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実験でわかった、効果的な「ならぬものはならぬ」というしつけ方

「子どもに無理強いしても身につかない」、あるいは「余計なことを考えさせずにまずやらせるべし」といった通説は本当なのでしょうか。今回の無料メルマガ『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』では著者で現役教師の松尾英明さんが、ある社会実験でわかった「子どもに望ましい行動を取らせる方法」について論じています。

子どもに望ましい行動をとらせる方法

今回は子育てや教育の重要なヒントになる話。

次の本からの学び。

●『影響力の武器[第三版]ロバート・B・チャルディーニ 著 社会行動研究会 訳/誠信書房

世界的ロングセラーの古典的名著と言われる本なので、読んだことのある人もいるかもしれない。この本の中の「第3章 コミットメントと一貫性」P.150~P.151から引用する。

人は自分が外部からの強い圧力なしに、ある行為をする選択を行ったと考えるときに、その行為の責任が自分にあると認めるようになります。

(中略)

つまり、子どもに何かを本心からやらせようと思うなら、決して魅力的なごほうびで釣ったり、強く脅してはいけないということが言えるでしょう。

この本の中で、面白い社会実験の結果が書かれている。小学生の子どもに、ある魅力的なおもちゃで遊んではいけないと伝える。Aのグループは遊んだら怒るということを告げて脅すBのグループはそれ以上は何も告げない。そして、子どもだけを残してその場を去る。

結果がどうなるか。何と両グループとも、実験直後はほとんどの子どもが言いつけを守って遊ばなかった

結果が明確に分かれたのは6週間後。同じ子どもに、特に何も言わずに、別の状況でフリーの状態で遊ばせる。Aのグループは77%がそのおもちゃで遊んだ。一方のBのグループは、33%しかそのおもちゃで遊ばなかったという。

つまり、Aは外部からの禁止によって行動を制御したため、外圧がなくなった時点で効果が消えた。Bは、内発的に「このおもちゃで遊ぶことは悪いことだ」と心に決めたため、効果が持続したということである。

この理論が正しいとしたら、かなり応用が利く。そして、幼少期の「ならぬものはならぬのです」という教えが、いかに効果があるかということもわかる。理屈や条件、罰を抜きにして「これはいけないことと教えられて守った場合永続的に効果が出るということである。

考え、議論する道徳のねらいはわかる。一方で、理屈抜きに教えることの意味。これは考えるべき点がある。

また、単なる罰や脅しの効果が一時的でしかないというのも、特筆すべきことである。そのような方法では、子どもの行動は変わらないということである。

今、教えたいことは、何なのか。それを守る価値を子どもは感じられそうか。進んで守ろうと思えるか。その辺りにポイントがありそうである。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 松尾英明 【発行周期】 2日に1回ずつ発行します。

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