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管理費の滞納がサインに。集合住宅住民を認知症被害から救う方法

一人暮らしのお年寄りが認知症となった場合、生活してゆくうえで様々な不都合が生じてしまいます。症状が初期段階のうちに周囲が気づくことは可能なのでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、高齢者保護の観点からも知っておきたい「日常生活自立支援事業」について詳しく紹介しています。

管理費滞納から認知症の初期段階に気づく

こんにちは!廣田信子です。

先日のパネルディスカッションで、マンションで、ちょっと困ったことが発生している高齢者を発見して、それを専門機関につなぐという活動をされている方が、管理費の滞納が始まっている高齢者が、金銭管理ができなくなっているのではないかといち早く気づいて、社会福祉協議会の「日常生活自立支援事業」につなぎ、無事解決した話を紹介してくれました。

高齢者の滞納が始まった場合、認知症の初期段階で金銭管理ができなくなっているのが原因の場合が多いのです。口座に現金がなくなっていることに気が付かない、銀行から銀行にお金を移す手続きが取れない、訪問販売の営業マンに次々に物を買わされて、口座にお金がなくなってしまっている、というような状況になっているのです。

滞納の情報が分かっているのは、管理組合の理事の方ですから、管理費等の滞納の情報から、高齢者が困った状況にあることに気づけば、本人を助けることになり管理組合の滞納問題の解決にもつながります。

地域包括支援センターでも、対応してくれるでしょうが、「日常生活自立支援事業」は、社会福祉協議会の事業なので、社会福祉協議会に相談に行くというのであれば、自分はまだ大丈夫と思っている人にも勧めやすいのではないかと思います。

改めて調べると、「日常生活自立支援事業」とは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な方が地域において自立した生活が送れるよう利用者との契約に基づき福祉サービスの利用援助等を行うものです。

窓口は各社会福祉協議会です。

社会福祉協議会のホームページで調べると、下記のサービスが受けられます。なかなか範囲が広いです。

1.福祉サービスを安心して利用できるようにする手伝い

2.毎日の暮らしに欠かせないお金の出し入れの手伝い

3.日常生活に必要な事務手続きの手伝い

4.大切な通帳や証書などを安全な場所で預かる

最初の相談は無償ですが、サービスを受ける場合は、実施主体が決める料金を支払います。訪問1回あたり利用料は、平均1,200円です。

お金の管理や、契約のチェックや書類の作成をサポートしてもらえ、印鑑や証券を預かってもらえるとなれば、かなり安心です。定期的に銀行に同行してもらうサービスを利用すれば、その間の話し相手もでき、生活にメリハリができます。定期的に見てくれている人がいれば異変にも気づきやすいのです。

高齢者や、ひきこもりの方の住戸で、管理費等の滞納が始まったら、その人の事情に気を配って、「日常生活自立支援事業」のことを紹介するのもありだ…と思いました。ただし、お金の問題はデリケートなので、人間関係ができてからにした方がいいと思いますが…。

このサービスは利用者との契約によるものなので、本人が契約の主体になれないほど認知症が進行したら利用が難しくなります。その場合は、成年後見制度への移行を、勧められるようです。成年後見人をつけるタイミングを逃さない意味でも、軽度のうちからこの制度を利用することは有効です。

お金の管理が難しくなっている高齢の方に、管理会社から督促状を機械的に送っても、内容証明を送っても、あまり意味がありません。管理費の滞納情報を活用して、高齢者の困った状況にいち早く気づき、専門機関につなぐということは、管理組合にしかできないことなので、ぜひ、取り入れていきたいと思いました。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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