メルマガ『届け!ボディメイクのプロ「桑原塾」からの熱きメッセージ』の著者、桑原弘樹さんの元に、「腕の力を増すには腕を太くすればいいのか?」という質問が届きました。小柄で腕も自分より太くないアームレスリングの選手と腕相撲をしたことがあるという桑原塾長の答えとは?
腕の太さと腕力は比例するのか?
Q. 力を強くしたければ筋肥大を目指すべきでしょうか。例えば腕が太ければ太いほど、腕の力が強いということになりますか?それとも引き締まった腕の方が強かったりするのでしょうか。腕相撲をみていてフッと疑問に思いました。アームレスリングとパワーリフティングに興味があります。(26歳、男性)
桑原塾長からの回答
筋肥大をすれば力が強くなることは間違いありません。しかし、筋肥大だけが最大筋力の要素ではないのです。そして、その手前には、正味の筋量というのは中々見た目では分かりにくいという前提条件があります。
コンテスト時のボディビルダーのように、皮一枚という状態になれば話は別ですが、よくスーパーなどでも私よりも上腕の太いおばさんを見かけたりしますが、ではその腕が太いという事と筋量が多いという事はまったく別だからです。見た目の太さや大きさは必ずしも筋肉とは限らないのです。
そういった前提条件の上で言うならば、やはり筋肉のサイズは発揮する筋力に比例します。筋断面積と発揮できる筋力はあるレベルまでは比例しているからです。
ちなみに1平方センチメートルの筋断面積で理論上は約5kgもの力が発揮できるそうです。ですから、力が強くなりたければ、とりあえず筋肥大を目指してトレーニングに励む事でしょう。
次に、実際に発揮する筋力と理論上発揮できる筋力はイコールではありません。少し難しい言葉でいうと、随意最大筋力と生理学的最大筋力にはギャップが生まれます。理論的に発揮できるはずの筋力よりも、自らの意志で発揮する筋力は低くなってしまうのです。
それは、中枢神経、つまり脳がブレーキをかけていることが原因なのですが、体の安全や保護のためにマックスの力は発揮しにくい状況が作られています。大声を出したりすることで(多くのジムでは禁止されていますが)、瞬間的にいつもよりも大きな力が発揮したりできますが、これはシャウト効果といってこの脳のブレーキを一瞬壊してしまう作用があるからです。
トレーニングとは、この随意最大筋力と生理学的最大筋力の差を縮める行為であるともいえますので、単に今現在のサイズだけではなくそこに至るまでのトレーニングの密度や経験は最大筋力にも影響を及ぼす可能性は高いといえます。
もう一つ大きなポイントとなるのは、最大筋力を発揮するテクニックです。私も以前に、アームレスリングの選手といわゆる腕相撲をやったことがありましたが、まったく歯が立たなかったことを思い出します。
その選手は体格も小柄で腕も必ずしも太くありませんでした。少なくとも私よりは華奢で細い体格にもかかわらず、一切こちらの力を塞いでしまうような感覚でした。間違いなく筋肉のサイズとしては私の方が大きいのですが、発揮する筋力は彼の方が大きいのです。
これにはアームレスリングのテクニックが大きく関係している事は間違いありません。ベンチプレスにしてもスクワットにしても、何かマックス重量を測定するような種目の場合、往々にしてこのようなテクニックの差が挙上重量の差になっている場合が多いのです。
例えば、パワーリフターが練習をする場合、純粋に筋肥大のトレーニングも行いますが、むしろフォームであったり挙げ方の技術の習得のための練習をしている場合が多いのです。
また、これと連動して筋力を発揮する際に動員させる運動単位を増やすという事も、筋肉のサイズとは別に最大筋力に影響を与えます。運動単位とは一つの神経が動かせる筋線維の事ですが、たくさんの筋線維を動かせる神経もあれば、少ない筋線維しか動かせない神経もあります。
大きな筋力を発揮するということは当然大きな運動単位が動員されるわけですが、この場合はまずは小さな運動単位から動員が始まるのです。小さな運動単位からスタートして、それでは太刀打ちできないとなったらもう少し大きな運動単位が動員されて、やがて大きな運動単位へと繋がっていきます。小さな運動単位が遅筋で、大きな運動単位が速筋という理解でもいいかと思います。
これをサイズの原理といいますが、よりたくさんの運動単位が動員されることで、筋肉の大きさとは別の観点から最大筋力は高まっていきます。これも発揮したい筋力がどういった動作なのかによって変わってきますので、そういった動作を日常的に訓練していることで動員しやすくなっていくようになります。このように、単に筋肉が多いから発揮する筋力も大きいとは言い切れない側面があります。
しかし、テクニックにしても、動員する運動単位にしても、ある程度のレベルに達すると急激に伸びが頭打ちになっていきます。それに比べて筋肥大という要素はなかなか成果が現れない残念な特徴がありますが、一方でテクニックに比べて頭打ち感が少ないという嬉しい側面をもちます。
何かひとつの要素だけを磨くというのではなく、どの要素も意識してトレーニングなりを行うべきですが、大前提としての筋肥大は常に意識をして取り組んでいくことが結局は近道といえるかもしれません。
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