2020年東京オリンピック開催時のホテル不足をメディアで煽り、国をあげて推進してきたといえる民泊事業ですが、ヤミ民泊問題に端を発した住宅宿泊事業法の制定にのまれ、勢いは陰ってきています。無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者、廣田信子さん。廣田さんは、「民泊推進は、タワーマンションの価格を釣り上げ投資資金を呼び込むためだったのでは」とする見方を示しています。
タワーマンションの空室と民泊狂騒曲の行方?
こんにちは! 廣田信子です。
マンションを巻き込んだ民泊騒動は何だったのか? 民泊を巡るトラブルの多さと住民の声に押され各自治体は住宅宿泊事業法による申請受付にかなりの体制を整えて待っていたのですが、実際の申請の少なさに肩透かし…人員に余裕があることから、たいへん丁寧に対応していると聞きました。
管理組合が民泊を禁止していないという書類の偽造があっても、書類だけで判断しないで、きちんと管理組合に問い合わせるので、偽造が発覚したとケースもあると聞きました。サイトの物件に記載された登録番号の偽造も、見破られるようになりました。
不動産業界は、住宅宿泊事業法による民泊から完全に手を引いていて、簡易宿泊所としての民泊施設の開発を加速させていると言います。空いている住宅を旅行者に活用してもらうという「民泊」の当初の趣旨は、どこかに飛んでしまって、結局、旅館業法による宿泊施設設置の規制緩和じゃないか…と思えてしまいます。民泊エネルギーという黒船の力を借りて、旅館業界の規制緩和を進めたということかな…と。マンションの管理組合は、そんな騒動に巻き込ませてたいへんな思いをした訳です。
まだまだヤミ民泊は残っていますが、保健所も警察もかなり本気ですから、民泊禁止を決めているマンションでのヤミ民泊がこれ以上増えることはないのか…それとも、新たなヤミ民泊の手法が出て来るのか…まだまだ注意が必要だと言います。
過去記事「民泊をめぐる表の攻防、裏の攻防」で紹介した、Airbnbから一斉キャンセルされた物件を予約していた私の知人は、ホストと裏の方法で直接連絡をとって、1割引きの料金で予定通り旅行を楽しんで来たと言います。もちろん、Airbnbからは、キャンセルのお詫びのクーポンももらっています。
今、私が気になるのは、東京オリンピックへの過剰期待と、ホテル不足の大宣伝で、臨海部のタワーマンションが、値上がり目的の投資だけでなく、民泊施設としての運用期待も含めて、売られたことです。
先日の記事「ついにきたマンション大崩壊。プロが指摘する恐ろしいローン地獄」に書いた通り、これから売りが大量に出ることが懸念されます。もう住むための「箱」は余りに余っているのです。住む以外の目的で活用の道がなくなった、灯りがともらない大量の住戸が今後どうなっていくのか…その方が気になります。
住むために購入した人と、投資目的で購入した人が混在したマンションが、こらからどう舵取りをしていくかは簡単ではありません。一番の被害者は、幸せに暮らそうと思ってマンションを購入している人たちです。
結局、民泊狂騒曲は、タワーマンションの価格を釣り上げ、投資を呼び込むためのもの? でないとしたら、結局、国は、民泊推進で何を目指しているのかぜひ、聞いてみたいと思いませんか。
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