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「私は年金を貰えない」と思っている人も実は貰える場合がある

老齢年金の受給資格期間が、それまでの25年以上から10年に引き下げられたのが平成29年8月ですが、この事実を知らない方が年金を請求し忘れているという、あまりにももったいないケースが多いといいます。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、「貰えない」という思い込みで損をしないよう見直しを呼びかけています。

年金貰えないと思って未請求の無年金だったのに本当はとうの昔に貰う資格あった場合

平成29年8月以降の老齢の年金受給資格期間がそれまで25年以上必要だったのが10年で良くなりました。まあ、これはもう僕の読者様ならそんなん知ってるわ!っていう話ですね^^;。

無年金者を救済するためでもあり、よって大抵の人が年金受給者になれたんですが、今回の記事のような事情で請求自体をしてない人もいる場合があります。25年必要だった時代に、年金貰えませんよってなってそれからもう年金を自分は貰えないんだって諦めてしまった事ですっかり年金の事を忘れてしまったと。だから、無年金のまま来てる人とかですね。

あと、ちょくちょくあるのは「自分は年金貰ってるよ!」っていう人が、実は障害年金とか遺族年金の事で、老齢の年金は請求し忘れてるとかですね。

しかし、長年時が経ってからもともと年金を貰う権利があった事を知った場合一体どうするのか。考えていきましょう。

1.昭和11年7月18日生まれの夫(今は82歳)

何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!(平成31年版)

現在貰ってる年金は、老齢厚生年金130万円、厚生年金基金報酬比例代行部分60万円、老齢基礎年金76万円。年金総額は236万円。ところが、平成30年10月に死亡。

2.昭和14年5月7日生まれの妻(今は79歳)

高校卒業の翌月である昭和33年4月から国家公務員共済組合で働き始めた。しかし、昭和36年4月7日に退職。まだこの時期は共済組合や厚生年金は20年以上無いと年金が貰えない時代だったから、共済組合は退職一時金としてこの働いた期間36ヶ月分を支給した。


※注意

昭和36年4月からの国民年金制度の始まりにより、共済組合期間、厚生年金期間を繋ぎ合わせて25年以上あれば年金が貰える通算年金制度が始まったから単独で20年以上満たさなくても年金が貰えるようにはなった。なお、共済組合と厚生年金合わせて20年以上あればそれでも年金が貰えるようになった。


昭和36年4月から昭和48年2月までの143ヶ月の国民年金強制加入期間は未納にした。昭和48年3月にサラリーマンの夫と婚姻して専業主婦となり、昭和61年3月までの157ヶ月は国民年金には強制加入ではなくなった(年金受給資格期間に含むカラ期間となる)。

昭和61年4月から国民共通の基礎年金制度が始まって、国民全員がどんな職種であれ国民年金に加入する事になった。サラリーマンの専業主婦は国民年金第三号被保険者となって、夫がサラリーマンを定年退職する60歳前月となる平成8年6月までの123ヶ月間は国民年金保険料納付済み期間。

さて、この妻が65歳になる時は平成16年5月ですが、この当時は年金記録が300ヶ月以上無いと貰えない時代だったから年金が1円も貰えなかった。年金受給資格期間の、保険料納付済期間+免除期間+カラ期間≧25年(300ヶ月)を満たさなければならなかったという事ですね。

その時案内されたのは専業主婦だった昭和61年3月以前の157ヶ月がカラ期間で、第三号被保険者期間が123ヶ月で期間合計が280ヶ月で20ヶ月足りないとの事だった。年金を貰うのを諦めていた。そのまま無年金だった。まあ、夫の年金があるから何とか生活していた。

平成29年8月から300ヶ月無くても120ヶ月でも貰えるよ!っていう人には事前に請求書が送られたが、気付かなかった。

で、平成30年10月に夫が死亡して、親戚と集まった時に遺族年金の請求の話になり親戚の者に代わりに遺族年金を請求して欲しいと頼んで請求。

まず遺族厚生年金額を算出しますが、夫が老齢厚生年金130万円と、厚生年金基金報酬比例代行部分60万円ある。合計190万あるのでその4分の3である1,425,000円の遺族厚生年金になる。

基金代行部分は年金機構の遺族厚生年金額に全て含まれて支給される。しかしその時に「奥様は自分の老齢基礎年金も貰えますよ」って話になった。しかも65歳時点から本当はすでに貰えていた人だったと。

どういう事か?専業主婦だった時の157ヶ月がカラ期間で、国民年金第三号被保険者だった時の123ヶ月の280ヶ月のみではなかったのか?実は共済組合に加入していた昭和33年4月から昭和36年3月までの36ヶ月はカラ期間となる。

カラ期間一覧(日本年金機構)

昭和36年4月以降に退職して共済組合から退職一時金を貰った昭和36年3月以前の期間はカラ期間となって、老齢の年金受給資格期間に含まれる。もし昭和36年3月31日までに退職していたらカラ期間にはならなかった。ちょっと見つけづらいカラ期間とは言える。

つまり、この妻は共済組合の時の36ヶ月のカラ期間と、専業主婦時代のカラ期間157ヶ月、第三号被保険者期間の123ヶ月で合計316ヶ月も受給資格期間があったという事。だから、65歳時点ですでに年金受給資格期間があり、年金額に反映する123ヶ月分の老齢基礎年金が貰えていた。

※参考

なぜこの人の加入可能年数は480ヶ月(40年)ではなく456ヶ月(38年)なのか。あのー、この妻は昭和14年度に生まれてますよね。国民年金は昭和36年4月から始まりましたが、昭和36年が始まった年には22歳になる人です。

本来は国民年金は20歳から60歳までの480ヶ月間強制加入ですが、この妻の場合は20歳からそもそも国民年金制度が始まってなかったからその分加入可能年数を少なくして損しないように配慮された。

普通に20歳からってしたら、2年分加入できないから基礎年金額低くなってしまうからですね^^;

更に夫に配偶者加給年金が付いてたからこの妻には65歳から老齢基礎年金に振替加算が146,468円付く人だった。よって、妻は65歳(平成16年)から老齢基礎年金210,206円+振替加算146,468円=356,674円月額29,722円)が貰えていたわけです。

でも遡って貰えるのは時効で過去5年分(平成31年1月に請求なら平成25年12月分まで遡って貰える)の約178万円。


※注意

過去5年分とはいえ、なぜ平成25年12月までちょっと1ヶ月ズレて遡るのか?年金の時効の考え方ですが、12月分というのは2月15日にならないと貰えない月分ですよね。5年前の平成26年1月時点では2月支払い期が来てないので、12月分も含めて遡れるという事です。12月分を貰うなら最悪、2月28日までに請求間に合えば大丈夫。3月1日になると、12月分と1月分の2ヵ月分が時効消滅。


なんだか…損した感じはありますが、ここで65歳から70歳まで年金を貰わずに、「年金の繰下げ」をしていたという事で扱ってみましょう。そうすると老齢基礎年金210,206円+210,206×88%=210,206円+184,981円=395,187円に増額する。振替加算146,468円と合わせると、541,655円


※参考

振替加算は繰下げで増えることは無い。また、65歳から70歳までの5年間繰り下げたら現在なら42%増額(1ヶ月遅らせる毎に0.7%増額)ですが、昭和16年4月1日生まれの人は88%まで増額できた。この時代は1ヶ月単位増額ではなく年単位で年金の増額だった。5年間で最高88%だった。

じゃあその541,655円(月額45,137円)を70歳に遡って貰えばいいのか。本来、年金の繰下げというのは請求月の翌月からの支給ですが、平成26年4月の法改正で70歳まで遡れるようになった。とはいえこの妻の平成26年時点はとっくに70歳超えてますよね^^;74歳?かな。ただ、5年を超える遡りは出来ないし、あくまで法改正された平成26年4月年金は翌月の平成26年5月分から発生までが遡りの限度である事に注意。だから、平成26年5月から平成31年1月までの57ヶ月分×45,137円=2,572,809円の遡りの年金を2月に振り込む(3月振り込みにズレるかもしれないが)。その後は自分の年金と遺族厚生年金を貰う。

つまり、老齢基礎年金210,206円+繰下げ増額210,206円×88%+振替加算146,468円+遺族厚生年金1,425,000円+経過的寡婦加算317,897円=2,284,552円月額190,379円)。

経過的寡婦加算というのは夫に20年以上の厚生年金期間とか共済組合期間(両方合わせて20年以上でもいい)があり、妻が昭和31年4月1日以前生まれの場合に生年月日に応じて支給される加算。

※追記

遺族厚生年金と経過的寡婦加算は夫死亡月の翌月分(平成30年11月分)から貰う。

image by: Shutterstock.com

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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