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ごまかしとウソだらけ。海外逃亡を願う中国人が増え続ける理由

今年3月、中国江蘇省の化学工場で大規模な爆発事故があり、多くの犠牲者が出ましたが、中国政府は原因の究明や被害者の補償よりも究明に当たった消防士と救助された人々の美談でごまかそうとしているようです。メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』の著者で台湾出身の評論家・黄文雄さんは、中国古来からの掟である「報喜不報憂」がこういった対応を生むと解説。真実の隠蔽など不可能となった現代では、こうした政府のやり方に、国外逃亡を希望する中国人は10億人と言われ増え続けていると指摘します。
※ 本記事は有料メルマガメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年5月●日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

美談をでっち上げても誰も信じない中国

今年3月21日、中国江蘇省塩城市の化学工場で大規模な爆発がありました。中国当局は、死者64名、重体21名、重傷73名と発表しています。中国では、危険な化学工場でさえ、安全対策が万全ではないため、このような事故はよくあります。また、このような事故の被害者は、十分な補償も得られず泣き寝入りするケースも多くあります。

報道によれば、爆発したのは工場内のベンゼンが引火して、燃え上がった後に爆発を起こしたとあります。工場内での死者以外にも、工場の周辺の被害は甚大で、工場付近の幼稚園では複数の園児が死亡したといいます。また、工場から一キロ圏内の住宅は、ガラス窓が吹き飛び、シャッターがへこんだ現象がありました。

工場責任者を拘束 幼稚園児も死亡 中国の工場爆発

報道によれば、「総領事館によると、爆発地点の風下500メートル地点では、大気中の窒素酸化物が環境基準の350倍近い濃度で検出された。現場周辺には異臭が漂っており、住民の健康被害が懸念されている。」とのことです。

もともと、この工場付近の河川では水質汚染が疑われていたようですが、爆発によってさらに深刻な水質汚染は進んだと思われます。爆発が起こった3月21日、習近平はちょうど欧州の外遊に出ていました。そして、外遊先で笑顔を振りまく一方で、国内に向けては事故の情報操作を指示していたとの報道もあります。以下、報道を引用しましょう。

「80人近くが死亡した中国江蘇省塩城市の大規模爆発で、当局は報道を規制する一方、消防隊員らによる救助活動を連日、美談仕立てで伝えている。習近平国家主席は外遊先の欧州から『世論の誘導』を指示。国民の政府への不満が噴出するのを食い止める狙いがあるとみられる。

『命を守るため、火に向かって進む』。国営通信新華社は24日、化学工場で21日に爆発が起きて以降、千人近くの消防隊員が危険を顧みずに捜索を続け、300人余りを救助したと報道。救助された男性の父親が消防隊員に感謝のメールを送ったエピソードを紹介し『現場には心温まる物語がまだたくさんある』と記した」(3月25日付 共同通信)

習氏、爆発事故で世論誘導を指示 80人近く死亡でも「美談」

しかし、ネット時代の今、そうそう情報規制ができるものではありません。ちょっとネットを検索すれば、現地での捜索の様子や、テレビの報道番組、現地で撮影された動画などがどんどん出てきますし、美談で済ませられる問題ではありません。

当局は、工場責任者を拘束して事故の責任を問う姿勢のようですが、責任は工場責任者にはないでしょう。問題の根はもっと深いところにあるのだと思います。中国における危機管理、危機意識の欠如、経営者と行政の癒着などなど、様々な問題が山積した結果の事故です。

そうした闇の部分に少しも光をあてることなく、被害者を利用して美談に仕立て上げることに何の意味があるのでしょうか。これでは、同じ悲劇を何度繰り返しても改善の見込みはありません。

2015年8月に天津で起こった大爆発事故でも、当局による隠蔽工作が行われ、現地のスクープ写真が没収されたり、あるいは原因に対する議論すらも封殺され、現在もなお原因が完全にはわかっていません。今回の事故も同様に、真の原因究明をするのではなく、「美談」でごまかそうとしているわけです。

政府への批判をかわすための小手先のごまかしで、死亡した64名の人々や重軽傷の多くの人々が手厚い補償も受けずに泣き寝入りさせられるのです。

3月23日に、湖南省でも爆発事故がありました。高速道路を走行中の高速バスが突然炎上して26名が死亡、28名が重軽傷を負いました。この事故も、運転手が事故の責任者として拘束されました。

これらの人災を、すべて美談で終わせるつもりでしょうか。事故に遭って、虫の息になったところを救助隊員に救われた人々は、まるで幸運だったかのように報じられるのです。

「報喜不報憂」(良いことだけをニュースとして伝え、悪いことは伝えない)という古来の中華風情報伝達の掟があり、それは彼らの美徳でもあります。日本のマスメディアのような「あらさがし」的な報道は、彼らにとっては外道なのです。

その一方で、「孫氏の兵法」以来の手法であるフェイクニュースを流すことも、彼らの得意技のひとつです。中国でもっとも有名なフェイクニュースは、毛沢東が長江を水泳で渡ったというものです。

しかしその映像は、波と人の進む方向が逆だったということが判明して、フェイクだと暴かれてしまい、世界的な話題となりました。結局この事件は、『人民日報』の副編集長が引責辞任することで落着しました。こうしたフェイクニュースを流すのは、昔から中国人の得意分野なのです。アメリカ人長老教会の宣教師であったアーサー・スミスは、『支那人の性格』という著書の中で、中国人は「曲解の名人」だと述べています。

中国は、天災の国としても昔からよく知られていますが、今では人災の国となっています。2011年7月高速鉄道の追突脱線事故、2015年6月長江の船の転覆など、大規模な事故が起こるたびに、美談ばかりが報道されてきました。

これは、中国の得意な手法です。独裁政治の中国は、言論や表現の統制から全人民のデジタル管理まで進めており、中国型人間管理法を完成させようとしています。

また、習近平がいくら権力を集中させても、思いのままに人とカネの流れを阻止することはできません。独裁社会に嫌気がさした人々は、中国を脱出して諸外国に逃げたいと思っており、国外逃亡を希望する中国人の数は、人口の3分の2にあたる約10憶人にも及ぶといわれています。

昔から難民と流民は中国の領土拡大の原動力でしたが、現在は国民国家の時代です。いかに魅力ある国を作るかが、国民国家の条件ともなりますが、中国はウソと隠蔽で情報統制する国ですから、誰も魅力を感じないのです。今回の爆発事故のように、いくら美談をでっち上げても、ネットなどを通じてどうしても真実は漏洩してしまいます。

誰もが中国共産党の言うことは嘘だと思っているため、いつまでも国民国家になれず、むしろ海外逃亡したいと願う人民が増え続けることになるわけです。

image by: Tao Jiang, shutterstock.com

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