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もし、本当に国民年金が廃止になったら我々に何が起こるのか?

「年金は破綻している」「年金制度はもう廃止したほうがいい」。そんな意見がよく聞かれますが、無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者・hirokiさんは「全くの誤りだ」と言い切ります。今回の記事では、「では、もし年金制度がなくなったらどうなるのか」をテーマに、さまざまな問題点を記しています。

もし年金制度が無くなっちゃったらどんな問題が待ち受けているのか

もういつも話題にはなりますが、年金は破綻してる!とか、年金なんてやめたほうがいい!とか、もう積立にしろ!みたいな話題が出たりする。今みたいな現役世代の保険料を年金受給者世代に送る賦課方式から積立方式に変えたほうがいいという考えもまだあるようですが、それは全くの誤り。というか、そもそも年金は歴史的には積立方式から始まったものです。それが役割を果たせなくなったから積立方式ではなくなったんです。

昭和の高度経済成長で悠長に積み立てていられなくなった。この間の物価変動率の記事のように、賃金が伸びまくっていく中で年金額との差が開く一方だったから年金額を法改正をしながら急激に引き上げる必要があったから。そして、物価に変動して年金額の価値を保つ仕組みへと変わっていった。これが何回か前に記事にした物価スライド制。これは将来の積立では対応できないから(毎年経済がどのくらい成長するかわかんないから)、だんだんと現役世代の保険料がその時の受給者に行くという賦課方式に転換せざるを得なかった

ところで積立方式はあらかじめ決められた一生変わらない保険料を支払いながら、運用しつつ、老後になったら積立金と運用収入を年金として貰う。まあ、そのほうが公平っていえば公平だからそれが望ましいから積立方式から始まったんです。でも、基本的には将来の高齢化や少子化、経済情勢がどうなるかは完璧には予測できないので多くは積立方式ではなくなっていくのが通例。

それに今みたいな超長寿国になって、いつまで長生きしてしまうかわかんない時代に積立は対応出来ない。なんだかんだ言われるけど、現代みたいに超長寿国になってしまったので公的年金はますます重要なものとなってくる。昭和20年代前後だと平均寿命が50歳前後だったのが、今じゃ90歳とかになってきましたからね! 年金制度無しでどうやって老後の資金を維持し続けるの!? って話です。

また、仮に今、積立方式に戻したとしたら、二重の保険料負担の問題も生じてくる。自分の老後資金の為の保険料を支払いつつ、年金受給者の年金の為の保険料支払いもしなきゃいけなくなる。全然現実的じゃない。

さて、自分の保険料が年金受給者に渡るなんて嫌だ!とか、年金制度はもう役に立たない!って事で仮に年金制度やめちゃったとします。もう国民年金保険料や厚生年金保険料払わなくてよくなりますよね。余計な負担から解放されました。老後の資金は自分で貯めるから何も問題ない!果たしてそうでしょうか。

結論から言うと年金制度は絶対に守っていかなければいけません。よく言われる、年金制度が破綻したら国も破綻するからとかそんな抽象的な話ではなく。

もし、年金制度をやめたら負担は軽くなるかというと、そんな事はありません。今の年金受給者の人は現役世代の保険料により主に支えられています。でもそれが無くなったら、高齢者は自身の貯蓄と子供からの仕送りに頼るしかありません。という事は年金制度を無くしたら、現役世代は高齢になった親世代を自ら扶養しなければならなくなります。

例えば月6万じゃ生活できるわけないんだから、年金は意味をなさないって言うんならその6万円は子供であるあなたが自分の収入から、親が高齢者になったら仕送りする事になります。つまり自分で扶養する負担が増えるだけなんです。今の賃金から毎月6万支払うっていったら相当な負担になります。それこそ、今の時代って非正規労働者が約2,000万人(昭和60年ごろはまだ600万人くらいだった)になり、賃金もなかなか上がらず、生活はそこまで裕福ではないでしょう。一部の富裕層ならそんな事は大した事ないのかもしれませんが、大抵の人はそんな事不可能ですよね。例えば月10万稼ぐのってホント大変ですよ。年金制度が無くなるって事は自分の家庭の事、ローンや子供への費用だけでアップアップな中に親世代を扶養する負担が上乗せされるわけです。

今の高齢者は恵まれてるってよく言われますが、今の70~80代以上の人達って、高齢になった親世代を扶養しながら自分達の家庭を守りながらやってきた人達です。自分の給料で、老後の親も自分の子をも面倒見てたわけです。90歳以上の人なら戦前は徴兵されて国のために戦い、死線を潜り抜けてきた世代でもあります。

話が飛びましたが、昭和50年あたりはまだ65歳以上の夫婦のみ世帯、または65歳以上の単身のみ世帯というのは90万世帯くらいで100万世帯にも満ちませんでした。でも2010年くらいからは1,000万世帯を超えました

そして、合計特殊出生率も昭和50年あたりから2.0を割り、平成元年に1.57ショックとか騒がれて、その後も出生率は下がり続け平成17年には1.26という最低を記録。それからは回復しながら、今は1.43くらいですが…。ちなみに人口が増えも減りもしない人口置換水準という水準がありますが、それは2.08。よって、今がいかに低い出生率なのかわかると思います。

また、高齢化に関しては2060年くらいには65歳以上の人口の高齢化率は40%くらいになってしまう見通し。なんかそう聞くと上限無く高齢者が増えそうですが、そういうわけじゃない。生まれた人が多かった時代の人(昭和22年~昭和24年に生まれた団塊の世代の人とか)がだんだん減っていってしまうから、全体の高齢者の人の割合は落ち着いていく。全体の人口は2100年あたりは5,000万人切る可能性があるという事にはなっています。

ここで人口問題研究所が出してる将来人口推計は一応頭に入れておいてほしいんですが、大体以下のような感じですね。合計特殊出生率中位推計1.35。すいませんちょっと平成24年人口将来推計での数字なので、平成29年の将来人口推計は少し回復してたので数値は気持ち高めに見ていただけたらなと思います^^;。この辺は流れを見てくれたらなと。人口将来推計の表は目が疲れる(笑)。

今が全人口は1億2,000万人くらいですが、高齢化率27.7%で約3,500万人が65歳以上の高齢者で、生産年齢人口が大体7,500万人。で、今から約20年後の2040年は高齢化率が大体35%で高齢者は3,900万人ほどになる見込みです。この時の生産年齢人口は約6,000万人。年少人口は1,100万人ほど。この20年間は団塊の世代の人がどんどん高齢化していくので高齢者の方は増加し続けます。その2040年をピークに人口層のすべてが減少に転じる

更に20年後の2060年は高齢化率は40%近くにはなりますが、高齢者の人口は3,500万人程に減り、生産年齢人口は約4,800万人になります。年少者人口は900万人ほど。その後も全体的に人口は減り続けて、2100年もおおむね高齢化率40%ほどを推移しながら高齢者が2,000万人くらい生産年齢人口は2,500万人ほど年少者人口は500万人くらい。というザックリ見るとそういうふうになっていく。

生産年齢人口は15歳から64歳までの人ですが、実際に働いてる人である労働力人口は生産年齢人口からマイナス500万人とか1,000万人の幅が出てくると思います。今は高齢者雇用や女性の雇用促進が盛んでありますが、それは政府のやり方としてはいいと思う。ただ、女性の雇用促進と共に子育て支援とか保育所とかそういう問題も大事ではありますが。

さて、昔は子供も多かったし、同居して親世代を扶養するのはなんとか成り立っていたと思う。親を扶養する場合は子供兄弟姉妹が多ければその分負担を分割する事も出来るんだろうけど、こんな少子化になったら子1人に対する負担はズッシリ重くなる。

数字から読み取る今現代はどうか。言い方はちょっと良くないかもしれませんが、親は親自身で生活してください。私達現役世代はお父さんとお母さんとは別居して自分達の生活をするからねっていう状態とも言える。まあ、今の都市化が進んだ社会だとなかなか同居というのは難しいからですね。地方の田舎でそんな職があるわけじゃないし^^;。時代はガラリと変わっちゃった。

ちなみに公的年金が戦後急速に整備されていった背景には、核家族化があった。つまり夫婦だけとか、夫婦とその子供だけで構成されている家族。子が上京して居なくなる世帯が増えてくると、老後に漠然と不安を抱える人が多くなった。だから、昭和36年4月の今のような年金保険料支払って老後や万が一に備える国民年金が創設された時も、国民が自分たち国民にも年金を支給してほしいという声が強くなってきたからこそ、国民年金は生まれた。年金はなんとなく嫌われた制度ですが、そもそも国民が望んだから生まれた

今現代は、核家族どころか一人暮らし世帯という方向の問題に変わった。そういうふうに時代が変わって家族間の私的な負担子が親を扶養するから公的な負担国が老齢の人を扶養するにシフトしただけなんですね。なのに、年金制度を無くしたりなんかしたら大変な事になります。

で、今は平均余命(現在の年齢から何年生きるか)が延びて、高齢者の人も長生きして80歳、90歳超えなんて普通にある事。いつまで長生きするのかそんな事は誰にもわからない。貯蓄でやっちゃうとそういう長寿リスクに対応できない。いつ死ぬかわかるんならいいけどそれはわからないわけで…。年金というのはそんな長寿リスクに最も強力な保険なんです。生きてる間はずっと支払われるから。そして、自ら親世代を扶養するリスクにも対応しているわけです。

年金保険料払ってきたのに途中で死んだら払い損じゃないか!とか保険料払った分が元が取れない!とかそういう話はあんまり意味が無い。毎回言ってるけど(笑)。じゃあ、民間の生命保険の定期保険で言ったら、途中で死ななかったから保険金下りずに損した!とか、火災保険だったら、家が燃えてなくならなかったから保険金下りずに損した!とか馬鹿な話をするんでしょうか。んなわけないですよね。年金は貯蓄じゃなくて保険なんです。多くの人が貯蓄と勘違いしてる感がある。現役世代が老齢世代を社会的に扶養する仕組みをこれからも維持していく事は本当に大切。

更に老後の年金だけでなく、人生の途中で病気や怪我で働く事が困難になれば障害年金が傷病が治るまで保障。でも中には先天的な病気や、不慮の事故なんかで一生治らない障害を負ってしまった方もいるでしょう。そういう方々が所得が得られない場合は障害年金やその他福祉的なもので支えていかなければいけません。また、自分が死んだら遺された家族(主に配偶者)に基本的には終身で遺族年金が支払われる。こういう所も公的年金の最大の強み。だから公的年金に加入して保険料を支払ってる。民間保険がそんな至れり尽くせりやってはくれない。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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