日常生活でもビジネスシーンにおいても、大なり小なり問題はかならず発生してくるものです。その問題を解決するためには「問題解決力」と「問題発見力」の2つが必要、とするのは、無料メルマガ『起業教育のススメ~子供たちに起業スピリッツを! 』の著者・石丸智信さん。石丸さんは今回、その中から「問題発見力」を養うための4つの考え方を紹介しています。
問題はない方がいい?
日々の仕事においては、色々な現場などで様々な多くの問題が発生するのではないでしょうか。また、日常生活においても、大きい、小さいの違いはあると思いますが、色んな問題が起こるのではないでしょうか。そういった中においては、その様々な問題を解決していくことが求められますね。
問題解決力を身につけるためには、2つの力が必要だと言われます。1つの力は、問題解決という言葉の通り、ある問題を解決へと導く「問題解決力」です。もう1つの力は、見逃されがちですが、そもそもの問題自体を見つけることができる力である「問題発見力」が必要になります。
そこで今号おいては、問題を見つける「問題発見力」に焦点を当てて考察していきたいと思います。
問題に気づいたり、見つけたりするためには、その問題に対する4つの捉え方があります。
まず1つ目の問題に対する捉え方は、既に発生している状態を問題として捉えます。この問題に対する捉え方は、現時点においてあるべき状態、姿と、現時点での状態、姿との差を問題として捉える考え方です。日常において「問題だ、問題だ」と、よく言われる問題というのは、この捉え方が多いと思います。
例えば、お客様から注文を受けて5日後に届けることになっているのに、7日後に届けてしまったという納期遅れなどのトラブルが、ここでの問題となります。現時点においてあるべき状態は、お客様に5日後に商品を届けることであり、現時点での状態は、商品を7日後に届けたことになります。もし、商品を納期通りの5日後にお客様に届けていれば、問題とはなりませんね。
他にも例えば、子どもたちが、部屋におもちゃを散らかしているとします。現時点でのあるべき状態は、部屋がきれいになっていることであり、現在の状態は、おもちゃが散らかっている状態です。この差が問題だと言えますね。この問題に対する捉え方は、既に発生している状態を問題として気づく、見つけることなので、さほど難しいことではないと思います。
この1つ目の問題の捉え方は、既に発生している状態なので、問題が目に見えている状態です。この後、考えていく3つの問題の捉え方は、問題として気づいていない、見えていない状態を問題として認識することになりますので、あえて問題を作り出すことと言えると思います。
2つ目の問題の捉え方は、現時点での理想を追求していくことによって、問題をあぶり出していく捉え方です。現時点において理想的な基準となっているものを明確にして、その理想的な基準と現在の基準との差を問題として捉える考え方です。
例えば、お客様に商品を届ける日数が、現在の基準では5日間になっているとします。理想だと想定する日数が3日間だとします。現在の基準である5日間と理想的な日数である3日間の差を問題として捉えることになります。「お客様に届ける日数は5日間」という思い込みがあると、それが既成概念となってしまい、それを問題として気づいたり、見つけたりすることは難しいでしょうね。
先ほどの子どもたちが、おもちゃを散らかしている状態を例に考えてみます。現時点の基準が、部屋をきれいにすることとします。この基準だと、部屋をきれいにしたらいいので、散らかしているおもちゃを大きな箱に適当にポンポンと入れることで、部屋をきれいにするという基準は満たすことができます。
そこで、1つひとつのおもちゃを決められたところに戻すことで、部屋をきれいにすることを理想的な状態と想定します。現在の大きな箱におもちゃを入れて部屋をきれいにする状態と、おもちゃを決められたところに戻すという理想的な状態とのギャップを問題として捉えることができます。
現在の状態、姿が、既成概念となって縛られてしまうと、こういった問題の捉え方をすることができず、現在の状態を問題として表面化させることはできないように思います。ここでは、現状の基準に甘んじるのではなく、もっと進化していくことを目指して理想的な基準、状態を想像することが大切になってくるのではないでしょうか。
問題に気づく、見つけるために必要となる3つの目の視点は、将来を見通すことによって問題をあぶり出していきます。内部から、外部からの要請により将来を見通して、起きそうなことを問題として設定します。
企業を例にすると、内部からの要請としては、業務の効率化やコストの削減、生産性の向上などが挙げられるでしょうね。また、外部からの要請として挙げられるのは、お客様からの要求や競合する企業の動向変化、法律や規制の変化などになるでしょう。
お客様へ商品を届けることを例にして考えてみましょう。お客様から「商品を翌日に届けて欲しい」という翌日納品の要請が出ていて、将来もっと多くこういった要請が出そうだと想定します。
この想定した状態と、現在の状態(例えば、届けるのに5日間必要)との間にギャップが生じることになります。このギャップが「問題」となります。
また、会社内部からの要請として、「業務を効率化することで、現在よりももっと短い期間でお客様へ納品して欲しい」という意見が出ているとします。この要請された内容と現在の状態には差があるので、その差を「問題」として捉えることができます。
4つ目の視点は、将来のありたい状態、姿を明確にすることによって問題に気づく、見つけるという見方です。2つ目に取り上げた視点に似ていますが、この視点は、現在の状態の前提となっているものをすべて取り払い、発想を転換させて「ありたい将来像」を描くことが大切だと言えます。
既成概念にとらわれずに、将来にどうなりたいかを考えて、将来のありたい状態、姿を描き、その状態、姿と現時点での状態、姿との差を「問題」として捉えます。
例えば、当日に注文を受けて、その当日に商品を日本中のお客様のもとへ届けるという状態が、将来のありたい状態、姿と想定します。現時点での社内での業務や、物流体制などを前提とすると、とても難しいことかもしれません。この前提に縛られてしまうと、将来のありたい状態、姿を描くことはできませんね。
そこで、こういった前提となっているものをすべて取っ払って考えることによって、自分たちの理想の姿、ありたい状態を明確化することにつながります。明確にしたありたい状態、姿と現状の姿とのギャップが「問題」となります。ここであぶり出した問題は、今すぐに取り組める問題ではなく、長期的な視野を持って取り組む問題と言えるでしょうね。
部屋の片付けに対する姿勢についてもこの視点で問題を洗い出すことができます。例えば、現在の片付け方が、散らかったら片付けるという状態だとします。そこで、将来のありたい状態、姿を、使ったものは使い終えたらすぐに片付けるとともに、片付けるだけではなく、要るものと要らないものを分けることができ、よく使うものはすぐに取り出すことができる状態が理想だとします。
このように将来のありたい状態、姿を明らかにすると、現時点での状態との間にギャップが生じるので、時間はかかるかもしれませんが、その問題に対しての解決策(例:指定した場所に名札をつけておくなど)を色々と考えることができるのではないでしょうか。
私たちは、問題はいけないもの、悪いものといったように、否定的に捉えがちではないでしょうか。しかし、問題を「工夫、改善するための種」「もっと良くするためのチャンス」などと前向きに捉えていくことが必要ではないかと思います。
聴講した研修等の中でも聴かれることですが、「問題がない」ということは、実は、「問題に気づく、問題を見つける力がない」と、捉えることもできるのかもしれません。
今号で考えた4つの視点で問題をあぶり出し、その問題に対して色々とアイデアを出して、解決していきたいですね。
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