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30代中国人エリートは1回のボーナスが1億6000万円って本当?

急速な勢いで発展する中国経済の波に乗って、中国人の給与額が驚くほど高騰し続けているのをご存知でしょうか。中国、香港ほか、東アジアの社会事情、ビジネス事情に詳しいフリージャーナリストの中島恵さんが、自身のメルマガ『ジャーナリスト中島恵が語る中国&香港とっておきの話』で、実際に現地の知人に聞いた給与額の急上昇ぶりについてレポートされています。

中国人の給料ってどのくらい?

これについては、ある男性読者さんからご質問をいただきましたので、ここでお答えしようと思います。

読者さんは最近、北京や上海にはほとんど行く機会がないそうで、私の本を読んで、今の中国事情をなんとなくイメージしてくださっているそうです(ありがたいことです…自分の本を買っていただけるのが、いちばんうれしいです)。
中国の企業の人件費はどのくらいか、また、日本のハイテク企業や韓国のハイテク企業が中国でモノづくりをする際、メリットはあるのか、などを知りたいというお話でした。

ハイテク企業の現状については、簡単にお答えすることは難しいので、今日はお給料についてだけ、お答えしましょう。そういえば、私はよく講演会などを行いますが、そこで中国人のお給料の話をすると、みんな目を輝かせます。

やはり、日本人も「他人のお給料」が気になって仕方がないのですね

それは世界共通だと思います。でも、中国人のお給料について、私が具体的な例をお話すると、みんなとても驚きます。壇上から見ていて、その驚きの表情を見るのは、けっこう楽しいものです(笑)「ほら、意外でしょう?」と思ってしまいます。

いくら中国が経済発展しているといっても、やはりまだ日本人には「日本人の給料のほうが高いだろう」という思い込みみたいなものがあるんですよね。

私が今年2月ごろに聞いた仰天エピソードですが、テンセントという会社名をご存じでしょうか?

テンセントはアリババと並び、中国を代表するIT企業です。広東省に本社があり、ウィーチャット(約10億人もの中国人が利用している中国のSNS)や、ウィーチャットペイ(中国で8億人くらいが利用している中国の決済機能)などを開発し、運営している企業です。

その中国を代表するテンセントの中でも、とくに稼ぎ頭の部門のボーナスの金額を聞きました。

さて、いくらだと思いますか?

正解は・・・・・・1億6000万円です!!ボーナス1回の金額です!

ボーナス1回が1億6000万円!

中国ではボーナスは1年に1回程度のことが多いですが(春節の前に支給されます)、その1回のボーナスの金額が1億6000万円です。

途方もない金額に、最初は私も驚きましたが、しかも、その金額をもらっている社員は30代前半の数人だそうです。

中国の都市部にある民間企業はどこも平均年齢は30代前半(あるいは20代後半ということもある)くらいですので、それも、さもありなんという感じがします。
テンセント自体、企業として急成長していて、若手社員の中には月収200万円、300万円という人も少なくありません。

4年くらい前でしたが、上海の金融機関(銀行)に勤務している40歳くらいの女性にもボーナスの金額を聞いたところ「1000万円くらい」という答えが返ってきたことがありました。それを考えれば、中国で最も稼いでいる企業の、しかも、その中でとくに稼いでいる部門の優秀な社員だったら、1億円超えのボーナスというのも理解できるというものです。

しかし、日本人にはちょっと想像できない金額ですね。日本では、大手企業の社長でも、そんなに多くのボーナスはもらっていないですから、「まさか」とか「嘘だ」と思ってしまうと思います。でも、これは真実です。

こんな途方もない金額のボーナスを話しても、日本人にはピーンとこないですが、中国人の給料がどのくらい、うなぎのぼりで上がっているのか、という話であれば、少しは理解しやすいかと思いますので、次はそのお話をしましょう。

私の著書に数回、出てきたことがある30代後半の女性がいます。河南省の出身で、大学は河南省でいちばんいい大学(日本でいえば、県でいちばんいい国立大学)を卒業して、日本の地方にある国立大学の大学院(修士課程)に進学しました。その後、東京にある大手家電メーカーの子会社に就職しました。

彼女はその会社に3年くらい勤めましたが、その後、上海で仕事を見つけて、中国に帰国しました。勤務先は日系の大手家電メーカーの上海支社でした。

帰国した最初の頃(2014年ごろ)、お給料は9000元(約14万円)くらいでした。これは上海全体で見れば、どちらかといえばいいほうのお給料でしたが、でも、彼女は大学院卒で、しかも理系です。IT系の中間管理職としてスタートしましたので、そういう点を考えると、他の外資系や地場系のIT企業よりはお給料は少なかったかなと思います。

それから、毎年のように彼女に上海で会っていますが、会うたびにお給料はぐんぐん上がっています。9000元のあとは1万2000元、そして、1万5000元、1万9000元となり、現在は2万4000元(約38万円)に上がっています。

勤務先も会うたびに変わっていますが(ちなみに、彼女は独身です)、彼女は日本留学経験者なので、毎回、日系企業のIT部門に転職しています。中国で日系といえば、「給料が安い」と思われていて、イメージもあまりよくありません(事実、お給料は高くないですし、中国人は管理職につきにくいからです)。でも、彼女は日系を転職して歩き、そのたびに給料がアップしていきました。

日系でさえ、これくらい給料が上がっているので、外資系や他の中国系ならば、尚更です。

では、かつて、「世界の工場」といわれた広東省ではどうでしょうか?

IT企業30代女性の給与が24倍になっていた

広東省の地場系のIT企業に勤務している30代後半の女性(奇しくも、同じ年齢、同じ女性でしたが)にも、お給料について話を聞いたことがありましたので、ご紹介しましょう。

この女性は、前述した女性と違い、「たたき上げ」です。

地元の高校を卒業後、広東省にある中小のIT企業に就職。そのときの最初のお給料は500元だったそうです。(18~19年前のレートがわかりませんが、おそらく1万円くらいでしょうか?)でも、その後、前述の女性と同じように、うなぎのぼりで給料が上がっていきます。

私が2年前に話を聞いたときには、お給料は1万5000元(約24万円)でした。1万円が24万円と、24倍に上がったわけです。

この女性は夫と子供がいて、夫も彼女と同じくらい稼いでいるといっていたので、2人合わせて月給は約50万円です。子どもは田舎の両親に世話してもらっていて、離れ離れということでしたが、生活費はそれほど高くないので、かなりお金は残るのではないでしょうか。

もうひとつ、ワーカーレベルのお話もしてみたいと思います。3カ月前に、上海で聞いた話です。

上海の飲食店で給仕や雑役の仕事をしている人のお給料は、どのくらいだと思いますか?

私が取材したワーカーは、お給料は5000元(約8万円)でした。

中国の内陸部から上海に「出稼ぎ」に出てきて、飲食店に就職。そこで、5000元のお給料で、社宅つきだそうです。社宅といっても、3LDKのマンションに10人くらいで共同生活をするそうなんですが、その家賃は500元(約8000円)。

通勤は徒歩だし、食事はすべて、この飲食店で支給されるそうです。ですので、お金はほとんど使いません。

その飲食店の店主いわく「5000元といえば、大卒文系の初任給に近い金額。5000元というだけでは少ないと感じる人もいるだろうが、家賃も食費もほとんどかからず、毎月、4000元(約6万4000円)くらいは貯金できる。1年で、70万円以上、貯金できるのだから、かなりいいのではないか?」とのこと。

確かに、日本でも、東京で家賃8万円のワンルームに住み、飲み歩いていたりしたら、毎月6万円も貯金はできないですね。そう考えると、上海のワーカーのほうが、日本人のOLさんよりも貯金できているかもしれません。

金銭感覚については人それぞれですが、中国人の給料は8万円~億単位まで、実に幅広く、一口にはなかなか説明できないです。

しかし、いずれにしても、中国の人件費はワーカーからハイレベル人材まで、すべて上がっています。かつて「世界の工場」といわれた中国は、人件費の安さが魅力でしたが、今では広東省の労働者でも上がってきている。そこで、多くの外資系企業はベトナムなど、東南アジアへと移転していますね。

ネパール、ミャンマーなどはまだ電力事情などが悪く、投資環境が完全に整っているわけではありませんが、中国はもはや、生産現場ではなく、消費マーケットとしての価値のほうが大きいといえるでしょう。

image by: GaudiLab, shutterstock.com

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中国や中国人といえば「怖い」「汚い」「うるさい」と思っている日本人が多いかもしれません。でも、急激な社会変化により、中国や中国人は変貌を遂げています。そんな中国、そして隣接する香港の実情は、残念ながら、ほとんど日本に伝わってきていないのが本当のところ。中国ってどんなところ?中国人ってどんな人?本場の中華料理はおいしい?そんな素朴な疑問について、エピソードを交えながら紹介していきます。

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【著者】 中島恵(フリージャーナリスト) 【月額】 初月無料!月額432円(税込) 【発行周期】 毎月 第2水曜日・第4水曜日予定

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