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チャイナ・マネーの魔力。各国の政治家が反中になりきれないワケ

先日掲載の「狙いは何か。米国に続き英国も『ロシア新興財閥』に宣戦布告の怪」等でもお伝えしたとおり、ここに来て立て続けにロシアに対して厳しい姿勢を打ち出した米英両国。では、覇権国家の地位を虎視眈々と狙っていると言われる中国に対して、その両国はどのように考えているのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者の北野幸伯さんが、読者からの質問に応える形でこの疑問の答えを記しています。

諜報と政治の関係

読者のIさまから、こんなメールをいただきました。

RPEを拝見させて頂いております。私のような短絡的な考えでは、世界では通用しないと熟熟考えるようになりました。

 

さて、教えて頂きたいことがあります。米国、英国はインテリジェンスの思想の確立された国。組織もしっかりしているのではないのですか? 両国は、中国に関してどのように考えているのでしょうか? 米国の顔色を窺わねばならない我が国にとって両国の行動は重要です。

お答えします。

CIAも間違う

この件について、とてもよい教材があります。マイケル・ピルズベリーさんの『China2049』です。著者は、ハドソン研究所中国戦略センター所長。アメリカ国防総省顧問。外交問題評議会メンバー。国際戦略研究所メンバー。そして、本の中でご自身認めているようにアメリカの諜報員。この方は、ニクソンとキッシンジャーが中国との和解を決意した時から、バリバリ働いていた。そして、有名な「パンダ・ハガー」(親中派)だったのです。

ところがこの本、いってみれば「懺悔本」です。「自分の中国分析は何十年間も間違っていた」と。本の中では、以下のような前提が大間違いだったと書かれています。

  1. つながりを持てば、完全な協力がもたらせる
  2. 中国は民主化への道を歩んでいる
  3. はかない花、中国(アメリカは、「中国は弱い」と信じている)
  4. 中国は、アメリカのようになることを望み、実際、その道を歩んでいる
  5. 中国のタカ派は弱い

これらを、アメリカ国民だけでなく、諜報の人たちも信じていたというのです。中国は、「日本には、尖閣だけでなく、沖縄の領有権もない!」と宣言している。それを知る私たちは、「アメリカ、アホかいな」と思いますが…。

何がいいたいか? 「CIAだって間違えることがある」ということです。なぜ間違えるのか? 諜報員が上司に報告するにしても、何らかの根拠が必要です。

ところが、中国の場合は上から下まで意見が統一されています。たとえば、トップが「平和的台頭」「覇権は望まず」といった。すると、上から下まで、そういう風になってしまう。諜報員が、上の人から下の人まで、100人に聞いてみた。100人が100人、「わが国は平和的台頭を望んでいます。覇権なんていりません。といえば、「そうなのか」となってしまいます。

諜報が正しくても政治が間違うケース

↑こういうケースもあるのですね。たとえば、KGBは、「ソ連を崩壊させるというエリツィンの動きを正確につかんでいました。それで、ゴルバチョフに、「あいつは国賊です。つかまえましょう!」と進言していた。ところがゴルバチョフは、最後の最後まで決断できず結局ソ連は崩壊してしまいます。

これ、日本人にとっては、「ゴルバチョフさんありがとう」かもしれません。しかし、ロシアの人たちにとっては、「なんとバカなことを!」です。

考えてみてください。ソ連の中心はロシア。ロシアは、実質他の14共和国を支配していた。ところがエリツィンは、実質ロシアであるソ連から、「ロシアを独立させた」のです。これって、「大日本帝国から日本が独立した」ようなもの。

ロシアは、東欧を失い、ソ連14共和国を失った。今、東欧や、旧ソ連のバルト3国は、「反ロシア軍事ブロック」NATOに入ってしまった

繰り返しますが、ゴルバチョフの優柔不断、日本にとってはありがたかった。しかし、ロシアにとっては、大きな領土を失う結果になりました。これは、「諜報は正しい(?)が、政治が間違った」例。

アメリカ、イギリスの対中観

では、アメリカイギリスの諜報は、現在中国をどう見ているのでしょうか? 『China2049』を読めばわかりますが、非常に警戒しているはずです。

ところが、政治家はどうしても反中になりきれません。トランプさんは、反中男として大統領になった。しかし、今は、「私は習近平が大好きだ!」と公言してはばからない。イギリスのメイ首相は、バリバリ反ロシアである。一方、中国に対する警戒感は、ほとんどないようです。

なぜ、こうなのでしょうか? 一つは、「チャイナ・マネー」が欲しい。もう一つは、中国のロビー力が世界一だということでしょう。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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