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没落のアメリカ。自国発バブル崩壊と中東戦争敗戦、どうする日本

6月29日、大阪で開かれた米中首脳会談で、アメリカによる中国への新たな制裁関税の発動は見送られたものの、予断は許されない状況の両国関係。トランプ氏については対中政策のみならず、イランに対する強硬姿勢や日米安保条約破棄の示唆等、相変わらずの「喧嘩腰外交」を展開しています。世界情勢が激変必至の中、日本はどの方向に進むべきなのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんがその道筋を探るとともに、2020年の米国大統領選後に世界を襲う大不況に日本はどう備えるべきかについても考察しています。

米国の無茶苦茶な政策で没落へ

米国の無茶苦茶な金融政策で作るバブル崩壊と中東戦争敗戦で米国は没落するような予感がする。その検討をしよう。

日米株価

NYダウは、2018年10月3日26,951ドルで過去最高株価であるが、12月26日21,712ドルと暴落したが、利下げ観測と米中貿易戦争緩和期待で上昇して6月21日26,907ドルまで上昇し、6月28日26,599ドルと、ほぼ高値圏にいる

日経平均株価も、同様に2018年10月2日24,448円になり、12月26日18,948円と暴落し、4月24日22,362円に上昇したが、対中対墨貿易移民戦争激化で6月4日20,289円まで下落。しかし、米国で今年利下げ観測で6月21日21,497円と上昇。6月28日は21,258円になっている。

6月29日の米中首脳会談で、米中が貿易協議を再開することで合意したことで想定通りになった。このため、7月1日の東京市場は、荒れることはないようだ。

市場はバブル最盛期になり、米国民の7割が景気が良いと答えている。消費の増加も止まらない。しかし、米国の輸出製造企業の業績は下降してきている。先行きの不安が影響しているので、政治色の強い相場になっている。このため、株価最高値圏での利下げ観測と米中貿易戦争の様相のバランスで、株価が決まり、米中貿易戦争は休戦になり、株価は上がる方向になる。

先行きの不安から、米国債も買われて、金利が2%を切る水準になっている。金利が安いので、企業の借入金が2017年のリーマンショック直前より多くなっている。この借入金で自社株買いを行っているので株価は上昇しているが、製造業の業績は下降気味である。

株も債権も高く、金や仮想通貨も上昇してきた。フェイスブックも仮想通貨「リブラ」を始めると宣言している。このように全資産がバブル化してきている。世界はミンスキー・モーメントになるまで、資産バブルを拡大させるようである。

しかし、中央銀行は、積極的に金を買っている。中央銀行バブルを起こしている中央銀行が、不安から金を買う動きをしているのが、気になる。

米市場では、7月利下げ予想100%であるが、利下げをしないと期待を裏切ることになり、大幅な調整になるし、利下げをすると瞬間株価は上昇するが、その後は株価を下げて催促相場になる。強欲な市場になってしまった観がある。

米中貿易戦争の結果

しかし、米国もそろそろ関税UPによる貿易戦争を止める必要になってきた。関税を上げても、中国の5月の貿易統計によると、輸出は前年同月比1.1%増と、米国の関税引き上げにもかかわらず、予想の3.8%減に反して増加した。ただ輸入は前年比8.5%減と予想(3.8%減)以上に落ち込み、2016年7月以来約3年ぶりの大幅な減少率を記録。

ということで、米国は、中国からの輸入額は減らず、逆に中国への輸出額は大幅に減っている。中国の貿易黒字は米国の関税UPでも増えている。貿易量は減っているが、黒字額は増えているのだ。

勿論、中国は輸出が国内総生産(GDP)の20%近くを占めているので影響が大きいが、米国が目指している輸入減とはならないことが明らかになっている。その上、米国製品の中国での販売が難しくなっている。特に米国からの輸入減の多くは農畜産物であり、米国の農家が大きな影響を受けている。

このような状況は、1980年代当時の日米貿易戦争でも、米国の輸入量が減らずに増えてたことからも明らかである。関税UPでも貿易赤字が減らないと、次に行うのが輸入数量の制限となる。そして、中国企業が東南アジアで生産して米国へ輸出するので、米国の貿易赤字は変わらないことになる。すると、ベトナムなど中国企業の進出先国に対しても関税を上げることになるが、それでも輸入量が同じになる。このため、最後はドル切り下げになる。

トランプ大統領は、関税を上げれば、「企業が米国に戻ってくる」と思っているが、工場を建てて生産開始までに数年が必要であり、かつ米国企業は空洞化して技術力もなく他国企業を誘致して生産することになる。しかし、現時点でも、アップルのように米国で生産していた最高機種のPCを中国生産にして価格を引き下げる選択した。米国での生産は非常に難しいということである。

その上、賃金が高いので価格が上昇して、関税UPを継続することになり、物価上昇して景気後退になり、スタグフレーションを起こすことになる。景気よりインフレを止めるために金利を上げる必要になる。そのため、最後の手段としてドル切り下げしかなくなるのだ。

このサイクルをまた繰り返すことになる。ということで、ドル切り下げで円高になる方向になる。1ドル=99円程度が企業の採算分界点でありここまで行く可能性もある。

日米安保破棄示唆と米イラン戦争示唆

トランプ大統領は、日本に対しても不満のようだ。米国は、日本を守るが、日本は米国を守らない。不平等条約であるというのである。その上に、ホルムズ海峡についても日本と中国に対して、「自国の船を自力で守るべきだ」と発言した。正論である。

米国は、中東から石油を輸入していないから、中東の安全を守る必要がないという。米国は世界の警察官ではないとオバマ前大統領は言っても実行しなかったが、トランプ大統領は実行するようである。

一方、中東イランに対しては永久的な核放棄を迫り戦争も辞さないという。このように、米国の喧嘩腰の相手が多方面になり、欧州や中国は、イランとの核合意を順守するために、イラン産原油を買い続けることにして、決済手段をSWIFTとは別に作ることになったようである。SWIFT上では、イランと他国の貿易は見えなくなったことになる。経済制裁も効果が半減したようだ。

イランも欧州や中国に不満はあるが、欧州や中国との貿易が再開できるので、米国の経済制裁などの脅しを無視できることになった。

また、戦争を開始する前に、米国はイスラエルと協議して、イランとの戦争時、ロシアにイランの味方をしないで中立でいてほしいと交渉したが、ロシアは拒絶している。欧州や中国は当面中立であるが、ロシアはイランと共同戦線を組むことになる。

このため、イランとの戦争もできない状態になっている。米陸軍は中東に現在2万人程度しかいない。その内、アフガニスタンに1万人いる。イラン軍に比べて劣勢である。

サウジ陸軍は、7万人程度であるが、イエメン反政府軍フーシ派との戦いで苦戦状態になっている。イスラエル陸軍は12万5,000人と予備役44万5,000人で強い。装備も最新鋭であるが、レバノンのシーア派ヒズボラとの戦いでは、痛い目に合っている。

イラン陸軍は約53万人と予備役は40万人で中東最大の兵力であるが装備は古い。しかし、イラン軍別動隊のヒズボラがイスラエル軍の弱点を知っている。その上、パレスチナもイランの味方になる。

そして、米軍が中東でイランとの戦いになると、自国の味方を増やす必要があるが、欧州とも中国とも敵対関係になり、日本にも冷たく当たっている。米国の身勝手な振舞いは味方を無くし敵を増やすことになり大国とは思えない行動に出ている。まるで、平安末期の平家のような感じで「奢れる者は、久しからず」だ。

その上で、ホルムズ海峡を中国と日本で守れと来たので、中国海軍は、チャンスと出ていくことになる。日本の海上自衛隊も出ていくべきである。日本の自衛隊と中国軍とイラン軍でホルムズ海峡の共同管理をして、米海軍をこの地域から撤退させることである。米軍に中東から出て行ってもらい戦争の危機を回避する事が必要であると見る。

日本は早期に憲法改正して、米国との日米安保条約を平等条約にして、奢れる米国の衰退に備えることが必要になっている。ホルムズ海峡防衛では中国軍とも協力して、奢れる米国を落ち着かせる必要と中国軍の行動を監視しておくことが必要だと思う。

もう1つ心配なのが、中東戦争になり、最終局面で中国が出てきて米軍とイスラエル軍を叩くことになるような予感がしている。これを防ぐことである。しかし、中国の中東進出をトランプ大統領は、ツイートで中国に与えてしまったようだ。

大不況に備える

G20も終わり参議院選挙後、日米通商交渉になる。米国から農産品の輸入は、日本も認めて関税を引き下げることになる。TPP諸国と同程度の線は、日本も認ているが、関税をTPPより下げろ言うのが米国の要求である。

そして、自動車の輸入数量制限を米国は持ち出している。どちらにしても日米通商交渉は厳しくなる。それと並行して7月にはFRBは、0.25%の切り下げを行う。これをしないと株価暴落になり、トランプ大統領から暴言を浴び、パウエル議長も忖度するしかない。

しかし、2つのことでドル安円高になる日本の株価は大きく下落することになる。日銀ETF買いは1日740億円であり、それ以上の売りが出ると、大幅な下落になる。

それと、東証の売買代金が2兆円割れの日が多くなっている。海外投資家が売り越して、海外投資家の18年度末の保有比率は29.1%と少なくなってきた。海外投資家が日本株から離れている

日銀の量的緩和策として、米利下げで日銀ETF買いを増して継続的に行うと、株価は大きくは落ちないが、海外投資家の売り越しが続き、東証の出来高は、減り続けることになる。株価の上下動がない閑散市場になる。当分、そのような市場が続き、世界的なミンスキー・モーメントになり大不況で企業業績が悪化して大暴落となるようだ。

2020年11月までは、トランプ大統領も再選の選挙戦になり、不景気にはできない。政治相場は、利下げや量的緩和などを行って、そこまでは持たせると見る。しかし、そこまで持つのかという疑問もある。

日本は、2019年10月に消費税を引き上げておき2020年11月以降の世界的な大不況に備えることである。大不況になると財政出動を再度行い、大不況をしのぐことである。社会保障改革もそこまでに済ませておく必要がある。

日本の地方銀行がジャンク債の組込債を買っているが、その流動性がなくなるので、2020年11月までには売却しておくことである。

所得税が大きく伸びているので、富裕層・中産階級の所得は伸びている。非正規社員の給与を上げて貧富の差を縮小することが重要であるが、消費税UPで景気が少し落ちても完全雇用状況は続くので、少し景気を冷やしてバブルを作らないで、日本だけはバブル崩壊での大不況を起こさない努力をすることが重要である。

米国の無茶苦茶な金融政策で作るバブル崩壊の犠牲になってはいけない。このバブル崩壊と中東戦争敗戦で米国は没落するような予感がする。

さあ、どうなりますか?

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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