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Amazonに続け。なぜ楽天と西友はネットスーパーに参入したのか?

去る10月25日、「楽天西友ネットスーパー」がグランドオープンし話題となりました。これには2017年4月からアマゾンが首都圏で食品の取り扱いを始めた影響が大きいと分析するのは、メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』著者であるMBAホルダーの理央周さん。そこには、ネット通販業者にとって、食品を取り扱うメリットの大きさがあり、これらの動きから学ぶべき点は多くあると理央さんは説いています。

楽天・西友がネットスーパーを立ち上げ

西友と楽天が、合同で運営する楽天西友ネットスーパーの、グランドオープンを発表した。西友が得意な生鮮食品などの食品や日用品のほか、時短ニーズに対応したカット野菜や半調理食品、食材と調味料がセットになった「ミールキット」、楽天のネット通販「楽天市場」で取り扱う地域産品、楽天の農業サービス「ラグリ」の有機野菜や、有機野菜サラダなど最大で2万点の商品を提供するとのことだ。 日本経済新聞の記事によると、

開始した「楽天西友ネットスーパー」では、ミールキットや楽天のネット通販「楽天市場」で取り扱う、地方の食材などの商品も販売する。 配送料について一定の金額を超えれば無料とする。まずは東京都など16都道府県から開始し、配送地域を徐々に広げる。 ネットスーパー事業について、「2019年から20年の黒字化を目指す」(西友)としており、共通ポイントやデータを使った販促キャンペーンも検討する(10月25日付 日本経済新聞より)

ということだ。

なぜ今、ネットスーパーなのか?

ではなぜ今、楽天と西友が手を組んでのネットスーパーなのか? まず最大の理由は、アマゾンの動きだろう。アマゾンは、昨年4月から首都圏で食品を取り扱い始めた。品目点数にして17万点以上とのことだ。さらに関西にも進出するのではないか、という報道も以前にあった。 これまで、食品はネット通販と相性が悪い、と考えられてきたが、アマゾンが食品のネット通販市場に参入したということは、市場そのものが拡大すると考えられる。そこで、国内ネット通販各社も、相次いでネットでの食品通販を立ち上げ始めた。

以前、このメルマガでも紹介したように、17年11月にはセブン&アイホールディングスと、アスクルがIYフレッシュを立ち上げた。こちらは、都内の一部に、食品では約5000点を扱う。イオンは2008年から取り組んでいて、46都道府県に3万5000点の取り扱いがあるとのことだ。

もう一つの理由としては、食品を扱うことによって、ユーザーの来店頻度を上げたい、ということがあるのだろう。食品以外の雑貨カテゴリーにおいては、毎日買いに来るような商材は少ない。生鮮食品はできる限り毎日のように買いたいし、新鮮なものがすぐに欲しいというのが、消費者心理だろう。

また、企業側としては、食品はリピートでの購入が見込める。マーケティング活動において重要な、ロイヤルティを高めることもできるのだ。このような市場ニーズが、ある中で、ITの進化に加えて、ネットでの流通網の整備、そして、ノウハウが各社蓄積されてきたため、この乱戦の幕が開いた、と言えそうだ。

しかし、生鮮食品を仕入れ販売する、ということは生半可なことではない。産地とのつながりがなければできないし、今はCSR的にも品質の保持には特段のノウハウが必要だ。さらにオーガニックをはじめとした、新しいカテゴリーの食材も出始めている。

このような事業開始前段階での問題点を、自社で解決しようとせず、その点が得意な他社との戦略的提携で、各社が対応しようとしている点が特徴だ。 IYフレッシュにおいては、イトーヨーカドーグループが持つ、生鮮食品の仕入れノウハウと産地との繋がりを、アスクルの持つ、配送網とノウハウ、そしてネット通販での経験と、合体させ、協業することで、生鮮食品のネット通販に参入した。

この点においては、今回の西友と楽天も、同じように、自社の強みを考えた上で、自社に足りない点を捕捉できる企業との、戦略的提携を組んだ、という意味においては同様だ。

アマゾンも、自社のネット通販のノウハウと経験に、2017年に買収した米国の食品スーパーの、ホールフーズのノウハウを掛け合わせて、生鮮食品のネット販売に生かしているに違いない。 米国では、ウォルマートもマイクロソフトやグーグルと提携している上に、ニュースではいくつかの新進企業を買収して、ネット通販へのシフトを加速している。

アマゾンが、ウォルマートや、日本の各企業と異なっているのは、他企業との戦略的提携ではなく、ホールフーズを買収しての事業構築だという点だ。他企業との戦略的な提携の方が、スピードを持って開始できるだろうが、異なる企業文化の融合による不具合や、組織的な編成など問題も多い

他社を買収することは不確定要素も多いが、自社のノウハウに直接入れ込むという点においては社内浸透も早いだろうし、何より自社として「本腰」を入れることができる。 この点が、これからの競争にどう関わって来るのか、とても興味深い。

協業を進める企業から何を学ぶべきか?

この各社の合従連衡的な動きから、私たちは何を学ぶべきなのだろうか?

まず重要な点は、市場の拡大に敏感であり、市場機会を発見したらすぐに打って出ることだ。市場の変化のスピードと、競合他社の動きは、私たちが想像している以上に速い。常にアンテナを立てることが必要である。 次に重要な点は、顧客の来店頻度を上げる努力をすること。ネットに限らず、リアルでのショップでも、来店頻度・滞在時間の長さと、購入の確率の多くは比例する。自社の商品ポートフォリオを見直し、来店頻度を高くできるカテゴリーを増やすことなど、できることは多いはずだ。

最後に、売り切りではなく、継続購入してもらえる商品をどれくらい持っているか、が重要だ。売り切りのサービス・商品構成になっていると、毎回、販売努力をしなければならない。これこそが最大の負荷になる。

顧客がリピートして買いたくなるような、商品カテゴリーが自社にあるかを見直し、付加価値とともに提供できているか、それらを顧客が利便性高く購入できるのか、が大きな分かれ目になる。 学べる点は、数多くあるのだ。

image by:Suikotei [CC BY-SA 4.0], ウィキメディア・コモンズより

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