現在我が国では熾烈な「コーヒー戦争」が繰り広げられていますが、品質へのこだわりを貫き、地元の人たちからスターバックスを凌ぐほどの絶大な支持を集めているカフェがあります。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、茨城県の人気カフェ「サザコーヒー」の戦略・戦術を分析しています。
顧客を育てる
茨城県でスタバを凌ぐほどの人気を誇るカフェを分析します。
● サザコーヒー
戦略ショートストーリー
コーヒーにこだわりのある方をターゲットに「コーヒーへの一途な思い」に支えられた「とても飲みやすくておいしい」「居心地が良い」等の強みで差別化しています。
世界一のコーヒー「パナマ・ゲイシャ」や「徳川将軍珈琲」など、最高級の珈琲豆を使用したこだわりのコーヒーを提供することで顧客から支持を得ています。
■ 分析のポイント
顧客を育てる
サザ(サザコーヒー)は、地元の茨城では、スタバ(スターバックスコーヒー)を凌ぐほどの人気とのことですが、両社の戦略比較を通してその理由について考えてみたいと思います。
消費者がコーヒーを飲みたいと思った時にもし、サザとスタバが並んでいたとして、どちらへ行くかは、コーヒーを飲む際に何を重視するかが決め手になります。もし、サザの方が人気があるのであれば、サザにあって、スタバにないものを消費者が重視しているということでしょう。
では、実際にサザの戦略をみてみると「最高品質といえるような革新的な製品を提供する戦略」です。とにかく最高品質のコーヒーを提供することにこだわっていますので採用している戦略が明確です。
一方で、サザを競合ととらえた場合、スタバはどのような戦略をとっているのかというと「顧客の個々のニーズを満たして戦う戦略」だと思います。理由としては、スタバも、コーヒー自体の品質は高いですが、単純な品質の比較では、サザに軍配があがりそうですので、サザにはない「多彩なカスタマイズができるメニュー」が強みになるでしょう。ちなみに、低価格戦略のドトールを競合ととらえた場合、「おしゃれさ」や「高品質な製品を提供すること」も強みになります。
以上でわかるようにサザもスタバも戦略が異なっています。戦略が異なれば、商品や価格帯などの戦術も異なります。戦略・戦術が異なるということは、異なるニーズに応えているということになります。つまり、サザとスタバはそれぞれ、消費者の異なるニーズに応えているわけです。ですから、品質にこだわる方は、サザを選ぶでしょうし、カスタマイズにこだわる方は、スタバを選ぶでしょう。
そこで、話を戻してサザの人気がスタバを凌ぐということであれば、サザの出店エリアには、品質にこだわる方が多いという仮説が立てられます。
今回のポイントはサザは、地域密着企業として、その地域の方をコーヒー好きに育てるような取り組みをしていることです。サザは、世界記録豆を継続して落札するなど、品質へのこだわりを発信し続けていますし、地元のマラソン大会などのイベントで、こだわりのコーヒーを無料で提供しています。
これが何を意味するかというとこだわりのコーヒーを認知する機会や味わう機会を提供することで、消費者、特に地元の方をより美味しい、こだわりのコーヒーの世界に導いているわけです。
こういった取り組みをとおして、コーヒーの品質にこだわる方を増やすことがスタバを凌ぐ人気につながっている一つの要因となっているのでしょう。さらに、地域の方の地元企業を応援したいという気持ちも後押ししているかもしれませんね。
今後、サザコーヒーの「コーヒーへの一途な思い」がどのような形で表現され、消費者に浸透していくのか、非常に楽しみです。
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):カフェ(コーヒー店)
「コーヒー農園主」でもあり「コーヒーメーカー」でもあります - 競合(お客様の選択肢):カフェチェーンやコンビニ など
- 状況:国内のカフェの市場規模は拡大傾向のようです
■強み
1.とても飲みやすくておいしい
- 本格的な味が楽しめる
- 甘味と酸味が凝縮されている
- 品質基準は、「甘さとコク」「香りと濃さ」「綺麗な後味」
2.居心地が良い
- リラックスできる。のんびりできる
- ゆったりとした席配置
- きれいに整備された庭がある(本店)
- カップや器もお洒落
★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
「コーヒーへの一途な思い」
- 品種、手摘み、天日乾燥へのこだわりを持つ
- コロンビア国内で直接コーヒー農園を経営する唯一の日本企業
- 世界中のたくさんの農園と提携や契約
- コーヒー界の世界的権威エドガー・モレノ化学博士が経営パートナー
- 専任の焙煎職人(ロースター)が、「ベストの熱量と焙煎時間」を細かく算出
- 一流のバリスタ
- 心配りができるスタッフ
上記のような、思いやこだわり、そして、それらを実現する人材が強みを支えています。
■顧客ターゲット
- コーヒー好きな方
- コーヒーにこだわりのある方
- コーヒータイムを楽しみたい方
◆戦術分析
■売り物&売り値
「豊富なこだわりのコーヒーメニュー」
- 「サザ・スペシャル・ブレンド」:480円
- 「マンデリン」:540円
- 「サザ農園(コロンビア)」:590円
→直営農園で収穫されたコーヒー豆を使ったコーヒー - 「世界一のコーヒー『パナマ・ゲイシャ』」シリーズ
→本店では1杯「1,000円」「2,000円」「3,000円」の3種類を提供。品切れになれば販売休止。 - 「徳川将軍珈琲」:680円 コーヒー豆は200グラムで1,500円
→江戸幕末のフランス風珈琲。インドネシア産の最高級マンデリン深煎り。サザで焙煎技術を学んだ徳川慶喜の曾孫・徳川慶朝氏が監修したもの
などなど、多種類のコーヒーをラインナップ
その他、手作りのパンやスイーツなどコーヒーに合う食事メニューも提供しています。
■売り方
- 世界記録豆を落札
→10年連続で、世界一のパナマ・ゲイシャ優勝豆を落札。2017年パナマの品評会(ベストオブパナマ)は、1ポンド601ドルの世界記録豆 - 地元(茨城県)のマラソン大会などのイベントで、こだわりのコーヒーを無料で提供
■売り場
- カフェは茨城県を中心に東京都および埼玉県内に直営12店舗
- WEBショップで、コーヒー豆を中心に販売しています
※売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
image by: サザコーヒー本店 - Home | Facebook