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新iPhoneへの影響は? スマホ「2年縛り」プラン見直しの茶番劇

総務省が行政指導を行うなど、かねてから問題視されていた携帯大手キャリアのいわゆる「2年縛り」ですが、先日、KDDIとNTTドコモが決算会見で揃ってこの問題について「更新月」を拡大することで対応することを発表。ソフトバンクも追随する見通しとなりました。ユーザーにとってプラスになりそうな印象のある動きですが、「総務省のメンツがたっただけ」とするのはケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。石川さんは自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、今回の「見直し」について「市場の活性化につながることはない」との厳しい見方を示しています。

KDDIとNTTドコモが2年縛りの更新月拡大に言及――両社とも「さほど影響はないのでは」と楽観視

総務省が指摘していた「2年縛り問題が決着しそうだ。KDDIとNTTドコモは、今週行われた決算会見で、2年縛り問題について言及。いずれも、現在、25カ月目と26カ月目に設定されている「更新月を拡大し2年契約の最後の月である24カ月も対象とするようだ。

今回、KDDI、NTTドコモが同様の方向性を示したことで、ソフトバンクも追随するのは間違いなさそうだ。

NTTドコモの吉澤和弘社長は「3キャリアで異なる内容になると、新たな問題が発生しかねない。3キャリアで内容を揃えていくことになるのではないか」と語っており、3社横並びの対応に落ち着きそうだ。NTTドコモでは「準備が整い次第、今年度中には実施する」(吉澤社長)としており、来年3月までには実施の予定だ。

ただ、24カ月目が更新月の対象になるからと言って、吉澤社長は「さほど影響を及ぼすことはないのではないか」という見方をしているようだ。

実際、25カ月目まで待って解約しようとしていた人が、24カ月目に前倒しして解約するという傾向は出るだろうが、24カ月目が新たに加わったからと言って、劇的に流動性が増し、ユーザーが一気にMVNOの流出するとも考えにくい

結果として「総務省の言うことに3キャリアが素直に従いました。チャンチャン」という、総務省のメンツがたっただけに過ぎないのではないか。小手先の成果でしかなく、市場の活性化につながることはないのではないか。

4年縛りに関しても、KDDIの高橋誠社長が、残債免除を受けるためのアップグレードプログラムEXへの強制再加入は撤廃する方向性を示した。しかし、だからといって、4年縛りがなくなるというわけではなく、あくまで強制再加入がなくなるだけのことにすぎない。

公正取引委員会としても、強制再加入があることで、4年縛りどころか半永久縛りになっている点を問題視しているだけにすぎないため、KDDIが強制再加入を撤廃したことで、丸く収まってしまった感がある。高橋社長も解約率への影響は大きくないと見ているようだ。

一般メディアでは「2年、4年縛り見直し」という大きな見出しとなっているが、結局は大山鳴動して鼠一匹で終わりそうだ。

KDDIはアップグレードプログラム強制再加入の見直しにも着手――アップル「iPhone Upgrade Program」いよいよ発動か

公正取引委員会が、4年縛りにメスを入れ、KDDIがアップグレードプログラムの強制再加入を撤廃することで、ユーザーが劇的に流出することはなくても、端末の売り方を見直す必要が出てきそうだ。

公取委の意向としては「2年縛りだろうと4年縛りだろうと、端末を乗り換えると再加入が強制され、半永久縛りになっているのがいかん」というスタンスだ。つまり、2年間のアップグレードプログラムも独占禁止法違反の疑いになりかねない可能性がある。

とはいえ、キャリアとしては、高額化するiPhoneを、割引なしで、24回払いで売るというのは難しい。2年間の割賦となれば、端末代金だけで月額で5,000円程度の負担となるからだ。

そこで、注目しておきたいのが、アップルがアメリカなどで展開している「iPhone Upgrade Program」だ。月額5,000円程度の負担というのはかわらないが、24回払いのうち、12回を支払えば新しいiPhoneに機種変更できるというプログラムだ。もちろん、機種変更する際は、今使っているiPhoneは回収されることになる。

プログラムの中身自体は、キャリアが提供しているアップグレードプログラムと何ら変わりない。しかし、こちらはアップルが提供しているというのがミソとなる。

仮に日本でiPhone Upgrade Programが提供された場合、端末を購入する上で契約はアップルと行うが、通信料金に関してはキャリアと契約するというスタンスになる。

つまり、ここで、セット販売ではなく、端末と通信が分離したかたちが成立する。公取委としては「セット販売で、キャリアが端末の割賦払いでユーザーを拘束し、解約しにくくなるのが問題」というスタンスだ。もし、キャリアではなく、メーカーが、割賦払いとアップグレードプログラムでユーザーを拘束するのであれば、公取委は口出しができなくなるはずだ。

キャリアが料金プランで拘束し、メーカーが端末の支払いで拘束するのであれば、「利用者のスイッチングコストが高まり、他の通信会社への乗換えが実質的に困難になるおそれがある」という指摘には当たらないはずだ。

ただ、このままでは月額5,000円という高額な負担は残ってしまう。しかし、iPhone Upgrade Programが48回払いになれば、月額の負担は一気に半額となり、従来、KDDIとソフトバンクが提供していたプログラムと遜色ないかたちとなる。

もちろん、24回払いでも、キャリアが「docomo with」のような、端末割引をしない代わりに基本料を値引くというプランを導入すれば、ユーザーの負担は一気に下がるだろう。

9月あたりにキャリアとアップルが「iPhone Agreement」を改定し、4年縛りのiPhone Upgrade Programをアップルが提供するようになると、公取委もぐうの音がでなくなり面白いことになりそうな気がするのだが。

image by: shutterstock

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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