年金には「離婚分割」という制度があるそうで、簡単に言うと、元配偶者から年金を半分もらえるという取り決めとのことですが、単純に「はい、半分どうぞ」というわけにはいかないようです。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では、著者のhirokiさんがこの制度について詳しく解説してくださっています。
離婚して元配偶者から年金を半分貰うという事はザックリ言うとつまりこういう事!
今日は年金の離婚分割。世の中は離婚の話題は多いですが、3組に1組は離婚みたいな状況ですよね。熟年離婚の問題も時々クローズアップされます。もちろんDVとか、あるいは家庭崩壊につながる依存症等という深刻な問題もあるから離婚自体を否定はしませんが、こんなに離婚が頻繁になるとなんとなく夫婦ってそんな軽いもんなんだろうかと思ったりもしますね。
そういえば、ネット検索で「旦那」って検索すると、その横に「〇んで」とか「〇スノート」とかね(笑)。その逆もしかり。怖い世の中になったなー…って感じです^^;。独身の自分が言うのもなんですが。
まあ、それぞれの事情はともかく離婚が急激に増えた事により、年金の記録も元配偶者から分割してもらおうという考えの人も多くなりました。
そこで平成19年4月から年金の離婚時分割が導入されました。最大、半分の年金を分けてもらえるっていう制度なんですが、中身をよく知らずにその「半分貰える」っていう都合のいい情報の部分だけを覚えててそれでもう離婚する気満々なもんだから、実際貰える額を知るとたったこれだけ!? という事態も良く起こります。人によっては思わぬ不利益になったり。
結構、お客様というのは都合のいい部分はハッキリ覚えてるけど、それ以外はよくわかんなかったから覚えてないという人って割と多いからですね。文書に残す事は必須です。
また、離婚という重い話が絡むのでこちらとしても結構気を遣うもんなんですよ^^;。離婚分割の相談をする人は結構深刻な思いだったり、あるいは強い怒りや憎しみ、悲しみを抱えてる人が多いのでですね。
まあ、そもそも年金というのは老齢の年金はともかく、遺族年金のように人の「死」や障害年金みたいな「大きな怪我や病気」という辛い出来事が絡む事により発生するものなので、やっぱお話しする時は気を遣うもんなんです^^;。既に受給中であればまだやりやすいんですが。。
こういう記事とかは毎回普通に事例として紹介はしますが、そういった人の不幸が絡んでるので、例えば「亡くなられた場合はこのくらい金額が支給されます」とか言うのも、慣れちゃうとちょっと軽い感じになってしまうので気を付けなければならない時もあります。
でもそういう不測の事態は誰にでも起こりうる事だから、知っておく必要はあるわけです。そのために社会保障があるわけですからね。
さてさて、年金の離婚分割ですが、「離婚してやる !財産も分捕ってやる! ついでに年金も半分貰ってやる!」ってなるわけですが、単純に半分の年金を分けてもらえるわけじゃない。あくまで、分ける部分は婚姻期間中の厚生年金の年金記録のみです。加入期間は分割しないが、この期間に関してはかなり注意が必要。つまり、婚姻期間中に配偶者が稼いできた給料(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)の合計記録を分割してもらうのです。
なお65歳になって国民年金から支給される老齢基礎年金は「個人単位に与えられたまさに最低保障にあたる年金」なのでこれを分けてもらうことはできない。
というわけで今回の無料版では簡素な事例。
1.昭和27年4月27日生まれの夫(今は66歳)
● 何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!(参考記事)
今貰ってる年金は、老齢厚生年金(報酬に比例する年金)120万円で国民年金からは老齢基礎年金720,852円貰ってるとします。合計1,920,852円(月額160,071円)。
厚生年金は昭和50年4月から60歳前月までの平成24年3月までの444ヶ月の記録で算出してます。また、老齢基礎年金は20歳から60歳前月までの国民年金強制加入期間で計算。444ヶ月だと、老齢基礎年金は779,300円÷480ヶ月×444ヶ月=720,852円。
妻と婚姻したのは昭和57年8月からとし、離婚は平成30年9月にするものとします。
じゃあ今度は妻の年金。
2.昭和28年1月生まれの妻(今は65歳)
貰ってる年金は老齢厚生年金40万円(平成8年5月から平成20年3月までの期間で)と老齢基礎年金50万円の合計90万円(月額75,000円)。
よし! 離婚時は夫から年金を半分分割してもらおうと考えた。しかしいくら貰えるかはよくわかんないから、この場合は年金事務所にてまず自分の基礎年金番号と戸籍謄本を持って、年金分割のための情報提供請求というものを請求して、離婚分割時の情報を確認する事ができます。離婚分割後の年金見込み額も記載してもらえる(50歳以上で年金受給資格を満たしてる人)。
さて、妻は半分分割してもらえれば夫の年金1,920,852円の半分である960,426円が妻の年金に加算されて90万円+960,426円=1,860,426円になるんじゃと考えていた。
しかしそうじゃないですよね。
まず夫の老齢基礎年金は分割対象外。よって、120万円のみが対象。じゃあ、その半分である60万円が貰えるのか?
いやいやそれも違う。
まず婚姻した昭和57年8月以降で離婚までの記録のみが分割対象。この昭和57年8月からの夫の厚生年金を計算したら老齢厚生年金は100万円になるものとします。まだ婚姻してなかった昭和50年4月から昭和57年7月までの独身時代に築いた厚生年金期間の年金記録の老齢厚生年金20万円は分割対象外。
う~ん…じゃあ、その100万円の半分の50万円を分けてもらえるの?
この妻は、一応婚姻期間中の中である平成8年5月から平成20年3月までの厚生年金記録で今の老齢厚生年金40万円貰ってますよね(上記に記載)。まず何をするかというと、この婚姻期間中の夫婦の厚生年金記録を合算します。つまり、
- 元夫100万円+元妻40万円=140万円
この140万円を最大半分(50%)分ける。半分とすれば70万円になりますよね。ということは…元妻の老齢厚生年金は40万円から30万円アップの70万円になるという事です。30万円の老齢厚生年金を分割してもらったという事ですね。よって、離婚分割後の年金総額は老齢厚生年金70万円+老齢基礎年金50万円=120万円(月額10万円)となる。
一方、元夫は婚姻期間中で算出された老齢厚生年金100万円が70万円に減額され、老齢厚生年金合計額は独身時代の20万円の老齢厚生年金と離婚分割後の70万円と老齢基礎年金720,852円=1,620,852円(月額135,071円)になるという事です。ザックリこんな感じという事を覚えておいてくださいね~!
なお、離婚分割による年金額の変更は離婚した時からではなく、あくまで「離婚分割を請求した月の翌月からの変更」となる。
※注意
今回の事例は夫婦ともに年金受給者でしたが、別に受給者でなくとも年金記録を分割できる。分かりやすくするために両者を年金受給者としました。
例えば、この夫婦は平成30年9月に離婚しますが、離婚分割請求を平成31年3月に行った場合は、平成31年4月分の年金から年金額が変更される。
ただし、離婚分割は原則として離婚日の翌日から2年以内に行う必要がある。離婚は、協議離婚、調停離婚、審判離婚、和解離婚、認諾離婚、判決離婚の6種類がありますが決着つくまで相当な時間がかかる事があるので気を付けましょう。なお、審判とか調停で時間かかって判決がその2年を超えても認められる例外はある。
というわけで、簡単に計算するとこんな感じですが、注意点や正式な計算はかなり緻密な過程を踏みますので、その件に関しては今週からの有料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座Next(有料版)』にて2~3回に分けて特集します。
離婚分割は元配偶者との合意により分割の割合を決める「合意分割」と、元配偶者の合意なんて問答無用に一方的に50%の割合を分割する第三号分割(三号分割は平成20年4月以降の期間で、平成220年5月1日以降の離婚に限る)があります。
まあ、合意分割の95%以上の人は今回の事例のように50%の割合で決着してますけどね。
離婚分割はほとんどの人は計算過程見ると吐きそうになりますが、実際は結構面白いんですよ! 離婚は面白くないかもしれませんが…(笑)。
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