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親の言うことをきく素直な子供は、社会に出ると「時代遅れ」になる

誰よりも身近な存在でありながら、なかなか分かり合えないのが親子関係の難しいところ。メルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』の著者で中部大学教授の武田先生は、親子喧嘩を減らすためには「親子の考えの差」を正しく理解すべきとした上で、「婚前交渉」の是非を問う過去に行われた調査の結果を取り上げながら持論を展開。さらに「親の意見に反発しない子」が社会的に成功しない理由も記しています。

社会調査の結果からみる「親子喧嘩をしない秘訣」とは

私は人生で一度も子供とケンカしたことはありませんでした。すでに子供は結婚し、子供(私にとっては孫)がいますから、これから先はケンカはないでしょう。それは私がちょうど子供を持つ前後に、「親子の考えの差」について、ある事実を知っていたからに他なりません。そこで今回は、家庭の科学の第二回目にあたり「親子喧嘩にならないためには」ということでそのコツを書きたいと思います。

1973年から20年間にわたり、大規模な社会調査が行われました。家庭に関するものでしたので、調査の内容は多種多様にわたっていましたが、その中でもっとも成功したと思われる調査は、15歳ぐらいの人から80歳ぐらいまでの年齢の人を対象に「婚前交渉は是か非か」というものでした。

私たちが小さい時代には、婚前交渉をするということはまったく禁じられていて、もしも婚前に妊娠したりすると花嫁はお腹が大きくならないうちにビクビクしながら結婚式を挙げるという状態でしたが、そのうち、「できちゃった婚」と言われるようになり、結婚前に二人で温泉旅行に行くのをはばからなくなったのです。

ずいぶん社会も変わったものですが、もともと男女の関係は洋の東西、古今の社会でまったく異なるもので、一夫多妻から足入れ婚まで「こうしなければならない」というようなものではなく、道徳観の変遷によって大きく変わるものです。

調査は、「婚前交渉はダメ」というのに同意するかどうかという質問をして、「ダメな人の割合を年齢と調査時期別に整理をしています。そうすると、とても面白い結果が出たのです。

40歳の人の回答を見ると、1973年にはダメが80%1983年には50%、そして1993年にはついに20%まで下がっています。つまり、社会が徐々に婚前交渉を認めるようになり、同じ40歳の人を対象にすると、10年ごとに30%ずつダメが減ってくるという傾向になったのです。

そんなの当然じゃないか!と思うかもしれないのですが、それがそうでもないのです。

1973年の調査で30歳だった人は「ダメ」が40%でした。次の1983年には最初の調査の時に30歳だった人は40歳になっています。そしてその人たちはやはり40%がダメ、そしてそれからさらに10年たった1993年には50歳になっていますが、やはり答えは40%が「ダメ」なのです。

つまり、調査の年に40歳だった人に焦点を当てると10年ごとに30%ずつダメが減っていくのに、最初の調査の時に30歳だった人は、調査ごとに40歳、50歳と年齢が変わっていきますが、答えはいつも40%がダメなのです。

つまり、社会全体としては「ダメ」が減っていっているように見ますが、社会の中の一人の人に注目すると、30歳から50歳までまったく答えは変わっていないのです。だんだん、婚前交渉がOKという人が増えているように見えますが、それは高齢者が社会から去っていき若者が社会に加わることによることがわかります。

「親の言うことをきく子供」は社会や友人からも見放される

調査結果を詳細に整理すると、日本人はほぼ25歳で自分が正しいと思うことが決まり、おおよそ65歳まで変わらないということがわかります。中東のイラクで生まれて成長するとイスラム教になり、ポーランドで過ごすとカトリックになるというように、個人の意見は個人によって変わるように見えますが、個人よりその社会の環境で決まっていることも分かります。

ところで、1983年の調査で60歳の人は80%が「婚前交渉はダメ」、30歳の人は20%がダメと答え、全く正反対です。歳の差は30歳。ちょうど親子ぐらいの年齢差です。これが親子喧嘩の原理原則です。親と子供は生きている時代が違い、社会が違い、そこにおける常識も道徳も変化しています。だから、ダメが80%の親とOKが80%の子供が話し合ったら絶対に意見は合わないということがわかります。

それでは、親子で意見が対立することは仕方ないとして、対立したら喧嘩せずに親の言うことに子供が従ったとします。そうすれが親子喧嘩はなくなりますし、親としてみれば「素直に親の言うことを聞く良い子」ということになるでしょう。

ところがこれが子供にとっては悪い結果をもたらします。「素直な子は悪い結果になる」ということです。

30歳の子供が60歳の親の言うことに納得して婚前交渉はダメという考えになったとしましょう。そうなると親子の間は良いのですが、子供の世代の友人、同僚などは婚前交渉OKですから、子供の社会では一人「時代遅れの人」になってしまうのです。時代が変わっているのに時代遅れの考えを持った人は人間関係もうまくいきませんしビジネスでも社会の判断をつかむことができずに失敗するでしょう。(つづく)

image by: Shutterstock

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中部大学教授の武田邦彦です。主に環境問題や資源に関して研究を行っております。 私のメルマガでは、テレビや雑誌新聞、ブログでは語ることが出来なかった原発やエネルギー問題に鋭く切り込みます。

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