MAG2 NEWS MENU

「日ロ関係改善のためには平和条約の話はNG」というパラドックス

6月6日、公式会見で日ロ関係に触れ、「平和条約締結が困難な理由は日米の軍事協力にある」と明言したプーチン大統領。これを受け、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、覇権戦争が激化している現在の米中・日中関係を意識するならば、今は北方領土問題に固執し続けるタイミングではないとし、その理由を詳しく解説しています。

プーチン「平和条約締結は困難」なぜ???

プーチン、「平和条約締結は困難」だそうです。なぜ???

日露平和条約は困難 プーチン大統領「日米協力が障害」

産経新聞 6/6(木)23:00配信

 

【モスクワ=小野田雄一】ロシアのプーチン大統領は6日、国際経済フォーラム出席のため訪問している露北西部サンクトペテルブルクで各国の主要通信社と会見した。プーチン氏は日露平和条約の締結問題について、「ロシアは条約締結を望んでいるが、日本と米国の軍事協力が締結を難しくしている」との認識を改めて示した。

日本と米国の軍事協力が締結を難しくしている」そうです。具体的にどういう話なのでしょうか?

インタファクス通信などによると、プーチン氏は沖縄の米軍飛行場建設や地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の日本への配備計画に言及。「日本もロシア側の憂慮を理解してくれると思う」と述べた。平和条約締結に伴って北方領土を日本に引き渡した後に米軍が基地を配備した場合、ロシアの安全が脅かされるとの懸念を表明したとみられる。
(同上)

北方領土を日本に返すとアメリカ軍が基地を作る可能性がある。それは脅威だと。これ、「屁理屈」に思えるでしょう。しかし、ロシアから見ると、かなり「切実な問題」です。

ロシアから西を見てみてください。なんと29か国からなる超巨大反ロシア軍事ブロックNATOがある。アメリカは、さらに拡大したがっていて、ロシアの隣国ウクライナやグルジアも加盟させたい。そんなアメリカですから、東も安心できません。北朝鮮が崩壊すれば、ロシア中国の国境近くに基地を置くかもしれない。だから、ロシアは、金正恩を守る

北方領土を返せば、そこに基地を置くかもしれない。安倍さんが、「4島には基地を置きませんと約束しても、ロシアは信じることができません。アメリカは、東西ドイツ統一時、ゴルバチョフに「NATOはドイツより東に拡大しない」と約束した。しかし、すぐ破った。だから、安倍総理が何をいっても、「アメリカが望めば日本は受け入れざるを得ない」とロシアは考える。

日ロ関係の法則

安倍総理は、「私の代でこの問題を終わらせる」などとおっしゃっています。日ロ関係を強固にするためには、「平和条約締結が不可欠だ」というようなこともおっしゃっている。しかし、実をいうとこれ」なんですね。

プーチンははっきりと平和条約締結交渉を嫌がっています。なぜ?ロシア政府高官に、日本政府高官が「平和条約締結交渉をしましょう」というと、「そう」聞こえない。ロシア政府高官の耳には、「早く島返しやがれこの野郎!」と聞こえる。だから日ロ関係は、

というはっきりとした傾向があります。だから、日ロ関係を改善させたければ、一番いいのは平和条約の話をしないこと。「関係を改善するために平和条約が必要」なのではない。「関係を改善するためには平和条約の話をしないことが必要」なのです。

なぜロシアとの関係改善が必要なのですか?

これ、当然の疑問ですね。日本人の感情としては、「島を返さない無礼なロシアとつきあう必要はない!」と。わかります。しかし、それを一番喜ぶのは習近平です。なぜ?中国は2012年11月、ロシアと韓国に「反日統一共同戦線」構築を提案しました。100万回書いていますが、その骨子は、

全国民必読証拠はこちら。

反日統一共同戦線を呼びかける中国

このように、中国は、アメリカ、ロシア、韓国をまきこんで、日本を破滅させたい。だから日本の戦略は逆にアメリカロシア韓国と良好な関係を保つことである。そうすれば、「反日統一共同戦線戦略」を「無力化できる。実際、安倍さんは、トランプ、プーチンと仲良しなので、中国は動くに動けない

そうこうしているうちに米中覇権戦争がはじまり、今度は日本にすり寄ってきている。しかし、基本的に中国は、日米関係、日ロ関係、日韓関係を破壊して沖縄を奪おうという意志をもっている。なんといっても、「日本には沖縄の領有権がない」のですから。

そう考えると、日本はアメリカとの関係を強固に保たなければならない。ついで、日ロ関係をどんどん改善させていくべき。日ロ関係を改善させたければ、平和条約締結の話よりも、「金儲けの話を多くすべき

これ、「ロシアに儲けさせろという話ではありません。そんなことをしても、日本側に儲けがなければ長続きしないでしょう。そうではなく、日本もロシアも儲かる話をしましょうということ。

いずれにしても、安倍総理は、「自分のレガシー」といっったエゴではなく、「大戦略的観点」から日ロ関係を見ていただきたいと思います。領土返還は成らなくても中国の脅威を退けつつ、米中覇権戦争で勝ち組に入ればそれが最高のレガシーでしょう。

image by: 首相官邸

北野幸伯この著者の記事一覧

日本のエリートがこっそり読んでいる秘伝のメルマガ。驚愕の予測的中率に、問合わせが殺到中。わけのわからない世界情勢を、世界一わかりやすく解説しています。まぐまぐ殿堂入り!まぐまぐ大賞2015年・総合大賞一位の実力!

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ロシア政治経済ジャーナル 』

【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け