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【書評】日本人がドイツに住んで判明、まるで似てない2つの文化

規律を守る真面目さが日本人とよく似ているとされるドイツの人々ですが、実際には「全く違う」…。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』では編集長の柴田忠男さんが、ドイツ在住の26歳の日本人女性が「住んでみて初めてわかったドイツ人の素顔」を綴った1冊を紹介しています。

日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち
雨宮紫苑・著 新潮社

雨宮紫苑『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』を読んだ。「20代の若き感性が現地で驚き戸惑い怒り笑いながら綴る、等身大の比較文化論」とカバー折り返しにある。ドイツ在住のフリーライターという肩書きは珍しい。そこがセールスポイントで、わりと評論っぽい部分もある。

働き方や教育といった大きなテーマもあるが、多くはドイツの日常のリアルをライトな筆致で描いている。ドイツには地域差もある。移民も多い。ひとくくりに出来ない。現地で暮らす26歳日本人女子が見聞した範囲内のドイツである。普通の日本人が素朴に抱いているドイツのイメージとは、かなり違っている。

ドイツ人は規則を守る。日本人も規則を守る。ドイツ人が規則を守るのは、日本語的なマジメさゆえではなく、規則を破った人には徹底して厳しく規則を守ることが絶対正義とされているからだ。ドイツでは自分が不利な立場にならないために規則を守るのであって、必ずしも「マジメだから」とは言えない。

ドイツ人は自分を守ってくれる規則が大好きで、知らずに損をしたくないから、知識としていろんな法律を知っていたりする。日本人とドイツ人の共通点としてよく挙げられる「マジメさ」は幻想だ。そしてドイツ人は日本人が勝手に思っているほど、日本にシンパシーを感じていない。日本とドイツは似ていない

著者も当初は、公共交通機関はキッチリ時間通りだろうと思っていた。残念ながらドイツの交通機関はまったく信用できない。日本ではありえない事態に著者も翻弄された。ドイツは何ごともしっかりしている、というのは幻想だった。エコ・環境に配慮している、というイメージがあるドイツだが、日常レベルではエコというより、無駄や捨てるのが嫌いなただのケチであった。

ドイツは議論大国で、みんなが自己主張をする。著者は最初の頃、議論のようすを見て、殴り合いの喧嘩になるのではないかと恐れた。だが彼らは、いくら対立しようとも、議論が終わるとケロッと仲良く雑談している。ドイツは言葉を重視するから書類化が好きで法律規約契約書などが大きな意味を持つ

ドイツはなぜ言葉を重視するのか。まず、過去の経験である。学校ではナチス時代の過ちを徹底的に教え込む。みんなが同じ意見を持つこと自体に危機感があり、多様な意見があるほうが健全だという認識がある。様々な文化背景を持った移民がいるので、常識とか暗黙の了解という概念が成立しない。きちんと言葉や文章にしてして伝えその証拠として書類を残すのである。

更にドイツでは意見交換自体が、「カネのかからない娯楽」と理解されているフシがある、と見抜いた。著者が日本に危機感を持つのは、移民・難民問題に無関心であることだ。欧米がその問題で大揺れしているのに、我が身として考えたことがある人が殆どいないことだ。初めのうちは著者を舐めていたが、意外にしっかりとした考えがあり感心した。増刷になったそうだ。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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