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小規模企業共済は本当に得なのか。「損益分岐点」を計算してみた

従業員の数が20人以下の会社役員や個人事業主の場合、月に7万円まで積み立て可能な退職金制度、「小規模企業共済」に加入することができます。今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』では、この制度について詳しく解説するとともに、メリットやデメリットを紹介しています。

小規模企業共済の謎

今日は、先代から代替わりする新社長と労務関係の引き継ぎで、U社さんへ伺う深田グループリーダーに同行させてもらった。

ひととおり引き継ぎが終わって…お茶を頂戴していたら、ボクの答えられない質問が…。お客様からの質問は、生きた勉強になりますっ!


U社専務 「役員には、月に7万円まで積み立てることができる退職金制度ってあるでしょ。あれって、得なんですかね?」

深田GL 「小規模企業共済のことですね。所得税の節税って面では、効果的ですよ」

U社専務 「考えてみようかなぁ…。僕の場合は、条件に該当するよね?」

深田GL 「小規模企業共済制度には、常時使用する従業員の数が商業やサービス業の場合は、5人以下ですが、原則20人以下の会社役員さんや個人事業主さんの場合、加入いただけます。規模条件には該当していますよ」

U社専務 「どのくらい効果があるの?」

深田GL 「積立金額の月額上限は、7万円。年収が1,000万円だと年間36万7,000円の所得税の節税ができます。サラリーマンだと、ちょっとした賞与1回分ですね」

U社専務 「僕の場合、月70万円の役員報酬だから年収に直すと840万円ですが、どんなものですか?」

深田GL 「簡易表で見ると、800万円が近いですね。年収800万で約28万円の節税になります」

U社専務 「そっかー、節税効果はありそうだね。で、いつやめることになるのかな?定年?」

深田GL 「定年、満期や満額という概念はないんです。また、共済契約者の立場や請求事由によって受け取ることができる共済金の種類が違ってきます

共済金Aは、個人事業を廃業した場合や法人が解散した場合、共済契約者の方が亡くなった場合(個人)。

共済金Bは、病気や怪我、または65歳以上で役員を退任した場合、老齢給付(65歳以上で180か月以上掛金を払い込んだ方)共済契約者の方が亡くなった場合(法人役員)。

準共済金は、個人事業を法人成りした結果、加入資格がなくなった場合、法人の解散、病気、怪我以外の理由で、または65歳未満で役員を退任した場合。

あとは、任意解約や滞納による解約などの4種類ですね」

U社専務 「なんかたくさん種類があるんですね」

深田GL 「はい、このやめる理由によって受取額がかなり変わってくるんですよ」

U社専務 「そうなんですかー」

深田GL 「月額1万円を20年間積立した場合、共済金Aなら2,786,400円、共済金Bなら2,658,800円、準共済金なら2,419,500円が受取額です。つまり、掛金合計額240万円に対して、最大278万6,400円+36万6,400円が増額され受け取れるということです。節税対策と高い運用益を受け取れる一石二鳥の制度ともいえます」

U社専務 「制度としては、良さそうだね。でも、せっかく入るなら、もっと効果を高く考えたいし…。掛金を7倍の月額7万円にしたなら、えーっと…」

深田GL 「掛金合計額1,680万円に対して、共済金Aなら19,604,800円、共済金Bなら18,611,600円、準共済金なら16,936,500円、最大19,604,800円+280万4,800円が受け取れるということですね」

U社専務 「共済金Aなら、19,604,800円。積立額は、16,800,000円。差額が280万4,800円。損にはならないね」

深田GL 「そうですね。共済金Aで止めることは少ないかもしれませんが、毎年の節税も大きいですしね…」

U社専務 「毎年28万円を20倍したら、560万円の節税かー。それなりに効果はありそうですね」

深田GL 「年末調整や確定申告のタイミングで、小規模企業共済の掛金の全額最大で年間84万円を所得控除できるということです」

U社専務 「正式に考えてみようかな…」

深田GL 「ただ、小規模企業共済は20年未満の任意解約解約手当金という扱いになると元本割れすることもありますから、止める理由には、気をつけてくださいね」

U社専務 「共済金A・B、準共済金以外のやめ方をしないようにするということですね。気をつけるようにします」

深田GL 「それから、ちょうど訪問途上で同席させてもらっている新米とも話していたことですが、小規模企業共済独自の疑問というか、ユニークな考え方も知っておいてください」

U社専務 「え?どんなことですか?」

深田GL 「小規模企業共済って、元々は自分のお金を積立しますよね。それにも関わらず、その積み立てたお金を受け取るときには、退職金扱いの源泉徴収控除が行われるんですよ」

U社専務 「うん?従業員さんが辞めるときと同じ考え方ですね?」

深田GL 「そうです。ってことは、勤続20年までだと、1年あたり40万円までは非課税だけど40万円を超えると課税されるってことなんですよ」

U社専務 「ん?自分のお金受け取るのに税金がかかるってことですか?」

深田GL 「ちょっと、納得いかないとは思いませんか?私は初めて気づいたとき、なんか矛盾している…と感じました」

U社専務「確かに、自分のお金受け取るのに税金がかかるのは、なんかよくわからない制度とも言えますね」

深田GL 「そうなんです。ただ、掛金を払っている間は、節税効果があり、掛金を上回る受取額があるということでは、受取時の税金で損を多く出さないようにして、相殺してトータルで考えてよしと判断すれば良いとは思いますが…」

U社専務 「うーーん、そこまで考えたことはなかったから、勉強になりましたよ」

深田GL 「はい、受取時の税金のことまで考えるならば、掛金の金額も勤続年数20年までは、40万÷12月=33,333円以内に、勤続20年を超えてから、70万÷12月=58,333円以内に増額すれば、税金を払わなくて良いってことです。もっとも、加入時にそこまで考えて掛け始める人はほとんどいないでしょうけれど、最初にこういう話ができていれば、ご検討もできるかと…」

U社専務 「そのとおりだね。今日は、貴重なアドバイスをありがとうございました。今後とも、よろしくお願いします」

深田GL 「こちらこそありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします」

image by: Shutterstock.com

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【著者】 イケダ労務管理事務所 【発行周期】 週刊

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