スマートフォンの普及により販売数が減少傾向にあるデジタルビデオカメラの中にあって、売上を伸ばしているのがアクションカメラ。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者の青山烈士さんが、「アクションカメラの代名詞」とも言えるGoProの巧みな戦略・戦術を図表を交えつつ徹底分析しています。
新たな価値の創出
アクションカメラの世界トップメーカーの戦い方を分析します。
● GoPro(アクションカメラメーカー)
※アクションカメラとはアウトドアでの使用を想定した小型デジタルビデオカメラのことです。
戦略ショートストーリー
スポーツシーンで撮影を行う方をターゲットに「広い範囲を撮影できる」「動きの激しいシーンも撮影可能」「使い勝手がいい」などの強みで差別化しています。
個人でも手軽に感動させるような動画を撮影することを可能にし、撮影した動画のコンテストなど、シェアする場を提供することで顧客の支持を得ています。
分析のポイント
新たな価値の創出
デジタルビデオカメラは、スマートフォンの普及の影響もあり販売数が減少傾向のようです。これは、デジタルカメラにも同じことが言えます。要するに、デジタルビデオカメラもデジタルカメラもスマートフォンに少しずつ取って代わられているということです。スマートフォンでも高画質の動画を撮影することが簡単にできますので、この流れは続きそうです。そのような状況の中で、アクションカメラは販売数が増加傾向にあります。
アクションカメラが伸びている要因としてまず上げられるのが、スマートフォンでは難しい、広角撮影や激しい動きの撮影、水中での撮影などを可能にしていることでしょう。スマートフォンにできないことを価値として提供しているからこそ、他のデジタルビデオカメラとは異なり、スマートフォンの普及の影響をあまり受けていないわけです。
また、ビデオカメラのイメージとして、いままでは、「思い出を残すためのもの」として、例えば、子どもの運動会、お遊戯会、入学式、卒業式などのイベントごとを記録に残すには必須のアイテムだったと思います。ですが、最近はそういったイベントもスマートフォンで撮影する方が多いようです。
一方でアクションカメラは、「感動体験を伝えるためのもの」として、使われている印象です。例えば、サーフボードに設置して、波乗りの映像を撮影したり、頭上に付けて、モトクロスに乗った映像を撮影するなど、まさに体験をそのまま撮影しています。そして、撮影した映像を簡単に編集・シェアできるアプリを提供することで、皆に伝えることを可能にしています。
何が言いたいかというと、アクションカメラは、ビデオカメラを使う新たな目的を創出することでビデオカメラの新しいイメージを作ったということです。つまり、
- 誰にでも感動体験映像の撮影をできるようにする。
- 簡単に編集・シェアできるようにする。
この二つの組み合わせにより、ビデオカメラの新たな価値を生み出したということです。この価値は、特にアウトドアスポーツをされる方に支持されているようです。
アウトドアスポーツでの体験を共有したいという方は多いようですし、やはり、すごい映像を撮ったら見せたいと思うのでしょう。そして、周りのアスリート仲間が、すごい映像を撮ってシェアしてくれたら自分も同じように撮りたいと思うでしょうね。
もともと創業者であるニック・ウッドマン氏はサーフィンをするようでその映像を撮影するためにアクションカメラを開発したそうです。開発者がユーザーでもあるということですので、アウトドアスポーツをされる方のニーズはよく理解していたと思われます。だからこそ、従来のビデオカメラやスマートフォンでは満足できないユーザーのニーズを捉えることができたと言えます。
リリース当初は、既存のビデオカメラと比べると機能面で劣っていたようですが、機能を絞り込むこと、利用シーンを絞り込むことで提供価値が研ぎ澄まされたように感じます。改めて、絞り込むこと、フォーカスすることの重要性を教えてくれる事例でもありました。
先日、360度撮影可能なアクションカメラ「Fusion」が発表されましたし、今後、GoProがどのような価値を創出していくのか楽しみにしています。