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トランプが金正恩と習近平にダマされぬよう安倍総理がすべきこと

金正恩委員長が6月19日に中国を訪れ、習近平国家主席と会談しました。今年の3月、5月に続くハイペースで既に3回目。その裏には一体何があるのでしょうか。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは、金正恩はトランプをだますことができないと焦っているので習近平に泣きつきバックアップを懇願、今度は中国主導で北朝鮮の経済制裁解除を要請できないかと道を探っているので、日米は断固として拒絶すべきとしています。

金正恩が、今年3度目の訪中。なぜ???

金正恩が、また訪中し、習近平に会いました。

<金正恩氏が訪中、習国家主席と会談 中国国営メディアが報

6/19(火)20:40配信

 

【AFP=時事】(更新)2日間の日程で訪中している北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong Un)朝鮮労働党委員長が19日、首都北京で習近平(Xi Jinping)国家主席と会談した。中国国営メディアが報じた。

3月、5月につづき、なんと今年3回目の訪中です。何が話し合われたのでしょうか? 毎日新聞6月19日付から。

中国中央テレビによると、両首脳は朝鮮半島問題での連携強化を確認。金委員長は12日に行われた米朝首脳会談について「双方が一歩一歩着実に会談の共通認識を履行すれば、朝鮮半島の非核化は新たに重要な局面を打開することができる」と述べ、段階的に非核化を進める意向を示唆した。米朝首脳会談について、当事者の金委員長が外国首脳に直接説明するのは初めて。訪中は20日までで、両首脳の会談は3月の北京、5月の遼寧省大連に続く3度目となった。金委員長は米朝首脳会談について「関係各国の利益と国際社会の期待に合致する前向きな成果が得られた」と述べた。

「『双方が一歩一歩着実に会談の共通認識を履行すれば、朝鮮半島の非核化は新たに重要な局面を打開することができる』と述べ、段階的に非核化を進める意向を示唆した」そうです。習近平は、どういうリアクションだったのでしょうか?

一方、習氏は会談で「朝米首脳会談は半島核問題の政治解決プロセスの重要な一歩になった」と高く評価した。その上で「朝米が合意を着実に履行し、関係各国が共に半島の非核化プロセスを推進するよう望む。中国側は建設的な役割を果たしていく」と述べた。
(同上)

習は、米朝首脳会談の結果を高く評価し、米朝が合意を着実に履行することを望むそうです。

これは、「ウソ」でしょうか? それとも「本音」でしょうか?

私は、本音だと思います。北朝鮮核問題に対する中国の立場を簡単に復習しておきましょう。

中国は、北朝鮮の核に一貫して反対しています。しかし、その理由は、日米韓とは異なる。日米韓は、「北朝鮮が、核攻撃するかもしれないから」反対している。中国に、そんな心配はありません。しかし、核兵器不拡散条約(NPT)体制崩壊を恐れて、北の核に反対している。

NPTによると、中国は「合法的に核兵器を保有してよい国」なのです(他には、米英仏ロ)。北朝鮮の核保有を許せば、日本や韓国が核を持てない根拠がなくなってしまいます。それで、中国は、北の非核化を支持している。

そして、中国は、「北朝鮮が存続すること」を強く望んでいます。北朝鮮は、「アメリカの中国侵略を防ぐための『緩衝国』だから」です。この点、ロシアと立場は同じ

そして、今回のディールを思いだしてみましょう。アメリカは、北朝鮮の体制を保証し、北朝鮮は、完全な非核化を行う。北から核はなくなり、北朝鮮は存続する。これは、まさに「中国の望むディール」といえるでしょう。では、中国の「一人勝ち」なのでしょうか? そうともいえません。北が核兵器を放棄すれば、日本、アメリカ、韓国は、「核攻撃の脅威」から解放されます。

では、北朝鮮の金体制が存続することはどうなのでしょうか? 北が拉致被害者を返し、今後誘拐しないのであれば、金体制がつづいても困りません。トランプは、「アメリカは、制裁を解除できるが、経済支援は日本がする」といいました。金が、「経済支援してくれ」といってきたら、「拉致被害者を返したらしましょう」といえばいい。

というわけで、「北は非核化アメリカは体制保証」というディールは、関係国(日米韓中ロ北すべてにプラスになる、「ウィンウィンディール」なのです。

金訪中の本音

このディールは、「ウィン・ウィン」ですが、「ウィン(北)・ルーズ(米)」を望んだ金には大いなる不満があります。彼は、「偉大な父」の成功例を見習って、「非核化を約束し、制裁を解除させ、経済支援をうけ、核兵器はちゃっかり保有しつづける」としたかった。

しかし、トランプはそれを承知せず、「制裁解除、経済支援は非核化の後」を譲らなかった。要するに、金はトランプをだますことができなかったそれで、金は習近平に泣きつきます。

米朝首脳会談では、北朝鮮側が完全な非核化を約束し、米側が体制保証を確約した。だが、米側は対北朝鮮制裁の解除は完全な非核化が実現した後になるとの立場を崩していない。金委員長は訪中を通して、北朝鮮の最大の貿易相手国である中国側に国連制裁の緩和を求めるとみられる。中国外務省の耿爽(こうそう)副報道局長は19日の定例記者会見で「制裁そのものが目的ではなく、関係国は現在行われている外交対話に協力すべきだ」と述べ、制裁緩和に前向きな姿勢を示した。
(同上)

非核化を巡る対米交渉を有利に進めるために「後ろ盾」とする中国の支持を取り付け、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議の緩和や経済支援につなげる狙いがあるとみられる。
(読売新聞 6月19日)

中国ロシアは、ずっと制裁解除に前向きでした。それで、「対北朝鮮制裁を解除すべきだ」と主張しはじめるかもしれません。もちろん、アメリカは、拒否権を行使すると思いますが。このあたり、安倍総理は、さりげなくトランプに念を押すべきでしょう。

「大統領!クリントン、ブッシュは、それで失敗したのですぞ! 非核化が成るまで、制裁緩和、経済支援はなりませぬ! それをやれば、世界は、『トランプは習近平と金正恩に完敗した!』と嘲笑することでしょう」

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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