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「日本人らしさ」はウリにならず。世界との付き合いで重要なこと

日本を飛び出して活躍するには、飛び出した先の言葉や文化をしっかり理解する必要がある。そんな、固定観念に縛られて身動きできなくなっている人はいませんか?アメリカ在住19年、メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』を発行する米国の邦字紙『NEW YORK ビズ!』CEOの高橋さんは、言葉などは最低限でよく、それ以上に必要なものがあると訴えます。それは「個人」の中にあるもので、「日本人の国民性や文化」は強みにはならず、「バレている」と注意を促しています。

世界とつき合うために、最も重要なこと

今回も、メルマガのネタを探すため、いつもの、悪友である台湾人のジャックと、スイス人のマシューに時間をとってもらいました。晩ごはんをオゴる代わりに。
日本人の友達を作る際、何を望む?そう聞く僕に、いちばん高いワインを注文しながら、ジャックが言いました「なに、ソレ、どーゆー意味?」。

だからさ、新たに日本人と知り合った際、どういう人なら友達になりたい?日本的な「礼儀正しさ」とかさ、「奥ゆかしさ」とか、いろいろあるじゃん、どこを見る?そう聞く僕に、メニューに目を落としたまま、マシューが答えます。「だいたい、おまえが礼儀正しくないし、奥ゆかしくもないじゃん」。

いや、オレじゃなくて。この街にいたら、仕事でもプライベートでも、新たに知り合う日本人って少なくないだろ。日本人特有のいいところを感じられたら、友達になりたいって思うよな。仕事でも、相手が日本人なら「真面目さ」とか「誠実さ」とか、日本的な素晴らしさを感じることあるだろ。しそうにワインを飲みながら、ジャックが答えます。「意味わかんねえ
イカスミパスタを注文しながら、マシューが答えます。「本気で言ってんのか、おまえ」そこから二人揃って、こう話してくれました。「相手が日本人だから、相手がナニ人だから、って理由で、プライベートで友達になることも、仕事でビジネスを進めることも、今まで一度だってないし、これからもないよ」
グウの音も出ませんでした。そりゃ、そうだ。「当然だろ」イカスミで口の中真っ黒にしたスイス人に言われます。ついついメルマガのネタを絞り出す為、変な質問をしたと、その場で少しだけ恥ずかしくなりました。

例えば、日本の英会話学校のコマーシャル。留学斡旋会社のフライヤー。インターン斡旋会社のポスター。ワーキングホリデーの指南書。それらの多くに、デカデカと書いてある文言は、いつだって、「異文化理解」や、「英語力」。「世界のカルチャーを知ろう、日本の常識を捨てて、世界の異文化を理解しよう」約束通りの、そういったフレーズを耳にし、目にします。例えば、企業の進出や、個人の留学体験を耳にする際、日本人の真面目で誠実な性格が成功への武器になる、的な話もよく聞きます。
でも果たして。

この街に住んで19年。人並みに世界各国の人間と仕事し、飲んできたけれど。一度だって「彼の国の文化をよくよく理解した上で、小粋なアメリカンジョークをぶっこもう!」とか、「彼女の国の情勢を知った上で、コミュニケーションを心がけよう!」とか、気合を入れたことは一度もなかった気がします。相手方も然り。僕が日本人だから「正座して挨拶しよう」とか「意味なく何度も、会釈しよう」と試みたニューヨーカーは19年間で皆無でした。

それってある意味「日本の文化」を理解しようとしてくれていない、と言えるかもしれません。でも、もちろん、だからって、「失礼な!意味なく愛想笑いしてくれない!」とか「電話でしゃべる時は、何度もお辞儀してくれないと!!」と、僕が思うことは絶対にありません。

4杯目のワインを飲み干しながら、ジャックは続けます。「趣味や感覚が同じだから、オレたちって友達になったんじゃないの?」。僕が食べられない牡蠣を注文しながら、マシューは話します。「おまえがナニ人でも、一緒にいたし、おまえもそうだろう」。確かに、ジャックとマシューが台湾人だの、スイス人だの、と意識したことはありませんでした。

外国人とのコミュニケーションに、もちろん「異文化理解力」も、「語学力」も、当然、必要です。日本人の誠実さ、奥ゆかしさが好印象を持たれることもあるでしょう。それらを軽視するつもりはありません。でも、もっとも大切なことは、それらではないような気もします。「異文化理解力」も、「語学力」も、本当の意味でのマスターは、むしろ、コミュニケーションしながら身につけていくものなのかもしれません。

某英語学校では「パーティーの際に使えるアメリカンジョーク」のクラスがあると聞きます。でも、おそらくは、アメリカ人は、日本人からアメリカンジョークを聞きたいとは思わない。アメリカ人が日本人から聞きたいのはジャパニーズジョークなはずです。その授業で取得した「小粋なアメリカンジョーク」を披露する場所は、日本の人が考えるより少ない。

なにより、世界とコミュニケーションをする際、日本ほど「相手側の文化を理解しよう」と合言葉のように詠う国はないかもしれません。何にでも合わせるのが得意な国民性は、本番で「こいつには何の主張もないの?」と思われてしまう危険性もある。そっちの方が実際、多い気がします。

それに、必死で相手方の文化を理解し、合わせて友達になったとして、ビジネスが成立したとして、その関係を継続するためには、ずーーーーーーっっと理解し続け、合わせ続けなきゃいけないという理屈にならないだろうか。それって「友達」と言えるだろうか。そのビジネスは健全と言えるだろうか。

「異文化を理解し合う」ということは、一方的に寄り添い、合わせることじゃない。なんなら、今の日本人なら各国の人間に「もちょっと理解しろよ、こっちのことを!」くらいに言った方がいい。それくらいで、ちょうどいい感じ。そう思います。それくらいでやっと真の「国際交流」。

そう「異文化理解」より、「英語」より、世界とコミュニケーションするのに、いちばん必要なことは「個」の力だと思います。自分が、こんな人間だよ、と相手が感情移入できる何かを持っているかどうか。そこに、ナショナリティは不要です。NIPPONも、Englishも関係ない。おもしろくって、やさしくって、いいやつなら、世界の方から寄ってきます。友達になりたい、と。ビジネスしたい、と。必要以上にへりくだるのは、マイナスでしかない。必要以上の自己主張も意味がない。

かつて、僕の会社に、アメリカの某有名大学を卒業し、MBAまで取得した男性営業マンがいました。彼の話すビジネス英語は完璧で、アメリカのカルチャーも相当、熟知していた。ただ、ちょっとだけ、ヤなヤツ(笑)でした。上から目線の態度に、しばしばクライアントからクレームが入ったこともありました。結果、まったく営業数字は上がらず、やめていきました。

英語が得意とはいえず、日本から来たばかりの、とにかく一所懸命な女性インターンがいました。彼女はいつも笑顔で、どんどんニューヨーカーにぶつかっていきました。お世辞にも英語コミュニケーションが上手とは言えなかった。それでも、クライアントからの評判はよく、営業数字もどんどん上がっていった。

もちろん、これは極端な例だと思います。くどいようですが、海外で仕事をするのに、語学力と、異文化を積極的に受け入れる許容力はまちがいなく必要。でも、それ以上に必要なものがある、という話です。

現に、彼女はいわゆる「カタコト英語」で、契約を取り続けました。「おっけー、おっけー、サンキュー。プリーズ、クレヂっとカード、バンゴー!、あ、バンゴーって日本語だ、きゃはは」と笑いながら。当然ですが、完璧な英語を話す態度の悪い営業マンと、英語はカタコトだけれど、愛嬌あって、一生懸命頑張ってる営業マンと、どちらの話を聞きたくなるかは、言うまでもありません。そこは、全世界共通なはずです。

80年代から2000年代、かつて日本人は世界から「礼儀正しくて、誠実で、真面目」と思われてきました。もちろん、今でもそうです。ただ、ここ数年は、それを日本人自体が自覚してることがバレてます(笑)

某オフィス機器メーカーのアメリカ人に、「日本人って、やたら、礼儀正しさや、真面目さを自分たちでアピールするよね」と笑われたことがあります。聞けば、彼の取引先の日本人ビジネスマンは、ことあるごとに「日本人は~」と話し出すとのこと。でも、遅刻しないことも、契約内容を守ることも、「至って普通だと思うけれど」と彼は付け加えました。アメリカ人だってそうしてる。

マシューは多くの日本人女性とお付き合いしてきました。あくまで彼の個人的な体験からの個人的な意見ですが、お付き合いしてきた日本人女性は全員同じセリフを言うそうです。「日本人女性は、礼儀正しくて、誠実で、真面目ってどうせ、思ってるでしょ。でも、私は違う。どっちかっていうと、フランクで、おもしろくって、アメリカ向き」という言葉を。全員がそう言うから、結局彼は「礼儀正しくて、誠実で、真面目な日本女性と会ったことがない」と笑います。
つまり、世界が、日本人は礼儀正しくて、誠実で、真面目だ、と思っている、と日本人がそう思っている、と世界の人にはバレています

その前提の上で、コミュニケーションしようとするから、前述した日本のビジネスマンのように、日本人女性のように、本質「礼儀正しくて、誠実で、真面目」と逆に思われていないケースが多発する。もう、ナニジンだからどう、と思われる時代ではないのだと思います。
COOL JAPANを説明する前に、自分はどんな人間かを主張しよう。相手が知りたがっているのは、日本という国ではなく、あなた自身なのだから。
二人の悪友に気付かされた夜でした。4杯目以降と、そのデザートのティラミスは自分で払え。

image by: Tyler Olson, shutterstock.com

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

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