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1hに44機も。五輪を控えた東京上空に迫る航空機の轟音と身の危険

羽田空港の国際線増便に伴い、都心一等地上空にも飛行ルートが追加されることが大きく報道されましたが、住環境への影響が予想される高層マンション住人らによる「反対運動の大きな流れ」は起きていないようです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、15年前に自らも関わったという「浦安市上空飛行ルート案に対する住民反対運動」を紹介、今回のケースと比較しています。

タワーマンションの上空を航空機が通過する?

こんにちは!廣田信子です。

2020年東京オリンピックや訪日観光客増大に対応するため、羽田空港の国際線の増便が必要で、これまでは東京湾側だけだった国際線の飛行ルートに、東京都心上空を通る着陸ルートが2本加わる予定で、住民説明会が始まっています。

飛行ルートの1本目は、渋谷、恵比寿、目黒、大井町上空を通って羽田空港に。もう1本は、新宿、広尾、白金高輪、品川を通って羽田空港に。どちらも、都心の一等地上空を通るルートです。

新ルートは、南風の快晴時午後3時から7時に限って運用されると言いますが、2本で1時間当たり44回も着陸する計算となり住環境に与える影響はかなり大きいのではと思われます。

羽田空港に近い大井町周辺では高度300メートルを飛び、騒音は80デシベルになるといいます。80デシベルと言うと交通量の多い道路や地下鉄の車内に匹敵する騒音です。

しかも、タワーマンションの上階などは、それよりずっと機体に近いのですから、その分、騒音が大きいだけでなく、まるで目の前を航空機が通過するような状況になるのではないでしょうか。騒音の問題だけでなく、何だか恐怖も感じるのでは…と気になります。

ネットで見ると住民による反対運動もいくつか起こっているようですが、大きな流れにはなっていないようです。タワーマンションの住民たちの連携した声のようなものは聞こえません

反対運動をしている都心の住民の方々は、今まで海側を通るルートに限ることで、東京の住環境を守ってきたのに…と思われているようです。

実は、この話を聞いたときに、15年ほど前に浦安上空を通る飛行ルート案が持ち上がったときの話を思い出しました。羽田沖ルートが浦安市の住宅地の真上を飛行するルートだったからです。東京湾も超過密で、飛行ルートを簡単には増やせないのです。このときに、何で東京の住環境を守るために自分たち浦安市民が犠牲にならなくてはいけないのだ…という議論があったのを思い出します。

案は、北風悪天時の着陸コースが浦安のマンションを含む住宅が多い地域の上空500mを通過するものでした。浦安市では急遽対策室を設置し反対行動を開始しました。

この地区は連合会加盟の大型マンションも多い地域で、こんなに近くを低空で飛行されたらマンション住民に大きな影響が出て、資産価値にも影響すると言うことで、浦安住宅管理組合連合会も積極的に動き、国土交通大臣に飛行ルート変更の要望書提出しました。

この要望書は、ただ反対ではなく専門家の意見も踏まえ、滑走路の方向を10度南に振り、浦安上空の通過を回避する対案を示したものです。加盟管理組合の理事長の署名押印の上、「断固たる行動もやむを得ない」とする「浦安の住民の意思を示すものでした。地元出身の国会議員の尽力もあり、直接、航空局長に手渡すことができ、運動の大きな原動力になりました。

最終的に、国土国交省は、滑走路の角度を7.5度、さらに誘導方法で2度、あわせて9.5度ふる変更を承認しました。浦安市と連合会が要望したものに近い形で、変更が決まったのです。最終決着の時は、国土交通大臣室にまで行って大臣と懇談したことを思い出します。

で、飛行ルートは変更になり浦安市上空の通過は回避されましたが、風向きによって、浦安市沖を飛行する場合、やはり、それなりの騒音はあります。かなり水平距離も、それなりの高さがあっても、音は聞こえるのです。自動車や電車の騒音が皆無の静かな地域なので、エンジン音と言えば航空機です。何だか、気にしながらブログを書いているせいか、今日は、けっこぅ音が聞こえる気がします(笑)。

私たちは、変更の対案を示させたのでお互いに歩み寄った決着がつきましたが、羽田発着便を増やさなければならないというのは、国の政策上、経済政策上、避けられない状況なので、都心飛行ルートもやむなしと思い、あまり議論が盛り上がらないのでしょうか。

こういう共通した問題が持ち上がったときは、影響がある地域のタワーマンションが連携して、何らかの要望を出すチャンスなんだけどな…と私が言うと、不動産業界にくわしい知人が、「ほとんどの人がまだ自分事としての関心がないんだよ。該当地域の新築タワーマンションの売れ行きにも飛行ルートのことは関係していないみたいだし…」と。

先日、浦安住宅管理組合連合会の新年会がありました。管理組合はもちろんですが、市長以下、市の担当部署の方々も皆さん参加され、情報交換がありました。やはり、管理組合の横のつながりが普段からあり、行政とも常に情報交換していて、いざというときに連携できる体制があるのは大事なことだと改めて思いました。

羽田沖飛行ルート変更を勝ち取った成果は、浦安住宅管理組合で語り継がれる連携することによる一番の成果です。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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