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2020年、なぜ中国の習近平は「神」になったことを後悔するのか?

国家主席の任期制限制度を撤廃し、終身国家主席で居続けることが可能になった中国の習近平氏。しかし生涯安泰とは言えないようです。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、国家ライフサイクル論の観点で、中国の国家成熟過程は日本と酷似していると指摘。周期はぴったり30年遅れという「事実」を自身の著作『ボロボロになった覇権国家』を引用しながら解き明かしています。

習近平が【神】になったことを後悔する日

習近平さんは今年3月、憲法を改定。「国家主席の任期は、『1期5年』『2期まで』」という規制をなくしました。これで習さんは、「死ぬまで国家主席でいられる」ことになった。

毛沢東をこよなく愛する習さんは、個人崇拝を推し進め、「への道をひた走っています。しかし、習さん、後で「嗚呼、神様になんかならなきゃよかった!」と後悔するかもしれません。

西日本新聞7月19日付に、興味深い記事がありました。上海に住む女性が、習さんの看板に墨汁をかけた。

動画は上海市に暮らす女性が4日、市中心部で自ら撮影。習氏が描かれた看板に墨汁をかけ「習近平の独裁、暴政に反対する! 中国共産党に反対する! 私はここで捕まえに来るのを待っている」と叫ぶ映像で、動画サイトに投稿された。その後、女性は警察に拘束されたとみられる。

日本で、安倍総理の写真が貼られた看板に墨汁かけて、「安倍の独裁に反対する!」とやったら、やはり逮捕でしょうか? それでも、逮捕された後の処遇日中ではずいぶん違うことでしょう。

女性は、レックレスですね。ま、これは、「こういう勇気があるというか、無鉄砲な女性がいるのだな~~~」ぐらいの話。しかし、次の話は、深刻かもしれません。

香港メディアによると、11日には国営通信の新華社(電子版)が「華国鋒は罪を認めた」と題する記事を掲載した。毛沢東の後継者として最高指導者になった故華国鋒・共産党主席が個人崇拝を進めたとして批判を浴び、非を認めたとする内容。中国では習氏の「1強体制」が強まった昨秋の党大会以降、青年時代の逸話を基に習氏を称賛する報道や出版物が増えており、記事は個人崇拝が広がりつつある現状を暗に批判したと受け止められた。すぐに削除されたが、国営メディアが習氏批判とも取れる記事を流すのは異例。党内で習氏に不満を持つ勢力が関与したとの見方もある。

なるほど~。中国にも習さんの神格化に反対する勢力があると。確かに「神」毛沢東さんの時代、中国は、「大躍進」「文化大革命」で、とんでもない状態になりました。ソ連も「神」スターリンが、自国民を大虐殺した。同じ過ちを繰り返すのは、愚かですね。

この二つだけでは、例が少なすぎますが。習さんに対する不満は全体的に強まっているようです。

一連の動きは米国との貿易摩擦が激化した時期と重なる。対米外交で有効な手を打てない習氏の求心力が低下している可能性もある。
(同上)

米中貿易戦争を止められなかったことで、習さんの求心力が低下していると。

2020年、中国経済の崩壊が始まる…

私が習近平のアドバイザーであれば、「神になりましょう」とはいわないでしょう。そうではなく、「習主席、中国は今成長期後期の最末期。これから、成長期から成熟期への移行にともなう混乱が予想されます。神にはならないほうがよいでしょう」というでしょう。これは、なんでしょうか?

中国は1949年の建国から1978年末まで「移行期」「混乱期」でした。賢いトウ小平が改革を宣言したのは、78年末。だいたい1980年から成長期に突入した。日本は朝鮮戦争のおかげで1950年から成長期に入った。つまり、中国は日本から30年遅れているのです。

1960年代、日本は「安かろう悪かろう」で急成長。1990年代、中国は「安かろう悪かろう」で急成長。1970年代、日本は「世界の工場」になった。2000年代、中国は「世界の工場」になった。1980年代、「ジャパンアズナンバーワン」。日本は、世界一の経済大国になると、誰もが確信した。2010年代、「チャイナアズナンバーワン」。リーマン・ショックでアメリカが沈み、「中国が覇権国家になる!」と主張する人たちがたくさんいる。

どうですか? ピッタリ30年遅れでしょう。もしそうであるのなら、

1990年日本でバブル崩壊、暗黒の20年スタート。

2020年中国でバブル崩壊、暗黒の20年スタート。

となるはずです。まあ、習近平は、「日本のバブル崩壊」と「ソ連崩壊」を詳しく研究させているそうなので、多少時期はずれるかもしれません。しかし、「国家のライフサイクル」は、人間の生老病死同様、「不可避なプロセス」なのです。中国がこれから「また二けた成長を始めました」とかありえません。

ちなみにこの話、「中国の成長が鈍化しているのは、誰でも知っている。後づけ、後づけ!!!」と思う人もいるでしょう。では、05年出版『ボロボロになった覇権国家』27pを見てみましょう。

中国は、2008年・2010年の危機を乗り越え初めは安くてよい製品を供給する「世界の工場」として、その後は1億3000万人の富裕層を抱える巨大市場として、2020年ぐらいまで成長を続けるでしょう。

05年の出版時点で、

と書いてあります。中国は既定の暗黒にむかって進んでいる。民は、40年間世界一の成長を誇ってきた中国経済がまったく成長しなくなったのを見て、「習だけが悪い!」と思うでしょう。なんといっても彼は、「終身国家主席」「」なのですから。それで、習さんが神になったことを後悔する日が、迫っています。

image by: shutterstock

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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