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600万円が1億に化けた。精肉店の焼肉イベントが大成功した理由

競争の激しい小売業界においては、数多ある店舗の中からまず自店の名前を覚えてもらうことが肝心ですが、600万円の経費をかけハデな顧客感謝イベントを開き、店舗の認知度、売上げアップに大成功したとある精肉チェーン店があります。無料メルマガ『販促アイデアと経営活性化』の著者・前沢しんじさんが、その詳細な内容と収支について解説しながら、イベントを計画するにあたって重要な5つのポイントを公開しています。

600万の経費が1億に化けた!

今回書くことはちょっと信じてもらえないかも知れません。なにしろ書き入れ時の日曜を全店(当時5店舗)休業して、お客さまを1,000人以上招待して、焼き肉を浜で食べ放題+地引網でとれとれの魚をすべてプレゼント+その他色々なふるまいをしたというもの。

かかった費用が休業売り上げも含めて600万以上! そんなイベントを軽いノリでやってしまう。信じられますか? それもキッカケは会議で誰かが言った「お客さまをびっくりさせるイベントやりたいですねー」のひとことから。社長がそれに食いついて、「おー、いいね、やろう。地引はどうだ」の即決定からとんとんと実行に移されたのですから。

これまでも何回か書いていますが、ある精肉チェーン店の社長、田中寛は肉屋なのに「おれ、漁業部やろうかな」などと言うくらいの釣りが大好きだったので、たぶん彼もはじめはノリで言ったのでしょうが、なにしろそこはイケイケの企業風土。あっという間に「やるからには全店休んで本気でやるぞ」という運びになったのです。

「どうするのがいちばんいいか考えろ」と社長から命令が下ったあとは、戦略担当、財務担当、企画担当、営業担当、総務担当などが実際のシミュレーションを行うことになります。

イベント概要と費用

いくらノリでやるといってもそれは途中までの話。やるからにはきっちりした予算や効果予測などを事前に企画・計画する。これは当然です。費用のほとんどは休業の売上げ逸失分およそ500万円(ふだんの日曜の売上げ実績同様とする)。地引網そのものの費用は20万程度だったかと。あとはふるまいのための肉や臨時駐車場を借りるなどの費用です。

店舗従業員全員はじめ、本部、卸しセンター、牧場、その他部門の全社全員参加。会社にとってもお祭りで、本気でみんなもいっしょに楽しもう! という雰囲気。全社一丸という言葉は、実際に参加して動くことで、血が通う言葉になります。

事前の参加者募集活動(販促につなげる)、休業の予告、荒天での中止対策(地引はそれに左右されます)、海辺の安全対策、駐車場の誘導、会場設営など、しなくてはならないことをひとつずつ準備していきます。

当日

午前10時開始だが、早朝から各地からお客さまがどんどん車でやってくる。駐車場からずんずんと浜辺にやってくる。招待客だけで1,000人。それにたぶん「いっしょにやってきた方」や、自社スタッフ、さらに取引先の協力人員を入れると千数百人になる。会場である七里御浜は人でいっぱいになって熱気にあふれる

社長田中寛があいさつ。「みなさん、元気ですかー。今日は楽しんでくださーい!」。それだけ。じつに簡潔であれこれ言わない男。

さっそく準備してくれていた浜の漁師さんの合図で全員が網を引き揚げる。「そーれ! そーれ! そーれ!」これが地引網のだいご味。これがお祭り! 結構な大漁で、色々な魚がかかっている。それを手際よく分けて、ビニール袋に入れて参加者にプレゼントする。刺身に調理してのふるまいも始まる。

会場では焼肉が焼かれ、参加者には紙皿でどんどん振る舞われる。「お肉おいしー!」と色々なお客さまが言ってくださる。ありがたい。このためにしたんだ。お客様の笑顔が最高の答え

豚汁にひとだかりができている。搾乳部門からは牛乳のふるまいも。牧場からは子牛がやってきて子供たちとのふれあい。それを地方新聞の記者が写真に収める(事前に取材を頼んでおいた)。

参加者は各々が弁当などを広げる。会場では企業紹介のビデオも放映される。「えー、こんなことやってたんや」というお客様の声。浜では家族がいろいろな遊びをしている。どの顔も笑顔。「あー、やってよかったー」と心から思う

午後3時ごろにはお開きとなり、ビッグイベントは幕を閉じた。

狙い

もともと今後の焼肉バーベキューの時代を見越して色々な手を打っていた。そのための販促も波状的に展開していた。そこへ「焼肉ならたなかを決定づけるイベントとして位置づけた。

公称でなく実数の1,000人以上という規模はなかなかのもので、浜が人で埋まったといってもいいくらいの大賑わいだった。その模様は翌日の地方紙6紙にいっせいに写真入りで掲載され、大きな宣伝効果となった。

結果的に新聞報道も大きな効果となり、その年の8月の焼肉最盛期には月商1億突破という、結果的に経費600万かけても十分おつりが来るくらい大成功となった。結局「600万が1億に化けた」ということになりました。

「焼肉ならたなか」という出来上がったイメージは一過性のものではなく、その後の焼肉の売上げに半永久的な効果をもたらすものとなった。

大事なこと

言い忘れていました。最近は「会議の効果」について書いています。このイベントも、もともとは会議で誰かが言った「お客さまをびっくりさせるイベントやりたいですねー」のひとことから始まったわけです。ささいなことをみのがさず、それを会議で実行の仕組みに移していくのです。会議という仕組みがあれば、何かが動き、何かが形になっていくのです。

いい会議してますか?

image by: Shutterstock.com

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30年以上の販促・営業企画の経験から「こうして売上げを伸ばした!100のアイデア」というテーマで、実際に行った実例を具体的に紹介します。販促以外にも経営活性化に役立つアイデアがたくさん。前沢しんじの販促ビジネス本はアマゾンや大手書店でランクイン。雑誌「月刊商業界」にも販促特集などを執筆しています。

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【著者】 前沢しんじ 【発行周期】 ほぼ 週刊

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