元ユコス社長)。2013年に出所。その後、イギリスに亡命しました。現在は、「オープンロシア財団」を率い、熱心に「反プーチン運動」を展開しています。

このように、ロシア人は成功しても失敗してもイギリスに行く。そして、イギリス側も、「成功した新興財閥」「権力を失った新興財閥」「その他、失墜した元権力者」を歓迎していました。彼らは、まず「金を落としてくれる」。それに、「諜報」の観点からも貴重な存在なのでしょう。ところが…。

イギリス政府、ロシア新興財閥に宣戦布告!

上の記事に戻ります。ベン・ウォレス安全保障大臣は、「政府は全力で、イギリスを避難所として利用している腐敗した政治家や、外国の犯罪者と戦う!」とタイムス紙に語りました。そして、「われわれが、あなたとあなたの資産のところまで来るとき、私たちは、あなたの人生をとても複雑にする」と警告しました。

大臣は、「『ロシア』の腐敗した政治家や『ロシア』の犯罪者」とは言っていない」と思いますね。しかし、BBCの記事の名は、「イギリスのロシア新興財閥は資産の出所説明を求められる」。「ロシアがターゲット」であると。

メイ首相は、反ロシア

イギリスと、「クレムリン・レポート」を出したアメリカ。この二国は、「連動して動いている」と見るべきでしょう。

そもそも、メイ首相は、トランプよりずっと「反ロシア」です。メイさんは昨年1月、大統領に就任したばかりのトランプにあった。トランプさんは、「プーチン好き」を公言していました。メイさんは、わざわざ「プーチンには、注意しなさいよ!」と警告しています。

なぜ、メイさんは、反ロシア、反プーチンなのでしょうか? 本人に聞いてみなければわかりませんが。彼女は2010~2016年、内務大臣だった。この時期、クリミア併合、ウクライナ内戦などがあった。それで、警戒しているのでしょう。もちろん、イギリスが伝統的に反ロシアだというのもあるでしょう。

なにはともあれ、アメリカとイギリスは一体化してロシアエリートとの戦いを始めるようです。それで、一番得をするのはまたもや中国(涙)。

image by: Drop of Light / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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