以前掲載の『アクションカメラで感動を売る。GoProのしたたかな販売戦略』では、ターゲットを絞り込み、具体的にその悩みや不満を解消する商品を作った結果、想定外の客層の人気を博したケースを紹介しました。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』で、MBAホルダーの著者・青山烈士さんが取り上げているのも、妊婦という特定のターゲットに刺さった結果、OLという層からも支持を集めたというシューズ。何が彼女らを惹きつけたのでしょうか。
ターゲットを絞り、具体化すること
妊婦のために開発された人気のシューズを分析します。
● 日本製オーダーメイドレディースシューズブランド「キビラ」のヒット商品である「ボディバランスシューズ」
戦略ショートストーリー
妊婦の方をターゲットに「特殊設計のインソール」に支えられた「疲れにくい」「むくみにくい」「バランスが取れる」等の強みで差別化しています。
妊婦の方が抱える悩みである、「靴の脱ぎ履きが大変」なことや「転倒への心配」、「歪み」や「むくみ」といった様々な悩みに応えることで顧客の支持を得ています。
■分析のポイント
ターゲットを絞り、具体化すること
妊婦向けのシューズ開発のきっかけは顧客向けのアンケート結果から、妊婦用への要望が多かったことだったようです。既存の靴では、妊婦の方にとっては不満があったということですね。この既存の靴への不満や悩みに応えようとしたことが妊婦用のシューズ「ボディバランスシューズ」のヒットにつながっているわけです。今回は、そのヒットの要因を考えていきましょう。
まず言えることは、ターゲットを絞ったことがポイントとなります。妊婦という具体的にターゲットを絞ったからこそ、妊婦が抱える不満や悩みが具体的に見えてくるわけです。開発するうえでも、その不満や悩みの原因を調べて、その原因を解消する方法を考えていきます。その結果として、「ボディバランスシューズ」は妊婦の方が、既存の靴に持つ不満や普段の生活での悩みを解決するモノになっています。だからこそ、妊婦の方から支持を受けているのです。
さらに、重要な事実として「ボディバランスシューズ」は妊婦ではないOLの方からの支持を受けているのです。「ボディバランスシューズ」は妊婦の悩みを改善するために作られたわけですが、「ボディバランスシューズ」の価値である「バランスの取れた体になれる」ことや「体系改善」につながることは、OLの方にとっても魅力的だったようです。妊婦だけでなく、OLの方などからの支持を集めることができたこともヒットの要因と言えるでしょう。
ではなぜ、OLの方から支持を得ることができたのかというとやはり、妊婦にターゲットを絞ったからだと思われます。妊婦にターゲットを絞ったからこそ、具体的な解決策を組み込んだシューズができたわけで、ターゲットを絞って、具体的になっていなかったら解決すべき問題が明確になりにくいので、商品開発を進めることも難しくなっていたでしょう。解決策が具体的で優れていたからこそ、妊婦でなくても、似たような悩みを抱えていたOLの方にも響いたということです。
ある特定のターゲットに刺さった結果として、その周辺の顧客の支持を集めるということはよくあります。有名なものでいうと以前、本メルマガで取り上げた「GoPro」も同様の商品だと思います。
● アクションカメラで感動を売る。GoProのしたたかな販売戦略
当初は、スポーツシーンで撮影を行う方をターゲットとしていましたが、「広い範囲を撮影できる」ことや「使いかっての良さ」が支持されていて、「旅行する方」にとっても人気のツールとなっています。例えば、自撮りする際には広角で撮影ができますし、横幅がある建物を撮影したい時などにも問題なく対応できるなどスマホでは難しい撮影ができますからね。このように、「GoPro」は支持層をどんどん拡げているわけです。
まとめますと
まず、ターゲットを絞る
→そのターゲットに刺さる強みを磨く
→その強みが、ターゲットに評価される
→その高評価が、周辺に拡がる
→強みを必要とする方に伝わる
→当初、想定していなかったターゲット層に使用され評価される
→支持層が拡がる
といった流れが見えてきますね。今回は、ターゲットを絞り、具体化することの重要性を改めて考えさせられる好事例だったと思います。キビラは、勢いを感じる企業ですので、今後に注目していきたいです。
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):妊婦用シューズ
- 競合(お客様の選択肢):スニーカー など
- 状況:婦人靴の市場規模はやや縮小傾向のようです
■強み
1.バランスの取れた体になれる
- 身体がまっすぐ伸びる
- 体型改善
2.疲れにくい
- 体圧を足裏全体で分散
- 快適に歩行できる
- 軽量(212g)
3.むくみにくい
- ストレッチ性高い
- 履きやすい
4.転倒を予防できる
- 滑りにくいアウトソール
- つまづき防止設計
★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
- 傾斜5度の3Dインソール(内側加重になる特殊設計)
→下半身の筋肉を効率よく使うことができる
足の専門家である桜美林大学阿久根英昭特任教授とオーダーシューズを手掛けるKiBERAの共同開発
上記のような、独自技術が強みを支えています。
■顧客ターゲット
- 妊婦の方、出産後の方
- 身体の歪みが気になる方
◆戦術分析
■売り物
「ボディバランスシューズ」
- サイズは22.0cm~25.0cm
- 全5色
→ブラック、グレー、ピンク、ホワイト、ブラック/スウェット - 撥水加工で手入れ不要
- 自宅で履ける「ボディバランスムートンルームシューズ」もリリース。
■売り値
- ボディバランスシューズ:8,900円(税別)
- ボディバランスムートンルームシューズ:4,900円(税別)
■売り方
- 女性タレントを活用したCM
- 様々なメディアで紹介されています
■売り場
- 新宿小田急店、銀座コア店、エキマルシェ大阪店、仙台アエル店などのリアル店舗
- オンラインショップ
※ 売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
image by:「KIBERA」公式ホームページ