「夫婦間で価値観が違うと、子育てに悪い影響があるのでは」と心配している方も多いかもしれませんが、どうやらそういうわけでもなさそうです。今回の無料メルマガ『親力で決まる子供の将来』では、著者で漫画「ドラゴン桜」の指南役としても知られる親野智可等先生が、「価値観の違いは子どもにとっていいこと」と断言し、その理由を記しています。
夫婦で子育ての方針が食い違う
お悩み
2年生の女の子の母ですが、子育てについての考え方が、夫婦間で違って困っています。例えば、私は子どもに間食をさせないのですが、夫は、普通におやつをあげています。
夫も愛情を持って子育てをしているのはわかるのですが、子どもの将来を考えると、不安になります。夫に対して、どのように対応すればよいのでしょうか。
回答
■ 夫婦の価値観の違いは子どもの成長にもよい影響
今回の質問内容を読んで「私の家も同じ」と共感した方も多いのではないでしょうか。子育てについて、夫婦間で考え方が違うのは、よくあることです。お互いに、これまで育ってきた環境が違いますし、価値観も違う別の人間なのですから、子育てについての考え方が異なるのは、当たり前のことなのです。
そして、この考え方の違いについて、絶対に「夫(妻)が間違っている」などと思わないのが大切です。
例えば、ご相談の「間食が良いのか、悪いのか」について、どちらが正解かはわからないはずです。「正しい」「間違っている」ではなく「価値観が違う」という認識を持ってください。
夫婦の価値観の違いは、子どもにとってマイナスになると思いがちですが、実は逆。子どもにとっていいことだと言えます。自分で考えながら、自分の価値観を作っていくことができるようになるからです。母親が「ダメ」と言って、父親が「いい」というのですから、最初は少し戸惑うかもしれませんが、少しずつ、子どもは、自分で考えるようになります。
親だけではありません。おじいちゃんやおばあちゃん、親戚のおばさんやおじさん、学校や塾の先生なども、それぞれ価値観が違います。こうした大人たちの様々な価値観に触れて、その材料をもとに、子どもは、自分の価値観を作っていくのです。
こうした環境で育てば、考えの違う人と接したときに「この人は、こういう価値観なんだ」と認めてあげられるようになります。大人になって社会に出れば、様々な価値観を持つ人間と付き合い、その価値観を受け入れて生きていく必要があります。子どものうちから、人間としての幅の広さを培うことができるのです。
一方、もし、夫婦間の価値観がまったく一緒だったら、子どもは、自分で考える余地がなくなり、親の価値観だけに縛られるようになります。この状態では、人間としての幅が狭くなりがちです。
■ 子どもの前で意見の違いを言い争わない
また、それは子どもにとって息苦しいことになりかねません。母親が几帳面で、父親がずぼらな性格だった場合、もし、子どもが少々だらしなくても、父親は「俺も一緒だよ」と共感してあげることができます。両親がともに几帳面だったら、子どもは“針のむしろ”状態になってしまいます。
「でも、もう一人の親が、とんでもない価値観を持っていたら……」と心配するかもしれませんが、真っ当な大人であれば、人間として絶対的に必要な部分は、同じはずです。「お店のものを盗んではいけない」「人に親切にしよう」「人を傷つけてはいけない」などは、どの親も子どもに言い聞かせていることです。
その結果、子どもは、絶対に守るべきことは厳守していき、それ以外のことは、ゆっくりと自分で判断するようになります。そうして健全に成長していくのです。
では、どうしても放っておけない、価値観の違いが夫婦間で出てきたら、どうすればいいのでしょうか。
まず徹底してほしいのが、子どもの前で口論しないということです。子どもは自分のことで言い争いが起こると、とても不安な気持ちになります。
子どもがいない2人のとき、お茶でも飲みながら、落ち着いた雰囲気の中で話し合うのが大事です。
そして相手が話している時は、共感的に聞いてください。
これにより会話が深まっていき、着地点が見い出せるようになります。
■ 話し合えば相手の価値観の背景が見えてくる
もし、平行線のままであっても、話し合いの中で、なぜ相手がそうした価値観を持っているのか、その背景がわかるようになるため、相手を思いやる気持ちが出てくるものです。そうして少しずつ寄り添っていけばいいのです。
夫婦二人とも、子どもを愛していることは確かなことです。大切なのは、相手を思いやり、よりよい道を探っていくことだと、私は思います。
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