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日本時代の建物を残したい。台湾人の切なる願いの裏にある日台の絆

以前掲載の「台湾では今、古き良き『日本統治時代の建物』が観光地化されている」でもお伝えしたとおり、台湾総督府が残した建造物を今も活用し続けている台湾の人々。今月に入ってからは、花蓮に残る検事長宿舎が1億円近い大金をかけ修復されたとの報道がありました。なぜかの国では日本統治時代の建物をここまで大切にするのでしょうか。台湾出身の評論家・黄文雄さんが自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』に、その理由を記しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年6月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【台湾】日本時代の建物を残したいという台湾人の思い

日本統治時代の検事長宿舎、修復が完了 最後の入居者も祝福/台湾・花蓮

台湾には日本統治時代に建てられた建築物が多く残っていますが、今回はその中の一つである花蓮に残る検事長宿舎が修復され観光地として開放されるというニュースです。以下、報道を一部引用します。

宿舎は日本統治時代の1935(昭和10)年に設置された「台北地方法院花蓮港支部及び検察局」と共に建てられ、戦後も引き続き使用された。だが1951年に花蓮で起きた大地震で同市一帯が被災したのをきっかけに、同支部や宿舎は別の場所に移転。建物は荒廃が進んだものの、2008年に県定古跡に登録され、保存されることが決まった。

 

傅県長によれば、修復にかかった費用は2,670万台湾元(約9,850万円)。今後は県内の他の古跡と同じように維持・管理される。同県文化局によると、敷地内の芝生などの整備が完了した後、一般公開を開始する見通し。

いくら歴史的建造物だとはいえ、約9,850万円もの費用をかけて修復するというのはなかなかの英断です。それは花蓮県の財政が豊かだからではありません。やはり、日本統治時代の建物を残したいという台湾人の思いが実を結んだとしか思えません。

台湾で、日本統治時代の建築物を修復して観光地化する動きが進んでいることは、以前、「台湾では今、古き良き『日本統治時代の建物』が観光地化されている」でもご紹介したことがあります。また、総統府や台北駅の駅舎をはじめ、北投温泉博物館、台北郵便局、西門紅楼など、日本時代に建てられた有名な建築物は数多くあります。

これらが戦後70年以上が過ぎた今でも台湾の人々の日常に溶け込み、台湾の人々にすんなりと受け入れられ、一部は今でも現役として活用されている状況を見るにつけ、日台の絆の深さを感じます。日本と台湾は、決して支配者と被支配者の関係ではなかった。それを何よりも証明してくれているのが、これらの建造物をめぐる台湾での扱いです。

取り壊されもせず、廃屋にもならず、老朽化すれば約1億円もの大金をかけて修復され、その地域の目玉となる観光地に仕立てあげる。そうした行為そのものが、かつての日台関係がどういうものであったのかを物語ってくれています。中でも、台北の「霞が関」とも呼ぶべき博愛地区には、日本統治時代の堅牢な建物が多く並んでいます。日本の建築を学ぶ学生などにとっては、必見の場所でしょう。

台北の西門町にある西門紅楼は、2016年に14ヶ月にわたる大規模な修復工事を経て、営業を再開しました。かかった費用は約1億8,000万円とも言われています。1908年に台湾初の公営市場として建設され、賑わっていた紅楼。

市場としての役目を終えた後は、映画館や劇場などとして利用されていましたが、大規模な修復後は外観はかつての八角楼そのままに、文化の発信地として営業、セレクトショップやカフェなどもテナントとして入っています。もちろん、台中、台南、高雄などそれぞれの地域に日本統治時代の建物は残っていますので、興味のある方はぜひ訪れてみて下さい。

話を冒頭の花蓮の検事長宿舎に戻します。修復完成の式典には、宿舎に最後に入居していた元検察官の陳木泉さんが出席したそうです。陳さんは高雄から式典に参加し、修復後の宿舎の中を参観して、「以前と全く変わっていないですね。いや、修復後のほうが以前よりも素敵になっています」と言ったそうです。

回82年宿舍 老檢察長憶當年

こうした歴史の証人は、時とともにどんどん少なくなっています。彼らが存命のうちに、こうしたニュースが報道されるのはとても嬉しく思います。彼らの経てきた苦難の経験があったからこそ今があるということを我々は噛み締め、次の世代に引き継いでいく責任があると、改めて気付かされ、気持ちが引き締まる思いです。

西洋は石の文化、中国は土の文化、日本は木の文化、台湾は竹の文化と言われていますが、台湾の竹文化としての文物は腐敗しやすかったせいか、あまり残っていません。そのかわり、台湾に残っているのが日本時代の建築です。また、柳田国男の民族学に影響を受けた「田園調査」も台湾で流行しました。

台湾に残った日本の遺産といえば、鳥山頭ダム、鉄道、道路、総督府などのほか、学校、宿舎、商店街の各商店、官舎などがありますが、その多くは戦後、「敵産」として国民党によって接収され個人所有となりました。

戦中、米軍による台湾大空襲では、私の故郷である高雄県の岡山という地域は、台湾空襲の際、当時の帝国海軍航空隊最大の基地として爆弾の40%以上が集中しました。この時残った給水塔が、岡山のシンボルとして今でも残っています。

そして、私が小学生のとき終戦を迎え、日本人家族と入れ替わりに中国人家族が押し寄せてきました。中国人家族は、日本人が作り上げた緑豊かで清潔な宿舎などを、またたく間に乱雑な状態にしてしまったのです。大陸の人々は、島国の人々と物質面だけでなく精神面でも大きな違いがあったことを、私はこの時知ったのです。

image by: Twitter(台湾ニュース@中央社フォーカス台湾)

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年6月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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