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高城剛の未来予想2019「今後、アメリカ西海岸で独立運動が起こる」

メルマガ『高城未来研究所「Future Report」』の著者で、世界を股にかけて活躍するクリエーターの高城剛さん。昨年末にその一部を紹介した年イチ恒例のロングインタビューを、2回に分けてお届けします。今回も混迷極める世界情勢の大胆予測や、各国で解禁が進む大麻の今後、さらに日本の観光業や健康の話などなど、まさに盛りだくさんの内容です。

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フランスの暴動はもはや市民戦争だ

──先ほどの「ゴーン逮捕」と「ファーウェイ問題」の話題でも話が挙がりましたが、米中による貿易戦争。今後はどうなりそうですか?

高城:本質は、貿易戦争ではなく、米中覇権戦争ですので、当分揉めるでしょうね。次は、金融戦争になると思います。だから、今後も続いていくでしょうね。

──米中の貿易戦争が発展して、世界的な経済戦争が起こるとしたら、どの国がどの陣営に付くかというところも、気になるところですが……。

高城:現在、「良いとこ取り」して統合しようとした「EU」と言う名の社会実験は、もはや失敗だった事が、誰の目にも明らかになりました。いま欧州が、米中覇権争いに参戦する余裕は、とてもないでしょう。

EU各国情勢を簡単にまとめると、まずドイツメルケル政権が、事実上の崩壊に直面しています。一般的には、ヨーロッパの中で唯一好景気と言われているのがドイツですが、実際は、ドイツ南部のバイエルンだけなんです。ここは、荒廃したベルリンとは違う温暖な豊かな地域で、アディダスやシーメンス、BMWといった大企業が集まりますが、ベルリンとは気風がまったく違う。ドイツは基本的にプロテスタント国家ですが、バイエルンだけはカトリックが多い土地柄です。

数ヶ月前の2018年10月に、バイエルンの州議会選挙があったんですが、戦後初めて、CSUというメルケル首相が率いるCDUのパートナー政党が大敗したんです。もう、これだけでも顕著ですが、第二次世界大戦以降のフレームが、いま、大きく変わりつつある。その上、極右と極左、それに非政治家の団体が議席を多く取りました。

今のヨーロッパ政治のトレンドは、非政治家なんです。リベラルも保守も終わり。イタリアも同じような状況で、現在、「五つ星運動」が大躍進して、今や政権の中枢にまでなりました。その党首のルイジ・ディマイオはちょっと前までウェブデザイナーで、政治家でもなんでもありません。いまや、新参者が政治のシステムの中枢に入って来て、国家を再構築するというのが、ヨーロッパでは主流になっていて、大きく変化しようとしています。簡単に言えば、第二次世界大戦後に築かれた既得権を壊し、結果、社会システムを大きく変えようとしている。フランスは暴動が起き、全フランスの暴動マップが、BBCで毎日アップデートされてるぐらい「あたらしい当たり前」が、はじまってるんですよ、欧州で。「今日は、ここが燃えてます」みたいな。まるで、天気予報のようです。

今回のフランスの暴動は、英語では「アンチ政府デモ」(The anti-government demonstrators )と呼ばれていて、もう警官が市民の味方してますよね。軍隊の装甲車が市民に向かってるから。こうなると、もう市民戦争です。年末に、黄色いベストのレジスタントが、マクロンが滞在する地中海の城を取り囲みました。この状況を「あたらしいフランス革命」っていう人がいますけど、確かにそう見えますが、大きな事変的出来事は、もう少し先になると僕は考えています。

インドはカオスを抱えたままデカくなる?

──EUといえば、イギリスが2019年の離脱に向けて正念場を迎えてますが、今後EUの枠組みはどうなっていくのでしょうか。

高城:僕の見立てでは、EU壮大な社会実験の第一段階で、簡単に言うと各国の法律は大きく変えず、経済だけ上手に統合して市場を作ってみようっていう、グローバリゼーションの実験だったわけです。この目論見は、失敗しました。単なる「資本家のシナリオ」に過ぎなかった。だから、各地で暴動や政変が起きてるわけです。

わかりやすく言えば、株価や不動産がいくら上がっても、市井の人々が反比例的に不幸せになる点に尽きます。要するに、経済だけをまとめた単一市場では、資本家はさらに潤い、各国国民は疲弊する。しかし今後、法律も含めた全地域的な政府、現行のEUよりも強力な政府ができれば、ひょっとしたらうまくいったかもしれない。僕が思うに、2040年ぐらいになると思いますが、そういった流れがもう一度起きると考えています。その予兆を、ここ3年ほど世界中を回って取材を続け、毎週メールマガジンでアップデートしてますが、どこかで一冊にまとめたいと考えています。2050年に、世界がいったいどうなっているのかを。

なにしろ、今の世界を取り巻く金融法はザルだらけで、グローバル企業が法の目を潜ることは、難しいことではありません。国民のお金を使って株価を高くし、それに準じて大企業は自社株買いを続ける。そして、アイルランドなどのオフショアを抜け道にして節税します。こういうザルが世界中にあるわけですから、そのザルの穴を塞がなければどうしようもないわけです。「ゴーン逮捕」も、この動きに連なっているのです。今後、グローバリゼーションとインターネットの分断が、20年以上に渡って続きます。

すでにEUは、2018年5月にGDPR(EU一般データ保護規則)を始めて、時代の象徴的なIT企業、GAFAが、ヨーロッパに簡単に入れなくなりました。要するにネット上に壁ができたわけです。これからのEUは、様々な法律を作って、こういう「サイバー城壁」を作っていくと思うんですが、結局それが強力なEU政府Ver2の礎になっていくんじゃないかなと思います。ただ、それに至るまでの間は、混乱の時期が当分続くんじゃないでしょうか。

──なるほど。こうして見ると、確かに今のヨーロッパは中国どころじゃないですね。

高城:ちなみにその中国も、2015年の6月に上海の市場が崩壊して、バブルが弾けました。僕の見立てでは、今後2020年前半に金融機関がバタバタと倒れ始めるのではと考えています。

どういうことかというと、中国って日本のだいたい20年遅れなんです。それは人口ピラミッドをみると明確で、多くの若者が老人を支えるというピラミッド型から、だんだんと壺型になってしまって、どうしようもなくなってるっていうのが、今の日本ですよね。中国も、20年遅れでそうなっているんです。

景気動向の波も同じようで、中国はバブルに関しても、日本の20年遅れで始まって、そのバブルも先ほど言った通り、すでに崩壊しました。日本では1990年にバブルが崩壊して、1997年に山一証券などの金融機関が続々潰れたんですが、そこまで7年のブランクがあった。だから、上海市場が崩壊した2015年の7年後、すなわち2022年前後になると、現地のシャドーバンキングが一斉に傾くんじゃないかとみています。

ただ、中国が日本と違うところは、共産党による一党独裁の国家だということ。一党独裁の場合は市場のコントロールが効くので、まだ強いんです。とはいえ中国はとにかく巨大なので、いざという時に本当にコントロールができるかどうかは分かりません。

──中国の経済が今後どうなるかわからないとなると、次に来る国はインドとかになるのでしょうか?

高城:いや、「次はインドだ」って多くの識者が話しますが、インドは相変わらずカオスですよ。先月も行きましたけど、相変わらず車線がなくて、全員が突っ込んでくる(笑)。見た目は綺麗になったところもありますが、メンタリティは、まったく変わってない

この前ハイデラバードで見たんですが、インドではバイクが違法駐車してたら、駐禁の取り締まりでトラックに積んで勝手に持っていくんです。ところが、道にいる牛は取り締まっていません。聖なる生き物ですから。で、牛が電気街の真ん中を塞いでいても誰も何もしないから、大渋滞になってるんですよ。

一見、インドはすごく近代化しました。スタバができたり、空港が停電しなくなったりとか。僕がはじめて行った30年前と比べたら隔世の感はあります。でも、基本的なメンタリティっていうか、そういうのは相変わらずだと思います。よく言えば、個人主義国家。皆、自分のことだけしか考えていません。つまり、「和」がない日本と対極の国なんです。インドは、このカオスを抱えたままデカくなるじゃないでしょうか。

最近、京都にもインドからの観光客がすごく増えていますが、今来日してるのは、まだ上品なインド人。イギリスやアメリカに留学経験があるような、国際的なモラルがある人たちです。これからは、新中間層に成り上がったインド人がどんどん来て、無茶苦茶なことになると思いますよ。お水取り場で、洗髪するような。

ゆくゆくはアメリカ西海岸が独立運動を起こす?

──中国もいよいよ経済が傾いてくると、フランスのように暴動が起きたりといったことは考えられますか?

高城:たぶん、中国でも大暴動が起きるでしょうね。ただ、共産党が軍を持ってるんですよ。それは強いですよね。この辺りが、日本とは違う。

また、日本でも2020年代には政権交代が起こるでしょうね。前にも話したかもしれませんが、先ほど話したイタリアと日本って、似てるところがあるんです。そのイタリアでは政治の中枢に素人が入って来てるのと同じように、日本でも3週間前まで派遣の社員だったような人が政治家になるようなことが起きてもおかしくないでしょうね。テレビが信用力を失ってきていることから、テレビタレント出身者は、信用されなくなるでしょう。

だから今後は本当に純粋な人たち、煮え湯を飲まされてきた派遣の社員だったりシングルマザーたちが政党を作って、どんどん都政や国政に進出してくるんじゃないでしょうか。この動きが、2020年代後半から30年代前半に起きるでしょう。

──EUはもうボロボロだという話でしたが、アメリカの状況はどうでしょうか。経済的には景気の拡大が永らく続いている状況ですが……。

高城:アメリカは、2極化がますます進んでいます。例えばオレゴン州のポートランドは、ホームレスがどんどん増えていて、今や人口の1%を超えるまでに急増しています。実際に行くと、道端にホームレスがいっぱいいて、子どもたちがそれをゲームのように避け、学校に行ってるみたいな状況です。ただ、景気がいい街は景気が良くって、シアトルなんかはすごく賑わってますね。無人コンビニ「Amazon go」や、スターバックスの巨大な旗艦店に代表される新しい店がいっぱいできています。

無人化は今後のトレンドに絶対なっていくと思います。僕も2018年1月に「Amazon go」ができた時、早速行きました。そしたら面白い事に、サンドイッチとかは人が作っていて手作りなのに、それを買うレジは無人、どころかレジもないんです。中国でも、新興無人コンビニチェーン「Bingo Box」が、急増中。オンラインショッピング大手の「京東」(チントン)も、無人スーパーを増やしています。こういう傾向は、世界中にあっという間に広がるでしょう。

中国に雄安新区という街があるんですけど、ここは中国政府が作る未来都市なんです。域内のバスはすべて無人バスで、道路にカラーで線が描いてあって、自動運転で色によってルートを認識します。先にあげた「京東」は、無人配達車が家まで商品を届けてくれる。もちろん、街中にある「京東」のスーパーマーケットは、無人店舗です。

日本だと、AIとかIoTとか、ワケ知り顔の人たちが「それ風ワード」を取り上げて語っていますが、賢明な読者の皆さんは、世界の先端地域を実際に見に行った方がいいと思いますよ。肌感覚で未来がわかりますから。僕のメルマガなんて、読まなくていいので(笑)。

ちなみに、こういう無人の店だと、スマホを忘れたら大変だと思うじゃないですか? 実は顔認証で、入館から決済まですべて行われていて、もうスマホは要らない。つまり、中国ではポスト・スマートフォンとして、すでに身体の時代になっているんです。顔認証といっても007のような全世界の人々の顔照会みたいな仕組みじゃなくて、自分の顔をスマホ経由で登録しておいて、スーパーやコンビニに入る時に顔を撮るという。それだと一対一だから確認も早くて、店にすぐ入れるんですよ。それでどんどん買い物ができるんです。

そういうわけで、雄安新区のシビックセンターはまるでゴーストタウンみたいになってる。だって自動でモノは届けに来るし、ピザとかも全部無人で来るから、外に出る必要がない。ホテルに行っても、チェックインカウンターに誰もいないんですよ。だから、いっぱい人は住んでるはずなんだけど、街はガラガラ。でも、最近は観光名所になってて、観光客だけがいっぱいいる。北京から車で1時間半ぐらいのところなんだけど、いまの中国では最もアツい観光スポットなんじゃないでしょうかね。

このように世界は無人化に向かっていて、その先端の場所が、まるで観光地のように人が集まるパラドックスが起きています。自動化された街に住む、引きこもりのロボットメンテンテナンス・エンジニアか、上がり下がりの激しいヒューマン投資家。そして、彼らが住む無人の街を見にくる観光客。他は、その街に入れない、時代に取り残された失業者。これが、本当の近未来風景なんですよ。AI時代なんてワードが出たら、もう時代遅れです。

トランプ政権が失業者のためにっていうことで、工場を海外に移転させないようにメキシコに壁を立てるとか、いろいろ言ってますよね。でも結局は時代は無人化に向かってるから、失業するのは同じなんですよ。そもそも無人化って、シリコンバレーとか西海岸の基幹技術です。すべてを無人化するために、一時的に人々が大勢働かざるを得ないジレンマがある。それが現在で、すでにピークアウトしました。それこそ西海岸に壁を立てないと、アメリカはどんどん無人化が進んで、失業問題が改善されない。だからトランプ大統領は、いつか西海岸に厳しい制裁を科すんじゃないでしょうかね。そしたら今度は、西海岸が独立運動を起こしますよ。ブリグジットみたいにね。この冗談のような話が、本気で議論されるのが、2030年代でしょう。中国に支えてもらっていた米国経済が深刻化する2020年代後半から、ムーブメントがはじまる。

EUっていう枠組みがダメだからイギリスが出ていこうとしてるように、カリフォルニアも離脱しようとする。実際は独立しなくても、州の権限が強くなる。こういう風にして、今後20年は、世界中が分断されていくと思います。実は、カリフォルニアで独立のための住民投票が2019年にありますが、そこでは通らないとしても、10年後の世界はわかりません。2020年代終わりには、カリフォルニアがアメリカ合衆国内で、形はさておき独立してるような状態になるかもしれないことは、想定に入れておいていいと思います。一地域二国制度……中国における香港のような感じに、カリフォルニアがなる可能性は十分にありますね。そして、メキシコのバハ・カリフォルニアを飲み込み、北米協定を超えた生産拠点を作る。この動きに、ワシントン、オレゴンも続くでしょう。(次回につづく)

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高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けするメルマガ「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

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