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元国税が指摘。チュート徳井は正確に申告すれば税金は半分の根拠

巨額の申告漏れが発覚し、活動自粛にまで追い込まれた人気お笑いコンビ・チュートリアルの徳井義実氏。国民の義務をないがしろにした行為についてはいかなる言い訳も許されませんが、専門家は今回の騒動をどう見るのでしょうか。元国税調査官で作家の大村大次郎さんは今回、自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で、まともに申告していれば納税額は半分以下で済んだはずとし、今回の件は徳井氏の「ズボラさが招いた」と結論づけています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2019年11月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

徳井氏はきちんと申告したほうが税金は安かった!?

チュートリアルの徳井氏の課税漏れ問題に驚かれた人も多いでしょう。筆者も驚きました。あんな著名な芸能人が税務申告を長期間していなかったわけですから。すごく美形なのに変態性を隠さないという芸風は、筆者としても非常にツボでありましたので、残念でなりません。が、救いは徳井氏の課税漏れが、「欲得にかられた税逃れというよりは本当にズボラだったから」ということです。

徳井氏は過去に無申告で、税務署から指導を受けており、「税務署から指導が入れば申告する」というスタンスを取っていたようです。元国税調査官の目で見た場合、徳井氏は「無申告にしておくよりも、きちんと申告したほうがよほど税金は安くなった」のです。

なぜ芸能人が会社をつくると税金が安くなるのか?

まず芸能人が会社をつくればなぜ税金が安くなるのか、ということをご説明したいと思います。

芸能人などは売れ始めるとよく会社を作るものです。でもサラリーマンにとって、なぜ会社を作れば税金が安くなるのか、よくわからないですよね?

事業を始めるとき、その形態は二種類あります。個人名義でする「個人事業」と、会社を作って行う「法人事業」です。この二つの違いは、会社の登記をしているかいないかだけです。たとえば、同じラーメン屋でも、会社の登記をしていなければ、ラーメン店の店主の個人事業ということになります。でも会社の登記をしていれば、ラーメン店はその会社の事業ということになります。

このように登記の違いだけしかない個人事業と法人事業ですが、税金の取り扱いは大きく違ってきます。まずかかってくる税金の種類が違うのです。個人事業の場合は、その事業者の個人の所得税、住民税がかかってきます。でも法人事業の場合は、法人税、法人住民税がかかってくるのです。所得税と法人税は税率が違いますから、同じように儲かっても税金の額が違ってくるのです。このように個人事業と法人事業では、紙切れ一枚の違いながら、税制上の取り扱いはまったく異なるのです。

芸能人というのは、基本的にはテレビに出演したときの出演料(ギャラ)などが、主な収入源です。この出演料は、事務所が手数料を差し引いて残りの額が、芸能人の手元に行きます。ほとんどの芸能人は事務所に所属していますので、ほとんどはこの形態でギャラが支払われます。そして、そのギャラが芸能人の所得ということになります。

芸能人は、衣装代など様々な経費がかかりますが、そのほとんどは事務所が丸抱えとなっているので、あまり経費として計上するものはありません。なので、ギャラがそのまま所得として税金の対象になるのです。

しかし、自分で会社を作った場合は、ギャラは違う流れになります。ギャラは所属事務所から、一旦、芸能人の会社へ払い込まれることになります。そのギャラは、会社の収益として計上され自分は自分の会社から給料をもらう、という形をとることになるのです。

自分の会社では、家賃、人件費など様々な経費が認められるので、課税対象となる収入を大幅に減らすことができます

最大のメリットは収入を家族に分散すること

また芸能人が会社をつくることの最大のメリットは、身内親などを会社に入れて収入を分散するということです。よく、自分の妻や親を自分の事務所の社長にしていたりすることが多いですよね?

身内を会社に入れれば、会社から自分と身内に給料が支払われることになります。つまり、自分のギャラが一旦会社に入り、自分と家族がそれを分け合う、という形になるのです。日本の所得税は累進課税になっており、収入が多くなれば税率も高くなりますので、家族で収入を分散すれば全体の税率を大きく下げることができるのです。

たとえば、5,000万円稼いでいる芸能人がいるとします。この5,000万円を直接本人がもらえば、5,000万円に税金がかかってしまいます。しかし会社を作れば、5,000万円のギャラはまず会社が受け取るという形を取ります。会社はこの5,000万円が収益ということになります。そして会社は、家賃や人件費など様々な経費を計上します。会社の経費で5,000万の半分くらいはすぐに消すことができるのです。そうなれば、税金も半分ということになります。

また会社の経費は、ただ単に支出されただけではなく、自分に見返りがあるものです。会社の事務所を自宅マンションに置いておけば、マンションの家賃は経費で落とすことができます。そして自分の親族を会社の役員や社長にしておけば、その2,500万円をさらに分散することができます。一人あたりの給料は、普通のサラリーマン並みになります。

何もせずに5,000万円を受け取るならば、だいたい半分が税金に持っていかれます。が、会社をつくれば、うまくやれば10%~20%程度で済むでしょう。

徳井氏はほとんど節税アイテムを使っていない

で、徳井氏の件です。彼は、会社に身内を入れている形跡もないようで、ほかの経費テクニックもほとんど使ってないようなので、会社をつくることのメリットをほとんど享受していません

また彼は、無申告の状態を続けて、税務署の指導を受けてから税務申告をしています。税務署の指導を受けて申告をするということは、経理の内容を逐一税務署のチェックを受けながら申告書を作成するということになります。つまりは、税務署と一緒に申告書をつくっているようなものです。当然、税務署は厳しくチェックすることになります。普通に申告していればそれほど厳しく突っ込まれない部分も、厳しくチェックされてしまうのです。ほかの芸能人であれば経費で普通に落としているものでも、税務署がはねたケースも多々あったはずです。

たとえば徳井氏の申告漏れの中で「衣装代や旅行費用を経費として認められなかった」という話が出ています。これも、もし税務署の指導の後ではなく、普通に自分で申告していれば税務署はスルーしていた可能性があります。芸能人が、自前の衣装で出演するときにその衣装を経費として認められないということは、普通はないのです。また旅行費用もうまく理由づけさえしていれば、「福利厚生費」「交際費」「研修費」などで落とせた可能性が高いです。

ざっくり見積もって、普通に節税して普通に申告していれば、納税額は半分以下で済んだはずです。

徳井氏は、現金で2億円のマンションを購入したという話もありますが、芸能界の第一線で10年以上活躍しているのだから、そのくらいの資産は普通にあるでしょう。むしろ、ローンを組めばその数倍のマンションは買えたはずで、無申告だったためにローンが組めず現金で買うしかなかったものと思われます。銀行のローンを組む時は、必ず税金の申告書のコピーなどを提出しなければならず、無申告の徳井氏は申告書を提出できずローンを組めなかったはずです。

このように彼にとって無申告でいいことは何もなかったのです。まあ、今回の件は本当に「ズボラさが招いた」といえるでしょう。徳井氏には、このズボラさは直していただきたいものですが、このズボラさがあったからこその芸風だったのかもしれません。芸能人というのは「規格外の性質」が武器になるものですからね。世間のモラルと、自分の芸風とどう折り合いをつけるかが今後の芸能人に課せられた使命かもしれませんね。(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』より一部抜粋)

image by: Osugi / Shutterstock.com

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2019年11月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

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