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安倍首相が靖国神社を「公式参拝」することが出来る唯一の方法

日本の首相が公式に「参拝した・しない」が国内外メディアを騒がす「靖国神社問題」は、過剰報道に押され、議論自体がタブー視されているのが実情です。今回の無料メルマガ『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』ではAJCN Inc.代表で公益財団法人モラロジー研究所研究員の山岡鉄秀さんが、現状、「靖国神社=戦争神社」との海外報道を許している日本の国際情報戦略のツメの甘さを指摘するとともに、その具体的打開策を提案しています。

首相と天皇陛下の靖国神社公式参拝を実現する唯一の方法

全世界のアメ通読者の皆様、山岡鉄秀です。

また8月が近づきつつあります。この時期になると話題になることのひとつに、「靖国神社公式参拝」があります。

安倍首相は靖国神社公式参拝を悲願としてきました。しかし、第二次安倍政権で満を持して靖国神社に参拝した安倍首相は中韓のみならず、同盟国である米国から失望した」と意見表明され、世界中から非難を受けて孤立してしまいました。これは政権の存立をも危うくする危機でしたが、その後安倍首相は奇跡的に失地を回復します。全世界の非難がプーチンのクリミア併合に向かったからです。

この辺の経緯は、北野幸伯さんが繰り返し説明されていますね。

“恐怖の大王”プーチンが日米関係を変えた 日米vs中ロの新パラダイムをどう読むべきか

それ以来、安倍首相は靖国神社公式参拝を控え続けています。米国大統領がオバマからトランプに変わったとはいえ、同じ轍を踏むわけにはいかないと思っているでしょう。

安倍首相が公式参拝を諦めてしまったことについて、特にコアの安倍支持層に強い不満があります。「英霊の供養こそが本義であり中韓なぞ無視して筋を通すべき」という意見です。

一方で、大阪維新の会法律顧問の橋下徹さんのように「日本人にとっての正論を押し通すことは現実的ではないから、靖国神社を国有化しA級戦犯を分祀して、国際社会から文句が来ないようにして公式参拝を実現すべき」という意見があります。

日本エア野党の会の会員専用FBグループ内でも活発な議論が交わされましたが、ほぼ全員が前者の「筋を通すべき」という意見です。

ここで私は、この問題を国際情報戦の観点から捉えて対策を練ることをご提案します。

実は、安倍首相も唐突に靖国神社公式参拝を強行したわけではありません。事前に衛藤晟一首相補佐官らが渡米し、米国政府高官に理解を求める根回しを行い、「わかったから、うまくやってくれという反応を得ていました。

しかし、バイデン副大統領から中止を求める要請が来たということは、説得工作が不十分だったことを如実に示しています。安倍首相はこれを無視して靖国参拝を強行したために、米国から強烈な非難を浴びてしまいます。

つまり、情報戦に負けていたのです。

当時のオバマ政権に中国ロビーが深く浸透していた可能性が考えられます。まさに、中国の思惑通り右傾化を強める危険な安倍政権と見なされて孤立する事態に陥りました。

このことから学べることは何でしょうか

まず、靖国神社公式参拝は同盟国である米国、そして、オーストラリアなどの準同盟国に支持されなければならない、ということです。

それでやっと、中国や韓国を無視できる環境が整うのです。

このことを考えずに正論を貫いて再度強行すれば、トランプ大統領との信頼関係があるとはいえ、またもや無用な反発を招いてしまう可能性が十分あります。

ではどうするのか?

まずは、欧米人にわかりやすい論理構成でしっかり立論することです。英語できちんとした論文を発表すべきです。

しかし、それは「なぜ靖国神社公式参拝が正しいか?なぜ批判が的外れなのか?」だけでは不十分です。

強調すべきは「なぜ日本の首相や天皇が公式参拝することが米国およびその同盟国の国益になるのか?」です。

最近、トランプ大統領が「日米安保は片務的で不公平」と発言したと報道されて話題になりました。ここで、「片務的ではない」と反論するだけでは全く不十分です。時代は変わったのです。

トランプ発言の背景には、「同盟国に自主的な防衛力強化を求める」という発想があります。実際問題、北朝鮮の脅威と中国の覇権主義から日本を守るためには、自主的な防衛努力が必要なのは明らかです。

ですから、首相や天皇が靖国神社に公式参拝し、日本国民が戦没者を追悼することを当然のことと見なし、それを通じて国防意識に目覚めることは米国の国益に合致するのです。

もちろん、この論理を押し出すにあたっては、靖国神社に関しても、もう少し整理すべき点もあるでしょう。たとえば、誰を祀って、誰を祀っていないかなどです。

いわゆるA級戦犯というカテゴリーがいかにいい加減なものであるか、はもちろん説明しなくてはなりません。

これらのことは日本国内では詳細に議論されていますが、外国人が理解できるような理論で、英語で書かれた論文見たことがありません(私が知らないだけかもしれませんが)。

現時点では、海外の報道で靖国神社は戦争神社War Shrineと形容されることが一般的です。まずは、この認識をひっくり返し、靖国神社公式参拝は危険な右傾化どころか、米国およびその同盟国の国益に完全に合致するものだという認識を一般化しなくてはなりません。

もちろん、論文を書くだけではだめです。

それを持って、全てのキーパーソンを説得して回るのです。米国のオピニオンリーダーに賛同してもらうことが重要です。

容易なことではありませんが、今はむしろチャンスだと言えます。今やらずしていつやるのか?と私は考えます。そして、こちらが主張する認識が国際社会で十分に共有された時点で、初めて中韓を完全に無視して公式参拝を実現できるのです。時間を要します。

こういう話をすると、「そんなことができる人材がいるのか?」と言われそうです。

私は以前、このアイディアをベストセラー作家の門田隆将さんにお話したところ、賛同を頂きました。あとは賛同してくれる政治家が必要です。つまり、言論人と政治家が戦略的連携を結んで協力すれば、きっと実現できるはずなのです。

言論人と政治家の立場の違いを強調しても無意味です。考えるべきは、どうやって共通の目的の為に協力するか、なのです。

山岡鉄秀 Twitter:https://twitter.com/jcn92977110

image by: Shutterstock.com

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【著者】 アメリカ通信 【発行周期】 週刊、不定期

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