客寄せに大きな破壊力を持つ半額セール。しかし、「半額商品はいくら売れてもよくてトントン、基本的に赤字」とするのは、地域一番店づくりの専門家として活躍中の前沢しんじさん。前沢さんは自身の無料メルマガ『販促アイデアと経営活性化』で、かつて自分が仕掛けた戦略・戦術を例に上げながら、「半額で集客して本当に買ってほしいものを売る方法」を記しています。
お肉屋さんの半額チラシは効く
100均と同じく「半額」のインパクトは非常に強いです。なにより「価格が半分!」というのがわかりやすい。それに言葉が2文字なのでチラシにも表現しやすく、見るほうからもパッと見てパッとわかる。筆者も販促顧問先で、半額を使って効果的な売上げを作ってきました。
もともとは2001年に日本で初めての狂牛病が発生したときです。牛肉業界全体に大きな打撃となり深刻な社会問題となりましたが、そのあおりで筆者の得意先も売上げが40%もダウンしたのです。
当時は卸業もやっていて、東京に出荷しても全然採算にあわず、それなら小売りでふだんお世話になっているお客様に還元しようということで、「全品半額」を打ち出したところ、これまでにないようなお客さまが殺到しました。もちろん経営数値を厳密に検討し、会議で何回も議論を戦わせ、情報を共有して、社長の熟慮の上での決済を経てですが。
そのとき「半額」の凄さを体感しました。それ以来、年商75億のジャスコ(イオン)が近隣にオープンした時の対策として、またふだんの集客に活用して効果をあげてきました。
集客のための価格訴求チラシに使った例はこれです。
実は、狂牛病の時の半額チラシや、ジャスコ競合対策の広告もあったのですが、6年前の紀伊半島大水害ですべて流されてしまったのです。残念!
見本のチラシの「半額」はコーナーどりをした程度のものですが、本来はもっと大きくメインにバーンと打ち出したほうが効果的です。
半額を実施するときの大事なポイント
何よりだいじなことは、当たり前ですが「全体で損をしない」ことです。それを事前にしっかりと計算し、認識して計画します。そのためには、
1.荒利ミックス
半額商品は単品ではよくてトントン。基本的に赤字です。そこで荒利の高い商品をしっかり陳列して売り場を作りPOP広告を充実させる。味付け商品や総菜など、荒利の稼げる商品が重要です。あわせて考えたいのが荒利率より「最終荒利額」です。荒利率が下がってもその分売上げが伸びれば最終荒利の「額」は確保できます。
2.数量限定
損失を予めここまでと決め、そこから逆算して、半額にする販売品目と販売数量(全体と、一人あたりの数量)を限定します。決して「ケチケチ」しないこと。お店が許すギリギリの線を想定します。真剣に「これが半額!」と喜んでもらうことを考えましょう。売る側が「辛いなあ」と思うくらいでないとお客さまは感動してくれません。
3.この機会に売りたい品をしっかり売る
これこそが半額の目的です。100円均一でも述べましたがそれはあくまで「集客」の手段です。一番の悲劇は死にもの狂いで企画した半額商品だけしか売れず、「いったい何のためにやったんだろう」という結果になることです。大事なことはそこから何につなげるかということ。つまり、半額で店に来ていただいたお客様に、そのお店のいちばん買って欲しいものをしっかり売ること。そのためには当店ならではの商品があること、なければつくることです。来ていただいたお客様に、しっかり目立つ陳列をして、「うちにはこんないい商品がありますよ」という展開に結びつかなければ、「エサだけとられて終わる!」ことになります。
繰り返します。
- 「半額で集客して、ほんとうに買って欲しいものを売る」こと
- そのためには「自店ならではの商品をもつこと、創る」こと
です。
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