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楽天に「厳しいのでは」とバッサリ。KDDI高橋社長の言いたい放題

au UNLIMITED WORLD 発表会での高橋誠KDDI社長による、「楽天への先制攻撃や煽り」とも受け取れる発言が一部で話題となっています。同発表会に出席したケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは今回、自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』でその模様をレポート。さらに3大キャリアの今後と楽天浮沈のカギについても記しています。

高橋社長「中途半端な4Gネットワークがあっても5Gは活きない」――UNLIMITEDな世界観で楽天に先制攻撃

8月28日、KDDIは「au UNLIMITED WORLD発表会」を開催。10月1日に施行される改正電気通信事業法に対応した新プラン「auデータMAXプラン Netflixパック」を発表した。

高橋誠社長のプレゼンがキレッキレで、見ていてとても気持ち良かった。5Gに関しては「5Gを主語で語る人は信じてはいけない。5G、5Gといったって何ができるのか、言えるようにしないといけない。言葉だけが繰り返させる。5Gという言葉をひけらかす人は、サービスのイメージがわかっていないのではないか」と一刀両断。こういった発言は以前、法人向けイベントでもあったのだが、改めて強調された。

ネットワークに関しても「我々はピカピカな4Gを作り上げる。中途半端な4Gネットワークなら5Gは活きない」と、すでに行政指導を3回食らっている楽天を牽制。KDDIが楽天とローミングや物流、決済でパートナー契約をしていたとは思えない、煽りっぷりに清々しさを感じたほどだ。

新料金プランにおいても「ソフトバンクやドコモは『ギガなんとか』をやっている。楽天は大容量の料金プランは厳しいのでは」(高橋社長)と語る。そりゃ、楽天が東京23区、名古屋市、大阪市以外の地域をKDDIからネットワークを従量制で借りるとなれば使い放題のような大容量プランの実現はかなり困難だ。楽天の首根っこを掴んでおいて、「楽天は大容量の料金プランは厳しいのでは」とサラリと言う高橋社長もずいぶんと人が悪い。楽天は組む相手を間違えてしまったのかも知れない。

今回、KDDIが使い放題プランを強化してきたことを考えると、おそらく、NTTドコモやソフトバンクも追随せざるを得ないだろう。キャリアとしては「使い放題」で、ユーザーを増やせば、それだけARPUを上げることができるだけに、まんざらでもないはずだ。

実際、「使い放題」と言われても、一般的なユーザーで月に何十GBも使えるかといえば、かなり疑問だ。それよりも「使い放題と言われるとストレスなく安心して使える」という方にメリットを感じる人も多いはずだ。

3キャリアは5Gの導入に向けて単価の高い使い放題」にシフト。総務省が狙う値下げ方向とは逆の道を進むことになるだろう。楽天はスーパーホーダイのような制限のある使い放題ではなく、真の使い放題を提供できるのかがカギとなっていきそうだ。

総務省・有識者会議「駆け込み乱売はけしからん」――駆け込み需要を煽る仕組みを作ったのを忘れてしまったのか

総務省は8月29日、モバイル市場の競争環境に関する研究会とICTサービス安心・安全研究会 消費者保護ルールの検証に関するWGの合同会合を開催した。10月1日に施行される改正電気通信事業法を受けて、4キャリアから改正法への取組状況や課題などがヒアリングされた。

NTTドコモは施行に向けた課題として「駆け込み乱売」「既往契約」「継続利用特典」の3点をあげていた。「駆け込み乱売」については、他社が現在、駆け込み需要を狙ったキャッシュバックなどを乱発し、2年縛りもしくは4年縛りでユーザーを囲い込んでいると指摘。さらに「既往契約」が適用されることで、市場の流動性が高まるのが2年後もしくは4年後に先送りになると警鐘を鳴らしていた。有識者からも駆け込み需要を煽るのはけしからん」という声が上がっていた。

ただ、ユーザーの立場からすれば、10月から割引が2万円しか適用されないのであれば、9月末までに買っておこうという心理になるのは当然だ。さらに、駆け込み需要を逃すまいとするショップの立場も理解できる。10月から端末が高くなる仕組みを有識者会議で勝手に作っておいて、「駆け込み需要はけしからん」と言い出すのは筋違いではないだろうか。

もうひとつ、NTTドコモは、新料金プランの「ギガホ」で、当初「ネット使い放題」としていたが、消費者庁から優良誤認表示として指導を受けたことを明かした。それならば、KDDIの「データ容量上限なし」やソフトバンク「動画SNS放題」も問題があり、「放題という言葉について適正化をすべきではないかと語っていた。

そもそも、もうすぐ5Gのプレサービスを始め、さらにすでに4Gで1Gbpsを超える理論値を表示しているNTTドコモが、1Mbps程度の通信速度でネット使い放題とアピールするほうが恥ずかしいと思わないのか。

もちろん、テザリング2GBという制限をつけるくせに「データ容量上限なし」というKDDIもどうかと思うし、特定のサービスしか対応しない「動画SNS放題」も、優良誤認であることは間違いない。

総務省の有識者会議は、有識者が頓珍漢なことしか言わないしキャリアたちもお互いの足を引っ張ることしかしていない。有識者会議を傍聴するたびに、この国の通信の未来に何の希望も抱けないと失望して帰るしかないのだった。

image by: Tupungato / Shutterstock.com

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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