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多様化を考える上で重要な社会と宗教の融合と備えたい5つの人間力

さまざまな福祉活動に関わるジャーナリストの引地達也さんは、その活動の中で感じた課題や、得られた気づきについて、自身のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』で、伝えてくれます。今回は、グリーフケアの活動を続ける高木慶子シスターが説く「努力して持ちたい5つの人間力」について。その簡単ではない境地を示す言葉に、数々のやるべきことを確認し、やり続けることの大切さを感じています。

信仰を語り合うこと、望まれる「社会人」の5つのこと

上智大学グリーフケア研究所特任所長、高木慶子シスターは80歳を超えてもなおも精力的に動き続けている。先日その元気さに触れることが出来、厳しい社会へのまなざしは私自身が叱咤激励されているような気になり、背筋がピンと伸びる感覚となった。

高木仙右衛門の曾孫として「確固たる信仰を授かった」という本人の信仰へのゆるぎなさは、生きること、社会を見ること、すべての行為に通じる「信仰に忠実な」明確な生き方を示してくれる。

一般メディアでは信仰の真髄を避けて、その社会の資質となるエッセンスだけを抽出する傾向があるが、やはり信仰というファクトを語り合える環境でありたいと思う。 以前、私がカトリックのアルン・デゾーサ神父との共同研究の中で、ケアを考えるメディアの必須は「社会への奉仕」とし、「浄化された意図」がその前提にあると説いたが、アルン神父からすれば信仰心が出発点であるが、私にとっては社会の共通善を考えての言葉だ。この宗教と社会の融合も私たちが多様化を考える上で非常に重要である。

シスターの存在は、お揃いの服と質素ないで立ちであることが一般的なイメージだが、高木シスターは研究者としての一面、「祈る」社会運動家の心持ちものぞかせる。つまり、世界が良い方向にいくようにこぶしを振り上げるのではなく、「祈る」のが彼女らシスターの役割だ。

男性優位なマッチョな世界の象徴が米国の存在であるならば、特に映画の世界で「マッチョ世界」=米国の対称性としてシスターの信仰生活が描かれるケースは多い。それは静かなソフトパワーであり、「愛」や「信仰」で社会を底辺から変えようとする根強いエネルギー。マッチョな世界はそれを否定しようとする性癖もあるだろう。

祈り続けることは、屈服しないことであり、抵抗し続けることの意思表示でもある。例えば広島や長崎の原爆を経験した日本として、政府に核兵器禁止条例の参加を求め続けて、時の政権は拒み続けても、カトリック教会は祈り続けている。大きな衝突がないけれども、祈り続けている。時の首相はともあれ、カトリック信者でフランシスコの洗礼名を持つ副首相はどのように感じているかは、あまり伝わってこない。

この高木シスターは矍鑠とした様子で「努力して持ちたい人間力」として以下の5つを説いた。それは、

である。
これら、示されていることが大きくて、自分が小さなものに見えてきてしまうが、目指すべき方向であることは変わりない。苦難の中にある人の支援者であろうとする私にはどれも必要と思いながら、現実の壁も感じてしまう。

例えば「確固たる信念に基づいた判断力」は、その判断が出来たとしても組織の論理によって、判断が「出来て」も、行動が「出来ない」ことはよくある。これは苦痛だ。

その時に必要なのが「感情コントロール」であろう。簡単に言えば、決して怒らないこと。高木シスターも、「他から言わせれば怒ったことがない」という。出来ないことで諦めてしまいがちであるが、出来なくても、やり続けることが重要かもしれない。

そして「全ての人に対して持つ尊敬と信頼」は「全ての人」だから難しい。神奈川県相模原市の障がい者入所施設「やまゆり園」事件で大量殺人をした加害者にも面会している高木シスターだが、「加害者の彼にも尊敬と信頼は忘れない」という。どんな人でも尊敬と信頼を持たれるべきである、という確固たる普遍的な信念だ。

しかしながら、長年のグリーフケアでも死を間近にしてもなお「嫁には感謝しない」「嫁は許せない」という怨念に似た心持ちの人は少なくないという。高木シスターは、手塩にかけて育てた息子を奪われる感覚のある母親の気持ちは理解できる、としながらも、やはりそのような執着から解放されないと、本当の幸せな心持ちにはなれない。

この5つの大きな言葉は、考えれば考えるほど、かみしめればかみしめるほど、自分のテーマとして具体的な事象とともに浮かび上がってくる。そして、まだまだやるべきことは多いことを実感する。

image by: Shutterstock.com

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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