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トランプとプーチンの仲を引き裂く、米国内7つの反ロシア勢力

米ロ首脳会談でプーチン大統領に同調し、「ロシアは米大統領選挙に介入していない」とした発言が帰国後の米国内で反発を高め、結局「『ロシアは介入した』を言い間違えた…」と苦しい弁明を余儀なくされたトランプ大統領ですが、事態は収束するのでしょうか。今回の『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、米ロ間の溝は親ロ派トランプの想像以上に根深いことが浮き彫りになったと分析しています。

弱いトランプ(すぐ圧力に屈せざるを得ない…)

先日、「ヘルシンキでトランプさんとプーチンさんが会った」という話をしました(7月16日)。まだ読んでない方はこちら。

全ては中国封じのため。米ロ首脳会談が日本にメリットだらけな訳

米ロ関係は、2014年3月のクリミア併合から、ずっと悪化しつづけている。それで、具体的な合意事項はありませんでした。しかし、私は、「成功だ」と書きました。というのも、米ロ関係が良好になれば中国が困るからです。

中国は、アメリカ、ロシアを「反日統一共同戦線」に引き入れようとしている。

※ 全国民必読証拠はこちら→半日統一共同戦線を呼びかける中国

安倍総理は、これを阻止するために、米ロとの関係を良好にたもっています。しかし、米ロ関係が悪く、なかなか「日米ロで中国包囲網を」という方向に向かわない。米ロ関係が好転すれば結果的に日米ロ関係がよくなる。これは当然いいことです。

米ロ首脳会談で、米ロ関係が改善された。ところが、そう簡単ではないのですね。アメリカに戻ったトランプさんは大バッシングにあいました。そして、自分の前言を撤回せざるを得ない事態になった。何の話?

ロシアは、アメリカ大統領選挙に介入した???

これ、FBIもCIAも、「間違いない!」としています。ロシア側、プーチンは一貫して否定しています。トランプさんは???? BBC NEWS JAPAN7月19日から。

大統領はフィンランドの首都ヘルシンキで行われたプーチン大統領との共同記者会見で、「プーチン大統領がたった今、ロシアじゃないと言った。これははっきり言おう。ロシアである理由が見当たらない」と発言している。

トランプさんの発言は、コロコロ変わります。しかし、プーチンさんと会った後、はっきりと、「ロシアは、大統領選挙に介入していない!」という意味のことをいったのです。

さあ、大変! 意味するところは、「私(トランプ)は、CIAやFBIの捜査結果よりもプーチンの言葉を信じる!」ということです。皆さん、安倍さんが「私は、日本の警察や検察の捜査結果よりも、習近平さんの言葉を信じます!!!」と宣言したらどうですか

帰国したトランプさんは、大バッシングにあいました。それでどうしたか? 早々に、「言い間違いだったということにしたのです。

与党・共和党からもこの発言を非難された後、トランプ大統領は17日に、プーチン氏に同調するような発言になったのは、言い間違いだったと釈明した。
(同上)

どういう間違いだったのでしょうか?

トランプ氏は17日、発言録を見直した結果、説明する必要が生じたとし、「自分の発言における肝心の文章で、『wouldn’t』ではなく『would』と言ってしまった。正しくは、『I don’t see any reason why I wouldn’t(そう思わない理由が見当たらない)』か『why it wouldn’t be Russia(ロシアでない理由がない)』だ。ある種の二重否定だ」と説明した。
(同上)

つまり、「ロシアは、介入した!」と。

「女スパイ逮捕」がさらに米ロ関係を壊す

今世界中で騒がれているのが、この話。トランプさんとプーチンさんが会う前日ロシアの女スパイが逮捕された。

米司法省は15日、ワシントン在住のロシア人女性マリナ・ブティナ容疑者を、米政府に登録せずロシア政府の工作員として米国内で活動していた疑いで逮捕・訴追した。
(同上)

なんでも、ロシア中央銀行のアレクサンドル・トルシン副総裁から指示を受け、アメリカで工作をしていたそうです。(ということは、ロシア中銀副総裁も諜報系???)。彼女はスパイなのでしょうか? それとも、スパイではないのでしょうか?

私には、わかりません。わからないですが、「スパイだとしてもおかしくないよね」というのが、世界の常識だろうと思います。アメリカにはロシアのスパイがいて、ロシアにはアメリカのスパイがいる。

ちなみに、ロシアでは、「罪のない女学生が、無実の罪で逮捕された」と報じられています。そして、逮捕のタイミングについて、ロシア側はこんなことをいっています。

ロシア外務省は18日、ブティナ容疑者の逮捕は、ドナルド・トランプ米大統領とウラジーミル・プーチン露大統領が16日にヘルシンキで会談したことによる「前向きな成果」を損なうための動きだと批判した。

これは、「その通りかな」と思います。繰り返しますが、現段階でマリア・ブティナさんがスパイなのかそうでないのか、私には断言できません。しかし、彼女の逮捕で、「米ロ関係は、悪化するよね」とはいえます。

注目すべきは、ロシア側が対抗し、「ロシア国内のアメリカスパイを捕まえるか?」です。ロシアは、しばしば「目には目を、歯には歯を」。これをやると、米ロ関係は、もちろんさらに悪化します。

トランプについてわかること

話を戻します。今回の「発言撤回」でわかることはなんでしょうか?

これ、安倍さん、習さん、金正恩さん、プーチン、皆そうです。習さんについては、「私は、彼が大好きだ!」と公言しています。金正恩と会った時もそうで、彼が自国民を粛清する残虐なリーダーであることを忘れ、大絶賛していました。プーチンと会って、どうも好きになってしまったようです。

例外はメルケルさんですね。メルケルさんについては、初めて会った時に握手を拒否したり、露骨でした。今に至るまで、関係は悪いままです。

いままで何度も書いていますが、トランプさんは一貫して親ロシアです。しかし、全民主党、共和党の反ロシア派、国防総省、国務省の官僚、マスコミ、FBI、CIAは、反ロシアである。これらの勢力を全部敵にしてロシアとの関係を改善させることは、世界最強のアメリカ大統領といえども、簡単ではないのでしょう。

image by: shutterstock

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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