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出版不況もなんの。月刊『幼稚園』がすごい付録で快進撃のワケ

小学館の月刊誌『幼稚園』が企業とコラボしたリアルな付録で話題となっています。出版不況の中、7月号(6月1日発売)は創刊以来初めての増刷となったとか。メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』発行人の理央周さんが、この『幼稚園』の快進撃の背景に迫ります。そこには、話題性だけではなく、どんな商売にも通じる「売れる」理由があり、行き詰まったときに立ち返るべき原点をも示していると分析しています。

月刊『幼稚園』の付録がすごい!

ここのところ、月刊『幼稚園』の「付録」が話題になっています。昔から、子供用の雑誌の付録というと、男子用であれば仮面ライダーの仮面と変身セットとか、紙でできていて折って組み立てるロボットとかが一般的でした。女の子向けも、キティちゃんのグッズ的なものなど、わかりやすいものが多かったですよね。

そして、幼稚園児向けなので、すぐに作ることができる「ちゃちい」とは言いませんがシンプルな付録が定番でした。でも、ここのところの月刊『幼稚園』の付録は、とにかく「本物そっくり」さらに、架空のヒーローやヒロインものではなく、世の中に実在するものなのです。

先日もテレビでやっていたのが、「コンビニにあるATM」。実際に組み立てたものをみると、本当にコンビニエンスストアにおいてあるATMが、そのまま小さくなったようでした。

この付録がすぐれもので、スイッチのようなものを引くと子供銀行的なお札が出てきます。逆の方向に押すと、お札がスルスルと入っていくというこだわりよう。SNSでは、「クオリティーが高すぎる」「子供じゃなくても欲しくなる」と、まさにトレンド入りしそうなくらい話題騒然といった感じです。

中でも話題になったのが、今年の6月1日に発売された7月号の付録が、駅などによくある江崎グリコの「17アイス」の自動販売機のミニチュア版。これも本物そっくりの自販機で、ボタンを押すと出てくるアイスも本物そっくり。かなりの反響があったらしく、ITメディアによると、アップした動画の再生回数は900万回。すぐに創刊以来初めてとなる増刷を決めたとのことでした。

これ以外にも、くら寿司とコラボの回転すしのミニチュアや、メダル落としゲーム、ピノの自動販売機やスカイツリーなどなど、ユニークな付録を次々と出しています。ここ数年来、出版業界は出版不況と呼ばれている中、『幼稚園』は増刷、話題性などなど快進撃を続けていますよね。その背景に何があるのかを考えてみたいと思います。

まずは、独創性・ユニークさです。ずっと仕事をしているとどうしても、「うちの付録はこの方針でやってきたから」「付録はこうに決まっている」と、知らないうちに固定観念にとらわれがちです。この『幼稚園』のケースでは、子供雑誌の枠を飛び越えた実際世の中にあるものを再現して付録にした、ということが最大の特徴です。

とはいうものの「ユニークな企画を出せ!」と言われても、なかなか一朝一夕には出せないものです。どうしても「自社目線」で考えていると、なかなかお客様の心に響く発想が出てこないのです。そういう時には発想を変えて「お客様目線」になってみることです。

やり方は、まず仮説を立てること。自社プロダクトに響く想定顧客層が誰なのか、という仮説を立てます。次にその顧客層がどんな行動をするのか?という仮説を立てます。そして、実際にお客様が行動しそうなところに行って観察したり、お客様になりきってみて体験してみるということで、何かヒントを得るといった具合です。

この『幼稚園』の担当者は、プライベートで回転寿司に行った時に、「子供たちがとても楽しそうに食べていた」ことから、くら寿司の付録を思いついたそうです。

「何を作れば売れるのか?」という自社目線ではなく、この「何をすればお客様(この場合は子供)が喜ぶかな?」というお客様目線に転換することが大事なのですが、その第1歩がお客様の観察です。

もう1点は、「なぜこの雑誌にこの付録を作るのか?」という原点が明確だということ。インタビューでは「幼稚園生には、ATMを作れますか?」という問いに「いや親と一緒じゃないとできないのです。親とコミュニケーションをとってもらうためです」とのことでした。子供は「リアルなATMの外見と仕組み」に驚き、親は「子どもと一緒に作ることでコミュニケーション」が取れるということになります。

私たちはどうしても、「何を作るべきか」「どうやって売るべきか?」とWhatやHowから考えがちですが、この『幼稚園』の付録は「何のために作るのか?」というWhyが明確なのです。

売上減少や、新規事業に行きづまったら、一度原点にもどって、このように、「私たちは何を目指し誰をどうやって幸せにできるのか」という原点に立ち返ってみるといいでしょう。

image by: PR Times

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