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自ら相談にきた女性が、解決策を示されると怒るのはナゼか?

職場の男だけで集まれば、同僚や上司の女性について「扱い方がわからない」「面倒くさい」という言葉がつい出てしまう――日本中である光景ではないでしょうか? なぜ男たちは女性を「面倒」と感じてしまうのか、有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』を発行する河合薫さんは、自身の著書『面倒くさい女たち』の中で、女性の立場から冷静で明解に説明しています。

女性の扱いに悩む男性上司、男性社員の必読

面倒くさい女たち』(河合薫/中央公論新社)

コンプライアンスやハラスメントに細心の注意を払う昨今、大きな声では言えないが、このような本音を抱えているビジネスマンがいるはずだ。

「女性って面倒くさい」 なぜ女性は相談にきたのに怒り出すのか。なぜ女性上司は女性部下に厳しいのか。なぜ女性が多数いる会議は長いのか。「あー!もう!!!」。彼女たちの不可解な言動にイライラする男性ビジネスマンたち。そればかりか、「あんな風にはなりたくないよね~」と眉をひそめる女性ビジネスマンもいるだろう。

なぜ女性は面倒くさいのか。その疑問に答える1冊がある。『面倒くさい女たち』(河合薫/中央公論新社)だ。著者は、テレビ朝日系「ニュースステーション」で気象予報士を務め、東大大学院で博士号を取得した健康社会学者の河合薫さん。前著『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)で「ジジイの壁」を解き明かした河合さんは、本書で「面倒くさい女性」と思われてしまう原因、「ババアの壁」について解説する。その理由を本書より少しだけのぞいてみたい。

男性社会の数の論理により立ちはだかる「ババアの壁」

細かい、うるさい、感情的になる。面倒くさいと評判の女性たちは、大きな声では言えないが、あらゆる職場に一定数存在する。彼女たちに注意できればいいが、言い方を間違えればあっという間に「ハラスメントだ!」。女性社員に頭を抱える上司も多いだろう。 だが、待ってほしい。面倒な女性社員はいる。これは事実だ。一方で、面倒な男性社員もいる。というより、男社会の日本では「面倒な男たち」の方が大多数だ。「女性は面倒くさい」は本当なのか?

河合さんは、イスラエルのテルアビブ大学のダフナ・ジョエル博士らが行った脳のMRI画像の分析結果、米ロザリンド・フランクリン医科大学のリーセ・エリオット氏の研究結果などを持ち出し、「男脳」「女脳」に大きな有意差がないことを解説する。誰もが口にする「女性=地図が読めない」のように、「女性=○○」という決めつけは早計だというのだ。

なぜ「女性は面倒くさい」と感じる人が多いのか。それは日本が「男社会」だからだ。女性の社会進出が当たり前になったとはいえ、まだ日本の職場は男性が圧倒的多数。階層が上にいくほどそれは顕著になる。ただでさえ目立つ存在の女性が感情的だったり、細かいことに口を出したりすると、「女性は感情的」「女性は細かい」という目で見られる。

つまり男社会にしみついた「ジェンダー・ステレオタイプ」が、「女性たるもの」「女性とはこんな特徴がある」という視点で女性社員を注目してしまい、少しでも好ましくない行動をとったら「女性は面倒だ!」となるのだ。

著者はこれを「ババアの壁」と表現する。男社会にはびこる、暗黙のルールに逸脱する言動や男性に楯突く行為をうっかりとってしまい、相手が「面倒くさい」と感じた瞬間、「ババアの壁」が立ちはだかる。「だから女は……」と嫌われ、孤立し、失敗に追い込まれ、排除される

本書を読むと、数の論理で迫害を受ける女性社員が一定数いることを知る。男性社員は考えを改めてほしい。「女性は面倒くさい」のではない。その人“個人”が面倒くさいのだ。

「する」男性と「いる」女性、「do」と「be」の違い

しかし、しかしだ。これだけでは説明できないことがある。たとえば、相談を持ちかけてきたので解決策を述べたのに、なぜか怒り出す女性。やたら部下に冷たく当たる女性上司。なぜか毎回長丁場になる女性が多数いる会議。どれも面倒くさい。 河合さんによると、残念ながらこれらは女性特有の問題らしい。たとえば、相談を持ちかけたくせに怒り出す女性。一歩間違えれば「パワハラだ!」と訴えられる。この恐ろしさに最近では女性社員と最低限の会話しか交わさない男性社員もいるそうだ。

なぜこのようなことが起きるのか。それは男性と女性のコミュニケーションの違いにあるという。「する」男性と「いる」女性、つまり「do」と「be」の違いだ。男性は他者と「do」することで「自分を確立」する。相談を持ちかけられたら、解決策を述べることで「自分を感じる」ことができる。

一方、女性は「be」することで「自分を確立」する。男性社員に、私の相談を「一緒に」聞いてほしいのだ。妻が夫に愚痴を言うときも、それを解決してほしいのではなく、自分の不機嫌に共感してもらい、“あたしは間違っていなかった”とホッとすることがゴール。これが男性と女性の違い、「do」と「be」だ。

この論理を用いれば、女性が仲の良い友達の悪口を別の友達に言い出し、そのくせ次の日には仲の良い友達と楽しそうに過ごす、あの怪奇現象の説明もできるという。このあたりは本書で詳しく解説されているので読んでほしい。

では、女性上司が女性部下にやたら厳しくなる理由は何だろう。河合さんは「“女王蜂症候群”が引き起こす現象」と解説。“女王蜂症候群”を解き明かすキーワードは、「階層社会の壁」、今の若い世代が苦労なく手にした「権利」、そして女王蜂たちの「嫉妬」だ。

さらに女性が多数いる会議が長くなる理由は、「もの言う女を嫌う圧力」と「女性が軽視した男の努力」だそうだ。ボストン大学では女性に関する悲しい研究結果を明らかにした。そしてもう1つ、男性ビジネスマンが実行できて、女性ビジネスマンが実行できなかった、会議の明暗を分ける“ある行動”についても言及している。

この他、なぜ女性政治家は失敗するのか、なぜ女性はセクハラにノー!と言えないのか、女性に頭を抱える男性に正しい答えと対処法を授ける本書。女性に対する思い込みが一変することは間違いない。

また、河合さんは「まぐまぐ!」にて、有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』を発行している。前著『他人をバカにしたがる男たち』にもつながる「デキる男」の生き方について解説。「ジジイの壁」を自覚し始めた人ほど要チェックだ。

女性の社会進出が目覚ましい昨今。女性に“光”が当たるのと同時に、今まで明らかにされなかった“偏見”も浮き彫りになりつつある。職場だけでなく、女性に対する苦手意識を持つ人、女性との関わり方に悩んでいる人は、ぜひ本書を“女性の教科書”として読んでほしい。偏見は自覚しないと理解できず、解消もできない。その本書は「女性って面倒くさい」の“根源”を和らげてくれる1冊だ。(文=いのうえゆきひろ)

image by: shutterstock.com

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

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