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ついに「改憲」へ手をかける安倍首相が悲願達成のため見せる妥協

「今の自民党の政策は全て安倍総理の個人的意向と合致するのでしょうか?」という質問メールを読者から受け取った国際関係ジャーナリストの北野幸伯さん。そこで今回北野さんは、自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』でこの質問に答える形で、現在安倍総理が置かれている立場、さらに自民党の政策が安倍総理の個人的意向と合致していないように感じられる理由について解説しています。

安倍総理と変な政策

読者のSさまから、興味深いメールをいただきました。

北野様

 

Sと申します。いつも拝読させていただいております。もし、機会があれば北野先生のご見解をお伺いしたいことがあります。私は北野先生のメルマガなどを拝読しているため、当然下記の3項目は私も反対です。

 

  • 消費税再引き上げ
  • 残業代ゼロ
  • 3K外国人労働者の大量受け入れ

で、お伺いしたいのは、自民党としての方針ではなく、安倍首相は個人的に上記3項目について賛成、反対、いずれが本音なのか、メディア情報などを元に北野先生なりに想像できたりしないでしょうか?

 

北野先生も絶賛されていますが、安倍首相の外交実績を見れば、包括的に物事を見定め、中長期的に、目的に向かって、戦略を立てて実行できる方であるのは明らかです。その様な合理的な、真っ当な判断を下せる人が、上記3項目が日本の国益にかなうと本当に考えているのかな? 個人的にはやらない方が良いと思っているけど、しがらみからなし崩し的に進めざるを得ないのかな? と考えてしまいます。実際、増税は一度延期していますし。

 

北野先生のメルマガを拝読する時に、安倍首相に対して上記の違和感を感じることがちょくちょくあります。ホントはやりたくないけど、数のパワーを維持するためにはやらざるを得ない、みたいな本音を垣間見れると個人的に納得しやすいのですが…。

お答えします。安倍総理の頭の中がどうなっているか、私にはわかりません。「全部わかります!」といえば、ウソツキになってしまいます。

のうち、「消費税再引き上げ」については、「総理も本音では反対だ」という話、たくさんの人から聞きました。おそらくそうなのでしょう。

残業代ゼロと3K外国人労働者の大量受け入れについて、総理がどう考えているのか、わかりません。働き方改革法は、「月100時間までの残業を合法化する」ひどい内容でした。この改革と、3K外国人労働者の大量受け入れについては、「経団連の意向を受けて」ということだろうと思います。そして、「現場からの声」もありますね。つまり、「今実際に、人手が不足している。なんとかしてくれ!」という悲鳴がある。ということで、

安倍総理は、「消費税再引き上げに本音では反対らしい」。残業代ゼロと3K外国人労働者の大量受け入れについては、「経団連の意向らしい」。そして、「人手不足が今深刻」という現実問題がある。しかし、今回私がいいたいのは、別のことです。

アメリカ大統領でも思い通りにならない

私たちは、「総理大臣ならなんでもできる」「大統領ならなんでもできる」と考えがち。しかし、実際はそうでもないのです。わかりやすい例をあげましょう。

トランプさんは、選挙戦の頃から「プーチン愛」「ロシア愛」を公言しています。言葉だけでなく行動も起こしている。ヘルシンキでプーチンに会い、米ロ関係を劇的に改善させようと試みました。しかし、この問題でトランプは、孤立しています。

しょっちゅう書いていますが、米ロ関係改善については、全民主党、共和党反ロシア派、国防総省、国務省官僚、諜報機関、反トランプ、反プーチンマスコミなどが反対している。要するに、「大部分の勢力が反対している。それで、トランプはロシアとの関係を改善できません。

アメリカ議会は、トランプの意向に逆らって、ロシアに追加制裁を科すことを決めた(8月8日)。このことは、「トランプの意向が、対ロ政策に反映されていないこと」を示しています。そう、世界最強のアメリカ大統領でも、他国との関係を勝手に決められるわけではないのです。

では、どうやって改革するのか?

大統領や総理が、「やりたいことをやれない状態」にある。その時、どうすればいいのでしょうか? まず、「重要課題を一つに絞ります。そして、味方を増やしていく。味方を増やすために、妥協が必要なこともあるでしょう。そこは、最重要課題解決のために妥協していくのです。

安倍総理は、これまでどんな改革に取り組んできたのでしょうか?

2013年、最重要課題は、「金融緩和」だったのでしょう。おかげさまで、日本の景気は、だいぶマシになりました。その次は、「集団自衛権行使を認める安保関連法」だったのでしょう。おかげさまで日米関係は改善され、中国は尖閣侵略が難しくなった。次は、「働き方改革」でしょうか。内容はお粗末でした。それでも「働き方改革!」「働き方改革!」と騒いだおかげで、「残業が減っています!」という報告が、たくさん届いています。そして今、総理はついに「憲法改正をターゲットにされているようです。

このように、何かの改革をするためには

ことが不可欠になってきます。

最重要課題解決のための妥協

各勢力を味方につける過程で、「妥協」が生じます。総理が、法案を通したい。反対勢力に話をしたら、「支持してもいいけど、私たちには、【どんな得】があるのですか?」といわれる。たとえば、自民党総裁選で、総理が派閥の長にあった。それで、「支持するから、大臣ポストを3つくれ」などと、「ディール」が成立する。

というわけで、安倍総理が、改革を実現していく過程で、「妥協の副産物」がでてきます。おそらく、それが、私たちには「わけのわからない政策」なのです(もちろん、安倍さんが変な政策を支持している可能性もありますが)。

というわけで、Sさんの書いておられる

ホントはやりたくないけど、数のパワーを維持するためにはやらざるを得ない」というのは、そのとおりなのでしょう。重要なことは、「数のパワーがなければ改革は不可能である」という現実です。つまり、「数のパワー、「とても重要」である。結局、政治にしても、ビジネスにしても、「どれだけの人に支持されるか」で決まってしまいます。

image by: 自由民主党 - Home | Facebook

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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