さんま、松茸、ナス、栗、銀杏…。美味しいもので溢れる日本の秋を楽しんでいるのが、『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』の著者でNY在住のりばてぃさん。秋の日本出張が実現し、日本の食を満喫する中、定食屋や居酒屋の「おふくろの味」って、アメリカでは聞かないフレーズだなと思ったそうです。そう思い当たる理由には、アメリカの「おふくろ料理事情」がありました。
帰国の楽しみ。秋の味覚とおふくろの味
1年でもっともロマンチックな魅力いっぱいの「オータム・イン・ニューヨーク」(Autumn in New York)を出て、秋の味覚が魅力的な日本に出張に来ている。 「寿司」に「懐石」、「居酒屋」に「洋食屋さん」などなど、美味しい和食は欧米で大人気。当然、ニューヨークでも美味しい日本食はたくさんある。でも、日本でしか手に入らない食材もまだまだ多いので、海外在住者が日本に帰るときは「何を食べに行こうかな♪」と真っ先に考える人は私だけではないのかなと思う(笑)。
ふと思ったのだが、日本以外の国で、自国に帰るとき「何を食べに行こうかな♪」というのを優先して考える人はどのくらいいるのだろうか。 日本だとよく「おふくろの味」とか「お母さんの味とレシピ」なんて言って崇め懐かしむ。可能であればレシピを学び再現しようとしたりする。「これはおばあちゃんのレシピだよ」なんて言って代々受け継ぐ家もあるだろう。
もっと言うと、「おふくろの味」…は、ある種のブランド価値を持っていて、例えば、「おふくろの味」と書かれたお漬物や佃煮、煮物があると、別に自分のおかあさんが作ったわけじゃないけど、懐かしい家庭の素朴な味がして美味しそうと、無意識に連想したりする。 大戸屋の、「チキンかあさん煮」というメニューはボリュームたっぷりでタレのかかった鶏肉が美味しい。
これも、自分のおかあさんが作ってくれたチキンじゃないけど、「チキンかあさん煮」と出されると、ごくごく一般家庭の食事で健康に良く美味しいのではないかな? なんて思えるから、「かあさんの味」の威力は凄いと思う。
でも、アメリカではこういった表現をする人は非常に珍しい。そもそも家で料理をしないという家も多い。よくアメリカのテレビや映画を見ていると夜食にピザを食べたりするシーンがあるけど、あれは、珍しいことではないのだ。
アメリカ人が知らない「おふくろの味」
もちろん、お母さんが料理をする家もなくはないけど、「お母さんの味が恋しい」と思うような食事を出す家庭は、日本ほど人口比に対する割合は多くない気がする。
ただし、夏のBBQで焼くお肉や、11月にある感謝祭で焼く七面鳥の味付けやかけるソースは家庭ごとにこだわりを持つ傾向にある。でも、これらは日常的じゃない。毎日、七面鳥の丸焼きを食べないしBBQもせいぜい夏の間だけだ。 友人イタリア人家族は若干違う。仲良くさせてもらっているイタリア人家庭では、それこそ「おばあちゃんの味」があって、事あることに食事会を開いておばあちゃんの料理を家族や友人たちにふるまっている。
このおばあちゃんの場合は、レストランを出そうかと考えたこともあるくらいなので、もしかしたら少し特殊な例かもしれない。
他には、以前、ジャズを教えてくれていたポルトガル人のジャズシンガーの女性は、ポルトガルに休暇で帰るという話をした際、「ポルトガルの海と自然が楽しみ」と話していた。
ポルトガルは、首都のリスボンの街並みや自然がインスタ映えするということで、旅行系ブロガーやインフルエンサーに人気の観光スポットだそうだ。
食べ物については特に語っていなかった。ささいなことだけど、文化を理解する上で興味深いと思う。
海外に住んでいると母国でしか体験できないものに対して強い憧れを持つ。特に、秋のこの時期は、「何を食べに行こうかな♪」と考えるだけで楽しくなるから、日本の食の魅力は凄いと思う。
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