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困らせておけばいい。忘れ物を学校に届ける親の子が成長しない訳

子どもの成長を阻害する「心配しすぎ」ですが、心配の奥深くにある親や教師の「願い」を掘り起こすことによって、心配そのものを手放すことができるのだそうです。今回の無料メルマガ『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』では著者で現役教師でもある松尾英明さんが、「心配しすぎ」の問題を解決へ導く考え方を紹介しています。

心配の種を堀り起こして見る

前号「部下も子供も同じこと。『心配しすぎ』が人の成長を阻害する理由」の続き。心配しすぎについて。

前号には反響があった。「心配しすぎ」は、多くの親や教師が抱える課題であるようだ。

ところで、「心配しすぎるな」と言われても、心配してしまうのが人間である。「親だから心配して当たり前だ」という声も聞こえそうである。この「〇〇だから△△して当たり前が出た時は要注意サインである。「当たり前の前提を見直せというサインである。

そもそも、なぜ心配しすぎてしまうのか。心配は、感情である。感情には、目的がある。願いがある。その願いを深堀りしていって気付くことで手放すことができる。心配の種を堀り起こして見る作業が必要である。

子どもが失敗することに一体何が心配なのか。例えば、4月に1年生となった我が子が一人で通学することになった時。心配である。迷子になるのではないか、交通事故に遭うのではないか。つまり、命が心配なのである。これはある程度、妥当な心配といえる。しかし、心配するよりも一緒に通学路を歩く練習をするなど、対策を立てる方が現実的である。心配は、準備不足によっても起こるからである。

では、子どもの忘れ物を届けることはどうか。忘れたままだと、何が心配なのか。子どもが困ることである。これは、困らせておけばよい体操服を忘れても命に別状はない。見学する中で自然に反省して、次に気を付けるようにすればいいことである。繰り返すようなら、声かけなどのサポートは必要であるが、毎度届けているといつまでも成長しない

木登りはどうか。落下によるケガの心配である。これは、再三言っているが、早めに小さなケガをした方がいい。後々で大けがをする確率が低くなる。一度もまともに転んだことのない子どもが大きくなってから一番怖いのである(肉体面だけでなく、精神面でもいえる)。

全く別の視点で、「保身」がある。つまり、周りから立派な親あるいは立派な教師であると見てもらいたいという思い。これは、正直、いらない。即捨てた方がいい心配である。「そうはいっても」と思うかもしれないが、誠実な教師なら、少なくとも子どもの失敗で親を責めたりはしない。たとえ言われても、「いつもすみません」と誠実に対応すればいいだけの話である(親から教師の場合にもいえる)。

まとめると、基本的に心配は「安全」のサインである。つまり、現状維持生命維持のための本能である。

そして成長とは安全領域から出ること。有名な脳科学者の茂木健一郎氏も言っているが、安全地帯・快適地帯(コンフォートゾーン)にいる以上、成長はない。脳は刺激を受けないと成長しないし安全地帯から出ないと進化しないのである。大人にも子どもにもいえることである。

心配しすぎは、子どもの成長を阻害する。心配しすぎることによって、子どもは安全地帯を出られなくなる。その心配の真の願いは、子どもに健やかに育って欲しいという願いのはずである。心配の奥深くの願いを掘り下げれば心配を手放せること請け合いである。

もっと子どもを信じよう。自分自身も信じよう。そんな大人に見守られていたら、子どもも自信をもって生きられるようになるはずである。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 松尾英明 【発行周期】 2日に1回ずつ発行します。

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