MAG2 NEWS MENU

中国の「IT化」をナメるな。これから日本企業が最も警戒すべき点

2011年に主要国の研究開発費で米国を抜き、世界トップレベルになった中国。政府が一丸となって幾多のITベンチャー企業を生み、ついにその内の2社は、世界有数のIT企業にまで成長しました。今回の無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』で嶌さんは、中国がIT大国に成長した要因として「巨大マーケットとスピード感」があると分析。隣国の日本が「中国から学びとれる点」は何かについて詳しく解説しています。

日本を抜いた中国のIT化

バイドゥ、アリババ、テンセント──といった名前を聞いてすぐに「それは中国のIT企業」と答えられる人は、かなりの中国IT通だ。しかも世界のトップIT企業のうち2社は中国企業なのである。いまや中国のIT企業は世界の最先端で活躍しているのだ。

企業価値が10億ドル(約1120億円)以上の未上場企業のことを最近「ユニコーン企業」と呼び将来性が期待されている。2018年8月16日現在で世界に260社あるが、1位アメリカの121社、2位がなんと中国の76社でこの両国が断トツに多いのである。3位がイギリスの15社、4位がインドの11社などとなっているが、日本はわずか1社のみだ。

中国の先端IT企業は、決済サービス、旅行サイト、シェアサイクルなど様々なサービスを提供している。例えば今急速に普及している決済サービスでは、現金を持ち歩かなくてもスマートフォンをかざすだけで決済ができてしまう。タクシーに乗ってもいちいち小銭を出して支払わずともスマホで決済が完了する。中国の電子決済の比率はすでに約6割を占めているという。日本でもスマホ決済が始まっているがまだ2割程度で、経産省は2025年までに40%到達を目標にしたいとしている。

かつて日本はモノづくりでは最先端の技術を作り出し世界を席巻していた。現在は中国が既存技術を組み合わせて新製品サービスを提供することに優れているという。そこでは政府が規制するのではなく、たとえ失敗があっても民間に自由にやらせてみるというベンチャー精神が社会全体に根付いている。いわば社会実験をしながらIT社会の進化を遂げているとみる事ができる。

むろんその過程では、技術の盗用、模倣問題も少なくない。日本企業が中国などに進出して警戒するのは技術の模倣だ。ただ、巨大なマーケットで似た技術があちこちで応用されれば社会の発展のスピードも早くなる。何せGDPは日本の2.5倍、アメリカの6割という巨大な国内マーケットを持ち、毎年50万人近い留学生が帰国して起業を争っているお国柄なのだ。最近は逆に中国市場で広がる技術世界のグローバルスタンダードになるという現象すら起きている。

しかも中国政府はこうしたオープンな技術開発競争を奨励しているので進化のスピードと広がりは、とてつもないわけだ。

主要国の研究者数と研究資金で比較しても中国は2002年に日本を抜き、2011年にアメリカを抜いた。研究資金でも日本の2倍以上でアメリカに近づきつつある。IT大国としての中国を見誤ってはいけない。(財界 2018年9月25日号 第479回)

※ブログには2018年8月15日付けの国別社数の表を掲載しておりますので、興味をお持ちの方は合わせて参照下さい。

時代を読む

image by: Christopher Penler / Shutterstock.com

嶌信彦この著者の記事一覧

ジャーナリスト。1942年生。慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、日銀、財界、ワシントン特派員等を経て1987年からフリー。TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務め、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」に27年間出演。現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」出演。近著にウズベキスタン抑留者のナボイ劇場建設秘話を描いたノンフィクション「伝説となった日本兵捕虜-ソ連四大劇場を建てた男たち-」を角川書店より発売。著書多数。NPO「日本ニュース時事能力検定協会」理事、NPO「日本ウズベキスタン協会」 会長。先進国サミットの取材は約30回に及ぶ。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」 』

【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け