CNNも指摘。ゴーン逮捕が遅らせる「失われた30年」からの復活

 

日本政府黒幕説、日仏両国の確執などさまざまな憶測が乱れ飛ぶゴーン氏の逮捕劇ですが、その根にあるのは「日本人の外国人に対する感情では」と見るのは、世界的エンジニアの中島聡さん。中島さんは今回、メルマガ『週刊 Life is beautiful』で日本人が外国人に抱く感情を分析しつつ、ゴーン氏叩きを展開するマスコミやそれに快哉を叫ぶ読者は、トランプ大統領を支持する差別主義者と大差ないと痛烈に批判しています。

※ 本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2018年12月4日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール中島聡なかじまさとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

私の目に止まった記事

After Carlos Ghosn, Japan may never hire another foreign CEO

ゴーン氏の逮捕が、どちらに転んでも(=有罪判決が出ようと出なかろうと)、大きな違和感を日産とルノーの間に残すだろうと私は感じていましたが、それどころか、この事件は日本の失われた30年からの復活を遅らせることになりかねないと感じさせる、厳しい記事がCNNに書かれていました。

記事が鋭く指摘するのは、日本企業の外国人CEOに対する拒絶反応のことで、「あたかも他人の身体から移植された臓器に拒絶反応を起こすかのようだ」と表現しています。

これが結果として双方にとってトラウマとなり、日本企業は外国人CEOをこれまで以上に拒否し、外国人もゴーン氏の二の舞を避けるために日本企業のCEOのポジションを避け(日本の司法システムに対する信頼度は、今回の件で地に落ちました)、結果として、日本企業の再生にもっとも必要なグローバリゼーションが大幅に遅れる可能性があるのです。

私は、長年、米国と日本の間を行き来して常々感じてきましたが、日本人の外国人に対する感情は、「人種のるつぼ」で暮らす米国人(特に西海岸で暮らす米国人)とは大きく違います。

自分と大きく異なるものに対する違和感や嫌悪感は、どの国の人も持っているもので、これは「種の保存のために動物が身につけた本能であり、それに抗うことは簡単ではありません。

しかし、「自分と異質かどうか」の線引きは、生活環境によっても大きく変わるため、子供の頃から異人種に囲まれて育つ、米国の西海岸で育った人たちと、ほとんど外国人に触れずに育つ日本人とでその線引きが異なるのは当然です。

さらに日本人の場合、政府が欧米の人々を「鬼畜米英」とまで呼んで国民を洗脳した歴史があり、そしてその米英に負けたというトラウマがあり、そのGHQの占領下で民主化を果たし、米国の子分として高度成長を果たし、強くなりすぎて米国に叩かれ、プラザ合意の結果もたらされたバブルが弾けるという特異な歴史を持っています

その結果として、外国人に対しては、「尊敬と憧れ」というポジティブな感情と同時に、「嫉妬や蔑視」というネガティブな感情も持つ、シスター・コンプレックスのような感情を持っています。

日産のV字回復は、ゴーン氏が(日本人特有の)しがらみを持たない外国人CEOだったから出来た奇跡であり、そこに疑いを投げかけるのは大きな間違いです。にも関わらず、ゴーン氏が逮捕されただけでいきなり犯罪者扱いし、「会社が購入した海外の家をゴーン氏が使っていた」「家族をコンサルタントとして雇っていた」など、大企業で成功したCEOであれば誰もが普通にしているようなことまで事細かに取り上げて批判する日本のマスコミの姿は、許せるものではありません。

結局のところ、そんな記事を書いている連中も、その記事を読んで「やっぱり外国人は悪いやつだったんだ」と納得している読者も、私から言わせれば「人種差別者」以外の何物でもなく、米国で「メキシコ人もイスラム教徒もアメリカから出て行け」と声だかに叫んでいるトランプ大統領の支持者と大差ないのです。

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