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6ヶ月以下の懲役又は30万以下の罰金。過度な時間外労働は違法に

今春から36協定の様式が変わりますが、皆さんの会社では準備を進めているでしょうか?今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』では、中小企業経営者からの質問に答えるかたちで、わかりにくい点や不安要素の解決策を解説しています。

36協定新様式

今春からの働き方改革、時間外労働の限度に関する基準通称36協定の様式が変わることは、多くの方がご存知だろう。しかし、実際に質問を受けてみると、明確になっていない点、お客さまが不安に思っていらっしゃる点、自分でも気づいていない点がはっきり見えて来て、なんだかすっきりできた。


T社社長 「この春から働き方改革による時間外労働協定の書式が変わるんですよね?新しい書面での書き方を教えてほしいんです」

深田GL 中小企業さんなら、施行日は1年先ですよ。急がなくても良いです」

T社社長 「今年から新しい様式を使ってはダメなの?今回従業員に説明もするし、世間に合わせて、もう変えておきたいんだけど…」

深田GL 「いえ、施行前でも今年度からは使用はできますよ」

T社社長 「そうなんだぁ~。じゃあ、1年間予行演習もできるし、今年から新様式を使うことにします」

新米 「それもいいですねー。正式には来年からですが、今年いっぱい使ってみて、労働時間への考え方や仕組みのチェックをするのも一案です」

T社社長 「ところで、様式が変わった以外に、具体的には何が変わったの?」

新米 「時間外労働の上限は、原則として、月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできなくなります。これは、休日労働は含まずの数字です」

T社社長 「え?月45時間・年360時間は、前からと同じ数字では?」

深田GL 「以前は、月45時間・年360時間というのは、延長時間の限度とは言っていましたが、法的には目安レベルだったんです」

T社社長 「そうなの?やっぱりそこも変わったってことなんだね」

新米 「限度の数字は同じでも、時間外労働の管理上法整備されたという、とても大きな違いといえます」

T社社長 「そうなのかー」

新米 「また、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、時間外労働は年720時間以内時間外労働と休日労働の合計で月100時間未満2~6ヵ月平均80時間以内とする必要があります」

深田GL 「いわゆる特別条項のことです。原則である月45時間を超えることができるのは年6ヵ月までです」

新米 「それから、細かなことかもしれませんが、従来の36協定では、延長することができる期間は、『1日』、『1日を超えて3ヵ月以内の期間』、『1年』とされていましたが、今回の改正で、『1ヵ月』『1年』の時間外労働に上限が設けられたことから、上限規制の適用後は、『1日』『1ヵ月』『1年』でそれぞれの時間外労働の限度を定める必要があります」

深田GL 「つまり『1日を超えて3ヵ月以内の期間』は、『1ヵ月』のみになったということです。御社の場合、自動車の運転業務だったので『2週間』という枠を設定していましたが、それはなくなったということなんです」

T社社長 「へぇ~、そうなんだね。2週間というのはうちのような業種に限るとなっていたのは、気づいていなかったよ」

深田GL 「自動車の運転業務、工作物の建設等の事業、新技術・新商品等の研究開発業務などは記載の仕方が部分的に違ってましたね」

T社社長 「それは知らなかったよ。ところで、時間外労働の決め方、書き方についてもう少し教えてくれないか」

深田GL 「はい、労働基準法においては、時間外労働と休日労働は別ものとして取り扱います。時間外労働とは、1日8時間・1週40時間という法定労働時間を超えて労働した時間を言います。休日労働とは、1週1日又は4週4日という法定休日に労働した時間を指します。今回の改正によって設けられた限度時間、月45時間・年360時間はあくまで時間外労働の限度時間であり、休日労働の時間は含まれません

T社社長 「ふーん、それをこの欄に書くということなんだね。時間外労働は、100時間未満?以下?というのもこの欄のことかい?」

新米 「今回の改正では、そこがややこしいかもしれませんね。今回の改正による、1ヵ月の上限である月100時間未満、2~6ヵ月の上限、平均80時間以内という数字については、時間外労働と休日労働を合計した実際の労働時間に対する上限で、休日労働も含めた管理をする必要があります」

T社社長 「あちゃー、やっぱり100時間っていうのは休日労働も足しての時間かい?うちのようにある部署が100時間超えてしまっている会社は、やっぱり大がかりな改革をしないといけないなぁ」

深田GL 「御社は中小企業ですから、この1年間で新様式を使って来年に向けて、しっかり準備してください。まずは、100時間未満となるように、最低あと数時間は減らすように業務の見直しや、仕事が一部の方に固まらないようにしていってください」

T社社長 「そうだね。検討するよ。ところで、今日はどのような場合に、法律に違反することになってしまうのかもしっかり押さえておきたいんだ」

新米 「では、まず根底とも言えることですが、労働基準法においては、時間外労働を行わせるためには、36協定の締結と届出が必要です。36協定を届出することによって、免罰となるわけです」

T社社長 「基本中の基本だね。そこはよっしゃ!」

新米 「36協定を締結せずに時間外労働をさせた場合や、36協定で定めた時間を超えて時間外労働をさせた場合には、労働基準法第32条違反となり、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金です」

T社社長 「え~、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金かい!?」

深田GL 「はい、これは、前からもあったんですよ。今回の法改正では、この36協定で定める時間数について、上限が設けられたんです。また、36協定で定めた時間数にかかわらず、時間外労働と休日労働の合計時間が月100時間以上となった場合時間外労働と休日労働の合計時間について2~6ヵ月の平均のいずれかが80時間を超えた場合には、労働基準法第36条第6項違反となります。これも、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金ですね」

T社社長 「うーーん。要は、法律で厳しく決まったということだね」

深田GL 「はい、御社の場合、月100時間未満にすることはもちろんですが、2~6ヵ月の平均のいずれかが80時間という意味は、2ヵ月平均でも、3ヵ月平均でも、4ヵ月平均でも、5ヵ月の平均でも、もちろん6ヵ月の平均でも、80時間を意識しないといけないということですから、注意してくださいね。100時間近く時間外労働があった場合は、その前後の月は60時間近くでないといけません。翌月は意識できると思いますが、前月は過ぎてしまっていますよね。逆の言い方をすると、60時間ほどの時間外労働のあった月の翌月しか100時間の時間外労働はできないということです。いざというときのためには、普段から60時間に抑えておくことが必要とも言えます」

T社社長「おー、ホントだ。たしかにそうだねー。100時間ばかりに気を取られていたが、前月に60時間をクリアしていなければいけないことは気づいてなかったです」

新米 「はい、つまりは、毎月しっかり時間外労働が必要だということですね。管理監督者の労働時間も把握することとなりましたので、こちらもよろしくお願いします」

image by: Shutterstock.com

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【著者】 イケダ労務管理事務所 【発行周期】 週刊

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