MAG2 NEWS MENU

ソフトバンクの勢いに陰り、孫正義が株主総会で言われた痛烈な一言

6月20日に開催されたソフトバンクの株主総会。「孫正義ファンミーティング」の異名を持つ同会で、孫社長は何を語ったのでしょうか。今年も総会に参加したケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが、自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』でその模様をレポートするとともに、近く公正取引委員会から「独占禁止法違反の恐れがある」と指摘される見通しの「接続料と4年縛り」の今後についても考察しています。

今年も盛況だった「孫正義ファンミーティング」――「孫さん、えらい老けたわね」と暴言を吐く株主も

今週、大手3キャリアの株主総会が開催された。

やはり、株主のキャラが濃かったのはソフトバンクだった。

株主からは「ぜひとも総理大臣になってください」とか「配当金はいらないから、孫さんと握手する権利が欲しい」という要望が飛び出すなど、「孫正義ファンミーティング」の異名を持つだけあっての独特な雰囲気に包まれていたのだった。

ただ、例年、株主の気遣いから「孫さんの体調が心配です」という声も上がるのだが、今年は「4、5年前にロボットと一緒に出てきた孫さんのことがファンだった。久しぶりに見たら、えらい老けていた」と素直な感想をぶつける株主も現れた。

「いつまでも元気で」という励ましではなく「えらい老けたな」という逆の指摘に孫さんもちょっと面食らっていたように思う。

プレゼンでは孫社長による「群戦略」の説明に始まり、「いま(19日現在)の株価は8,070円。しかし、アリババ、スプリント、ヤフー、アーム、ソフトバンクビジョンファンドの企業価値を足すと実は2万3,000円分の価値がある。借金分の8,954円を引いても、1万4,000円分の価値がある」と説明。「ソフトバンク株を買わない理由はない。悩みは消えたでしょう。孫正義ディスカウントだ」と力説し、さらなる株の購入を煽ったのが印象的であった。

またこの価値には、いまのところ、ソフトバンクの国内通信事業が含まれており、将来的にはこれは上場するという説明がされていた。年内にも上場という話となっているが、個人的には早く上場してもらいたいと切に願う。

今回の株主総会しかり決算説明会しかり、今のソフトバンクのプレゼンからは、国内通信事業の現状や戦略が全く見えてこず、メディアとしての分析がしにくくなっている。

孫社長は「この10年は97%を通信事業の運営、3%を投資に使ってきたが、これからは97%を投資に費やす」としている。一刻も早く、ソフトバンク本体は孫社長の会社として投資に専念してもらい、ソフトバンクの国内通信事業は宮内社長体制で別会社となり、決算説明会も株主総会も別に開催してもらいたいものだ。

ここ最近のソフトバンクの国内通信事業の数字を見ると「先行投資のフェーズ」といいわけしているようだが、決して数字はいいとはいえない。ワイモバイルの人気が高まることで、結果として収益面の足を引っ張っている状況ではないのだろうか。

そもそもワイモバイルにユーザーがどれだけいるのかを含め、いまのソフトバンクとワイバイルの状況は見えないことが多すぎる。早く上場してもらって、ソフトバンクの国内通信事業の透明性を高めてもらいたいものだ。

公正取引委員会が「接続料と4年縛り」にメス――「独禁法」をチラつかせ販売方法の見直しにつながるか

公正取引委員会が、接続料や4年縛りに関する報告書をまとめたと複数のメディアが報じた。

日経の報道では、報告書案で接続料について「有識者や専門家が定期的に検証し、透明性や公平性を確保すべき」と指摘しているという。

ただ、これまで総務省や公正取引委員会で、接続料について有識者が議論している会議を何度か傍聴してきたが、正直言って、有識者でも「手に負えない」という雰囲気がありありだった。

そもそも、同じ通信サービスを提供しているように見えても、大手3キャリアの経営体制は大きく違う。モバイルを専業とするNTTドコモに対して、KDDIは固定や海外事業なども手がける。また、ソフトバンクはどちらかといえば投資会社がメインになりつつある。ソフトバンクは国内通信分野を切り離し、上場させれば他の2社に形態は近づくが、それでも、3社が全く同質にはなりえない。

接続料は「コストに適正な利潤を載せる」とあるが、このコストを算出するために、企業に対して支出を細部に渡るまで、すべて公開しろというのはハナから無理な話だ。もし、総務省や公正取引委員会が、本気で接続料の透明性を強化したいのであれば、NTTドコモの株式をすべて買い取り、国営企業に戻すしかないだろう。

4年縛りに関しては、報告書では「独占禁止法違反の恐れがある」と指摘されるという。KDDIとソフトバンクが展開する販売方法を見直す必要が出てきそうだ。ただ、総務省の見解では「販売方法をきちんと店頭で説明すれば問題なし」というはずだった。

公正取引委員会では独禁法違反をちらつかせてきたあたりが、総務省よりも踏み込んだ動きと言える。

一連の動きを見ていると「総務省が頼りないから、公正取引委員会がしゃしゃり出てきた」という感もあるし、一方で総務省としても自分たちではどうしようもできないから、公正取引委員会の力を借りたという見方もできる。

いずれにしてもキャリアを圧力をかけようと両者が結託しているのは間違いない。

ただ、接続料が下がった場合、MVNOとしてはさらなる値下げ競争につながり、結果として、経営が苦しくなり、撤退への動きが加速することも考えられる。また、4年縛りのような買い方がなくなれば、ユーザーとしては新しい機種を買うことが難しくなってくる

総務省と公正取引委員会が好き勝手に暴れるのは結構だが、本当に国民のために役に立ったのか、数年後に、きっちりと第三者による検証の場が必要なのではないだろうか。

 

石川 温この著者の記事一覧

日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 石川温の「スマホ業界新聞」 』

【著者】 石川 温 【月額】 初月無料!月額550円(税込) 【発行周期】 毎月 第1土曜日・第2土曜日・第3土曜日・第4土曜日(年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け