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参院選の「れいわ現象」と「N国党躍進」は何を意味するのか?

7月21日投開票の参議院選挙では、れいわ新選組が2議席、NHKから国民を守る党が1議席を獲得し話題となりました。国会に空いた3つの議席の風穴から、今後新しい風は吹くのでしょうか。メルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』では、参議院選挙を総括し、れいわ新選組がかつての日本新党のようになれるのか、N国党のような「ワン・イシュー政党」は今後も誕生していくのかを分析し予測しています。

「れいわ新選組現象」と「憲法改正」という参議院の将来

今回の参議院選挙、7月22日以降で2つのことが言われていました。1つは「れいわ新選組現象」、もう1つは「NHKから国民を守る党の健闘」、そして「憲法改正議席数3分の2割れと、どこが勝ったのか」という議論です。今回、この第31話の最後として、選挙の「後日談」の話をし、将来を予測してみたいと思います。では1つ1つ行きましょう。

まずは「れいわ新選組現象」というものがあります。これに似たものが1992年の「日本新党ブーム」です。「日本新党ブーム」とは、当時の熊本県知事であった細川護熙氏が、いきなり国政政党を立ち上げました。

細川氏は、もともとは戦国大名で風流人の細川幽斎の子孫です。細川幽斎の嫡男が細川忠興で、その妻が、来年の大河ドラマの主人公・明智光秀の娘、珠、後に洗礼を受けて細川ガラシャとなる女性です。まあ、明智光秀の血は、熊本では藩祖忠興から三代で途絶えていて、細川護熙氏とは全くつながっていないのですが、それでも大名の子孫であることには変わりがありません。

その「殿」は熊本県知事でしたが、その人が国政に出ると言い出したのです。初めは誰も相手にしなかったというか、「どうせ55年体制の中で、大勢力に埋もれて、何もできないであろう」として、マスコミが面白がって扱っていました。

しかし、結党から2カ月後の参院選の比例で360万票余の票を集め、細川氏や小池百合子氏(現東京都知事)ら4人が議席を獲得して国政に躍り出たのです。翌1993年7月の衆院選でも、日本新党ブームはさらに拡大して35議席を獲得します。そして8党派連立の細川政権につながったのです。自民党の55年体制以降初めての下野ですね。

さて、今回「れいわ新選組現象」が、同様の話になるのか、ということが非常に大きな関心事になってきます。もともとは、山本太郎前議員1人が参議院で、小沢一郎氏と組んで自由党になっていました。しかし、今回の参議院選挙の直前に、小沢氏は自由党を解散し、そのうえで、自身は国民民主党に入党するということをしています。その内容を受けて山本太郎前議員は、1人で「れいわ新選組」を立ち上げ、そのうえで、比例特定枠にALS患者ら2名を立てて選挙戦を戦いました。

もちろん他にも比例候補を擁立し、また、選挙区でもいくつか候補を出しています。その中で、山本太郎氏は99万票を比例で得票し、そのうえで特定枠で2枠を確保して自身は落選するということになったのです。

さて、「れいわ新選組現象」とは一体何でしょうか。私自身、2議席とるとは全く予想外でした。そのうえで、この現象は何かという分析をしなければなりません。

この現象の分析は、1つは「与党票がどれくらいとられたか」ということです。与党から票が流れていれば、それは、「れいわ新選組現象」が「中道保守系」と見られているということになっています。

実際に日本の多くの民意は「中道保守」「無党派」であることはすでにどこでも分析されています。そのために、革新系の立憲民主党も、また共産党ですら、天皇の存在を否定しませんし、資本主義を否定したりしていません。

さて、現実のところでは、「反自民」を中心に、「非自民」の一部と、「無党派層」の一部が「れいわ」に流れたという感じです。つまり、旧野党票が、野党が頼りないということで動いたという感じです。

問題は、この動きが「ほかの政党、特に自民党の分裂を招くか?」ということと、同時に、「保守票を集めることができるか」ということです。そうなってくると、日本新党現象になるでしょう。

さて、日本の保守主義者というか、「全く意識していない保守層」というのは、他人に迷惑をかけること、なんとなく条理に合わないものがあまり好きではありません。基本的に、「現在の自民党・公明党連立政権に投票するのは嫌だ」「長期政権を認めているようで、なんとなく支配されているような気がする」というような感じがあるものの、では革新政権でよいのかといえば、そうではないというのが彼らの基本的なスタンスです。

日本新党の時は、細川護熙という「旧大名家」であり、なおかつその人々が、元ブルジョワジーであるということから、彼らが革新政権になるとは全く思っていなかったのではないでしょうか。

逆に、今回の選挙で静岡県の徳川家広氏が立候補し落選しております。徳川氏は、見てわかるように徳川将軍家の後継で、まさに立憲民主党の枝野氏は、細川日本新党ブームの再来を狙ったということになります。しかし、徳川氏の場合、枝野幸男立憲民主党党首ということが前面に出てしまい、そして立憲民主党が左翼革新政党であることから、徳川氏が変節してブルジョワジーを捨てたということが明らかでした。

つまり、「家柄や血筋よりも、その人が自分たちの日本における中道保守層に近いかどうかということが優先されるものであって、それ以外の事項は二の次になってしまうということになります。そのような意味で「れいわ新選組現象」を分析すれば、間違いなく本来立憲民主党や国民民主党に投票していた革新支持層と、あまり投票に行っていなかった無党派層を集客したということになります。

これは、現在の与党の問題ではなく、立憲民主党や国民民主党における与党批判という選挙手法に対して、国民が嫌気がさしているということになります。そのように考えると、「れいわ新選組現象」は、若者が少なくありません。

つまり「今後の行くべき方向を具体的に示すということがなければ、単に現状を否定するだけでは投票行動が起きない」ということが明らかになったということになります。現在の若者はそのような特性を持っていますから、その特性に関して現在の野党が全く見えていないということになるのではないでしょうか。

その意味ではれいわ新選組は、うまく具体的な内容を出していたのではないかと思います。もちろん、民主党政権の時のマニフェストのように、それが実現可能かどうかということは非常に疑わしいと思います。

例えば消費税廃止などといっても、今まですでに8%の消費税分はしっかりと歳入があったわけで、それを失った政府の財源をどうするのかということも全く見えていないということになるでしょう。そのような具体策が見えていませんが、単純にスキャンダル的な批判しかしない現在の野党よりも、はるかに「将来性があるような政党」に見えたことは確かでしょう。そのために、あまり政治を理解していない若者層や主婦層に受けが良かったということになります。

しかし、ALS患者を政治の場に送ったこと、そのうえその世話を国家にゆだねたことから、多くの国民が「れいわ新選組だけ特別扱いされている」というように感じるようになった場合は、そのブームは終わるのではないでしょうか。

国会も、国民の税金で動いています。それが1つの政党だけで様々なシステムが変わり、それが事件が起きるようになれば、当然に、国民はブームを作っても反感を持つことになります。民主党政権の時と同じように、「こんなはずではなかった」といって、国民は、ブームを作った本人でありながらも、いや自分でブームを作ったからこそ、しぼむ速度も大きくなってしまうのです。

このように「れいわ新選組現象」という政治的な動きは、1つには現在の野党のあまりにも不甲斐ない国民不在の状態がその内容の中心にあり、その上で、無党派層に「わかりやすい」選挙をしたということになります。

しかし、そのわかりやすい選挙そのものが、「公約の単純化」につながり、その攻撃が国会や公共の施設を通して、国民に向かったと感じた瞬間に、かえってその自分を支持した人々から攻撃を受ける可能性があるのです。まだまだ、両刃の剣で、今後日本新党のようになる可能性があるものの、まだそこまでの状況にはないということになるのではないでしょうか。

さて、もう1つの「NHKから国民を守る党」の話をしましょう。N国党は、ある意味で「ワン・イシュー」といわれるように「1つの政策しか出していない政党」であって、基本的なイデオロギーなどが見えない内容になってしまいます。そのような政党の場合は、保守とか革新というような話がありません。

また多くの人が当選した場合に分裂も早いのです。しかし、今回は比例で1人が入ったということになります。つまり1人なんですから分裂もありません。その意味では簡単なのですが、実際は「イデオロギーが関係ない人がこれだけの人数いる」ということと、その主張の「NHKのあり方」が問題になります。

ある意味で「NHKのあり方というか、マスコミの信用性」ということが大きな問題になっているのです。そのマスコミの信用性がないということ、つまりネット世代が多くいるということになります。そのネット世代をどのように考えるかということになります。

まさにネット世代そのものの動向ということで、「既存政党」ではなく「新しい政党」ということが出てくるのではないでしょうか。ある意味で「ワン・イシュー政党」は、今後も出てくるのではないかと思います。

既得権益や既存の権力組織を壊してゆくということが、今までは既存政党において、行われてきていましたが、それでは飽き足らず、そのような「時限政党」的な政党が出てくることが予想されます。その中の先駆け的な政党ではないかという気がするのです。

ある意味で、その方が訴えが通りやすい政治が出てくるかもしれません。別な言い方をすれば既存政党はわかりにくいということのアンチかもしれません。

最後に、憲法改正ですが、このことに関してはあまり多く語る気はありません。結局「数」の問題でしかないからです。内容の問題をここで議論するつもりはありません。

問題は、その「数」をどこから考えるのかということになります。3分の2ないから、憲法改正は信任されなかったということと、過半数取ったのだから、憲法改正の審議はすべきという2つの意見があります。

同時に、既存の政党に投票した人々は、憲法改正だけで投票したわけではなく、既存政党のこれらの解釈はあまりにも、双方ともに、自己都合にすぎるのではないかという気がするのです。そのように考えれば、今後の国民の説得をどのようにするのかが大きな問題です。

審議拒否、という方法が、また新たな「れいわ新選組現象」「憲法改正ワン・イシュー政党」を作る可能性があるのではないかという気がします。

このように、今回の選挙からは様々な有権者行動が見えてきたのではないかという気がします。そしてその行動が、まさに、今後の政治を占う内容になるのではないでしょうか。

image by: MAG2NEWS

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