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生きたお金を循環させる。地域の「人のつながりづくり」の極意

マンション住民の高齢化による健康不安や孤立防止のため、マンション内のコミュニティ活動需要は高まってますが、こういった活動は長続きしにくいとも言われます。その原因はどこにあるのでしょうか。マンション管理士の廣田信子さんは自身の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』で、高齢者福祉政策の補助金を活用し「継続発展するコミュニティ形成」に成功した千葉県浦安市の事例を紹介しています。

生きたお金の使い方が人のつながりを育てる

こんにちは!廣田信子です。

先日の「人のつながりづくりの『極意』とは』では地域の「人のつながりづくり」の極意の話をしましたが、もうひとつ、大事なことがありました。それは、生きたお金を地域の中で回すということです。

つながりづくりの達人の自治会長は、「無償はだめだ」といつも言っていて、自分のスキルや時間を提供してくださった方には、必ず謝金をお支払いします。同じ地域のことですから、謝金は結構です…という方がほとんどで、他では、完全ボランティア、経費持ち出しで活動されていることも多いのだと思います。でも、それは、継続と発展のためにはよくない…と。

浦安市には、「高齢者あんしんマンションライフ支援事業」があります。マンションに居住する高齢者の方々が、いつまでもお住まいの地域で安心して生活することができる環境を確保するため、マンション内でのコミュニティの形成や、高齢者の孤立を防ぐための活動を支援します、…というのが目的です。うちの自治会も、この事業に応募し、上限年間30万円(事業費の1/2)の補助金を受けています。そして、この補助金は、ものすごく生きた使われ方をしています。

高齢者のお茶会のお菓子や軽食は、自然を生かした体にやさしい食事を広める活動をしている若い女性グループに依頼します。で、テーブルクロスがかけられ、敷地内で摘まれたお花が飾られたテーブルには、健康に良くておいしい手作りのお菓子や軽食が並びます。材料や作り方も紹介されます。それだけで、お茶会に出るのがたのしみになりますよね。そして、その女性グループも、披露する場があることで新たなメニューを開発しがいがありますし、皆さんに披露することで、その活動を知ってもらうことができ、他からの依頼にもつながります。もちろん、営利目的じゃないとはいうものの、それなりの費用はお支払いするようにしているので、活動資金の足しにもなります。

講演会のお茶菓子を用意する場合も、ただ、お店で購入するのではなく障がい者福祉センターで、通所者のみなさんが心を込めて作っているクッキーを購入します。ほんとうにおいしいクッキーです。買いに行くこともありますが、運んで来ていただいて、活動について紹介していただくこともあります。こういうちょっとしたことが、様々な立場の人への理解につながりますから、これも生きたお金の使い方だと思います。

楽器の演奏を行っているグループ、マジックの腕を磨いている方、健康体操を指導している方、健康食品に詳しい方、お花の育て方に詳しい方…等々、身近なところにいるそれぞれの分野の達人」を見つけ、磨いた腕や知識を披露する機会を作り、きちんと謝金をお支払いすることは、ご本人たちのやる気につながり、また、新たな人とのつながりも生まれます。

補助金を受け取るということは、事業計画を立てて、しっかり事業を行い、事業報告も必要になりますので、それなりに大変ですが、それによって、1マンションの試みに終わるのではなく、他の地域で取り組む場合のヒントにもなります。

それにしても、この「30万円」って、なんて生きたお金なんでしょう。1つのマンションから地域の様々な人、活動に流れて循環しています。何百万も税金を使って、外部からどっと人が入って、調査や研究のためのモデル事業をしても、結局、報告書は立派だけど、お金が地域で循環しないし、その地域で継続的に人のつながりが育つことにはつながらない…というような私から見ると残念なお金の使い方に比べると…です。

そして、ここでの活動は、決して補助金頼みではありません。参加する側も、それ相応の費用は自分で負担するような習慣付けをしています。お金を払うことは、自分が主体的にかかわるということの確認でもあるからです。

地域の中で、それぞれが自分の得意を活かしながら、できる範囲で協力し合い、いろいろなチャンネルで人のつながりが広がる…それによって、お互いを知り合うことになり、助け合いのマインドが生まれる…そこに心がこもったお金が循環する…。

ぜひ、自治体には、こういうお金の使い方をしてもらいたいし、それを受ける側も、人がどんどんつながり、お互いの理解が深まるような生きたお金の使い方ができるようになれば…と思います。このお金の循環は、私が描く、金融資本主義の終焉後に来るコミュティ型社会」のお金やサービスの回り方の原型じゃないかな…そんな気がするのです。

株価や為替の変動で動く巨額の数字でしかない「お金」と、こうやって、地域の中で人の顔が見え人の心が伝わりながら循環するお金」は、まったく別物に思えます。まさに『エンデの遺言』の通りです。『エンデの遺言』…また読み直したくなりました。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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